計画の精度を上げるためにワーストケースを考えてもあまり意味がないという研究

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仕事でも勉強でも、最初に計画を立てるのに、なかなかその計画通りに進まずに遅れが発生してしまうことが多々あると思います。これは計画錯誤と呼ばれる現象で、人は将来のことを予測するのが苦手で、計画を立てるときにはどうしても楽観的な計画を立てがちなんですね。

それで、計画錯誤を避けて計画の精度を上げるために有効だと考えられているのが、ワーストケースなどの複数のシナリオを考えようということです。将来は何が起こるかわからないものですから、できるだけ多くの出来事を予測することで計画の精度が向上するという算段なわけですね。

そこで、ワーテルロー大学らの研究(*1)が

  • 悲観的なシナリオや楽観的なシナリオなど、複数のシナリオを考えれば、本当に計画の精度は向上するのか?

を確かめてくれていたので、本稿ではその中身を見ていきましょう。

シナリオの予測と計画の精度

この研究では、シナリオの予測が計画の精度にどれだけ影響するのかを、大学生を対象に複数の実験で調べてくれています。大学生は講義の宿題がたくさんあるので、締め切りに間に合うように計画的に進めなければいけないわけです。

シナリオの予測方法と計画の精度

一つ目の実験では学生に次の3つのうちの1つのシナリオを立ててもらっています。

  1. 楽観的なシナリオ
    全てがうまくいくとして、課題に取り組むシナリオはどのようになるかを予測してもらう
  2. 悲観的なシナリオ
    全てがうまくいかない場合には、課題に取り組むシナリオはどのようになるかを予測してもらう(障害にあって遅延してしまうなど)
  3. 現実的なシナリオ
    楽観的とか悲観的とかの指示はなく、普通にシナリオを予測してもらう

そして、これらのシナリオを考えた後で、参加者には実際にいつまでに課題が終わると思うのかの最終計画を立ててもらっています。3つのシナリオの種類が、最後の計画立てにどのように影響するのかを調べたわけですね。

シナリオの種類が与える影響

それで結果としてどのようなことが分かったのかというと

  • 現実的なシナリオの中身は、楽観的なシナリオに近かったので、人は何も考えずにシナリオを考えると楽観的になってしまいがちだということが分かった
  • 悲観的なシナリオを考えた生徒は、一度悲観的なシナリオを考えたにもかかわらず、最終計画は2つのシナリオのグループと同じくらい楽観的になっていた
  • 悲観的なシナリオを考えた生徒は、他の2つのシナリオのグループと比べて、自分の考えたシナリオがあまり起こりそうにないを感じていた
  • 3つのシナリオのグループ全てで計画錯誤が起こっていて、実際に課題が完了するのは自分の立てた計画よりも遅かった

ということ。

つまり、ワーストケースのシナリオを考えたとしても、そんなシナリオは起こらないだろうと考えてしまって、結局は計画錯誤が起きてしまったということなんですね。

複数のシナリオを考えたらどうか?

この研究では一人で複数のシナリオを予測した場合の効果にも注目して、もう2つの実験で

  • 一人で3つのシナリオを考えた場合はどうか?
  • 悲観→楽観の順にシナリオを考えた場合と、楽観→悲観の順にシナリオを考えた場合で違いはあるのか?

も確かめてくれています。

その結果としては

  • 一人で複数の計画を考えても、最終計画は楽観的になってしまい、計画錯誤が起きた
  • シナリオを考える順番を変えてみても、最終計画は楽観的になってしまい計画錯誤が起きた

ということで、残念ながらどちらの実験でも計画錯誤は無くならなかったということです。

シナリオの納得感は影響するのか?

次に、シナリオの現実性を考慮して

  1. 楽観的で現実に起こりそうなシナリオ
  2. 楽観的で現実離れしたシナリオ
  3. 悲観的で現実に起こりそうなシナリオ
  4. 悲観的で現実離れしたシナリオ

の4つのグループに分けて実験をしています。悲観的なシナリオが無視されて楽観的になってしまうのは、悲観的なシナリオの現実感が足りないのでは?と考えたわけですね。

結果がどうなったのかというと

  • 楽観的なシナリオでは、現実に起こりそうなほど、そのシナリオに影響されて楽観的になることが分かった
  • 一方で悲観的なシナリオでは、現実に起こりやすそうでも、現実離れしていても、悲観的なシナリオは無視されて、最終的には楽観的な計画が立てられてしまった

ということ。なんと悲観的なシナリオを現実的に考えたとしても、まだ楽観的になってしまって正確な計画は立てられないというんですね。どれだけ工夫して悲観的なシナリオを考えても、最終的には楽観的な計画になってしまうということで、計画錯誤のバイアスの強さが分かります。

第三者は影響されるのか?

参考までに、シナリオを第三者に見てもらって、その第三者に計画も立ててもらった場合にどうなったのかというと、

  • 第三者が楽観的なシナリオを見た場合には、かなり楽観的な計画を立てていた(自分で楽観的なシナリオを立てた場合と同じ)
  • 第三者が悲観的なシナリオを見た場合には、その悲観的なシナリオを無視することはなく、悲観的な計画を立てた

ということ。第三者の場合には、悲観的なシナリオをきちんと考慮してもらえるみたいですね。ただし、第三者が悲観的なシナリオを見た場合には、逆にかなり余裕のある計画になってしまっていたので、第三者に計画を立ててもらう場合には、楽観的な部分と悲観的な部分の両方を見せて総合的に判断してもらった方がいいのかもしれません。

まとめ

本稿では「シナリオ予測と計画の精度」についてお話ししました。

ポイントをまとめると

  • 人は計画を立てるときに楽観的になるバイアスがあって、このバイアスはワーストケースのシナリオを考えたり、想定できる色々なシナリオを考えるだけでは排除することができない
  • 第三者なら計画を悲観的に見積もることもできるので、第三者に相談することで計画の精度を上げることはできるかもしれない

ということですね。

今回の研究では、こうすればバイアスを排除できる!という結論は得られませんでしたが、「人はかなり楽観的に計画を立ててしまうバイアスがある」ということは知っておいた方が良さそうですね。計画を立てるときには、このバイアスを思い出してみて、少し余裕を持たせてみるとよいかもしれません。

以上、本稿はここまで。


[参考文献]

*1 : People focus onoptimistic scenarios and disregard pessimistic scenarios while predicting task completiontimes

Naoto

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