仕事での積極的な行動が持つ負の側面とは?積極性がストレスになるとき

本稿のテーマは「積極的な行動の負の側面」です。

仕事ではただ言われたことを行うだけでなく、自分から積極的に行動することが望まれますよね。

実際に積極的な行動(proactive behavior)には良い効果があることが研究でも確認されていて

  • 積極的な行動が多い人は、仕事へのエンゲージメントが高い
  • 積極的な行動が多い人は、仕事のパフォーマンスが高い
  • 積極的な行動が多い人は、人間関係が広い

ということが分かっているみたいです。

なので、組織としては「みんなが積極的に行動する」ような風土を作ることが大切になるわけですね。

しかし、積極的な行動が仕事のパフォーマンスを高めてくれる一方で、ストレスも高めてしまうのでは?ということが研究(*1)により調べられていました。

この研究によると、「仕事のモチベーションの持ち方によっては、積極的な行動はストレスを増やしてしまうので注意しましょう」という結果になっていましたので、その中身を見ていきましょう。

積極的な行動とは?

まず、積極的な行動がどのようなものかというと

  • 現状を維持することに甘んじるのではなく、より良い状況を作り出すために自ら行動を起こすこと

ということです。

積極的な行動は新しいことに挑戦することなので、パフォーマンスを上げてくれる効果がある一方で、努力が必要で精神的な負荷が大きいという特徴があります。

なぜ積極的な行動が精神的負荷が大きいのかというと、いくつか理由があるようで、

①頭を使って考えなければいけない
現状維持をするだけならあまり考えずに今まで通りにやればいいだけですが、新しいことに挑戦するとなると、未知の領域に踏み込むので、頭を使わなければいけません。未来は何が起こるか分からないので、予期せぬ出来事も多く発生し、そのたびに頭を抱えることになるかもしれません。

②変化を起こさなければいけない
新しいことに挑戦するということは、現状から変化をするということです。人間は基本的に変化を嫌ってこれまで通りの習慣に強く引き寄せられる生き物なので、自ら変化を起こすのには高いモチベーションが必要になります。また、変化を起こそうとすると他人からの反対も多いので、説得するのにも苦労します。

③責任が大きい
積極的に行動は自分で決断して、自分で起こすものなので、責任も自分にのしかかります。そのため、ときにはそれが大きなプレッシャーとなって精神的なストレスにもなり得ます。

と、こんな3つ理由で積極的な行動はストレスを高めてしまう可能性があるということ。

ちなみに実際に

  • 積極的な行動が多い人ほどストレスホルモンのコルチゾールが高い傾向がある

という研究結果もあるということ。もちろん適度なストレスはいい効果もあるので、これだけで積極的な行動が悪者になるわけではありません。

積極的な行動がストレスになるとき

それで、先の研究(*1)では

  • 積極的な行動でも、自分が好きでやるのと、外発的な要因でやらされるのでは、精神的ストレスが違うのは?

ということに着眼しています。

そしてこれを調べるためにモチベーションを次の2つに分けて

  • 自律的なモチベーション
    (自分の意思でやりたいと思うモチベーション)
  • 外発的なモチベーション
    (報酬のためや強制力によるモチベーション)

この2つのモチベーションと積極的な行動がどのように精神的ストレスに関係しているのかを分析してくれたんですね。

結果として分かったこととは?

分析の結果が次のグラフの通りです。

このグラフは積極的な行動が増えたときに、精神的ストレスがどう変わるのかを直線でプロットしていて、

◆が外発的モチベーションが高くて、自発的モチベーションが低い場合
◇が外発的モチベーションが高くて、自発的モチベーションも高い場合
■が外発的モチベーションが低くて、自発的モチベーションが低い場合
□が外発的モチベーションが低くて、自発的モチベーションも高い場合

となっています。

このグラフで一つだけ飛び抜けて傾きが急な直線があることから分かるのは、

  • 外発的なモチベーションが高くて、自律的モチベーションが低いときに、積極的な行動は精神的なストレスを高めてしまう

ということなんですね。

この状況は自分はやりたくないと思っているのに、強制力が働いてやらなければいけない状況なので、自ら積極的に挑戦しているように見えても、精神的には疲弊してしまっているんですね。

逆を言えば、他の3本の直線については、積極的な行動が増えても精神的なストレスはほとんど増えていないので

  • 自律的モチベーションを高めてあげれば、積極的な行動の精神的な負荷は軽減できる

ということでもあります。

なので、組織の積極的な行動を増やしたいというときは、報酬や強制力を働かせてしまうと精神的なストレスが発生して長続きしません。そんなときは自分からやりたいと思えるようなモチベーション作りを忘れてはいけないということですね。

まとめ

本稿では「積極的な行動がストレスになるとき」についてお話ししました

ポイントをまとめると

  • 積極的な行動は新しいことに挑戦するので負荷が大きい
  • 積極的な行動をやらされ感でやっていると、精神的ストレスが高まって長続きしない
  • 自分からやりたいという意思があれば、積極的な行動が増えても精神的なストレスはあまり感じない

ということです。

この研究が言うには、積極的な行動をストレス無しで増やすには、「自分で仕事をコントロールしている感覚」を高めてあげることが大切ということです。確かに、細々と指示された通りにやれと言われると、やりたいという気持ちは薄れて、強制力を感じてしまいますよね。なので相手に積極的な行動をしてほしいときは、無理に押し付けないように注意しましょう。

以上、本稿はここまで。


[参考文献]

*1: WHEN DOES PROACTIVITY HAVE A COST? MOTIVATION AT WORK MODERATES THE EFFECTS OF PROACTIVE WORK BEHAVIOR ON EMPLOYEE JOB STRAIN

Naoto

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