セルフコントロール能力が高い人は、そもそも意思力を使っていない説

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セルフコントロール能力は感情や誘惑を抑えて長期的な行動を選択する能力で、人間の能力の中でも特に大切な能力として挙げられます。なぜ大切なのかというと、セルフコントロール能力が高い人は

  • 学業の成績が高い
  • 収入が良い
  • 健康的である
  • 人間関係も良い

という傾向があるからで、セルフコントロール能力は人生の至る所で良い効果をもたらしてくれるわけですね。

しかし、自分は誘惑に弱くてダイエットも続かないという人も多いと思います。セルフコントロール能力が高い人をイメージすると、「遊びたい誘惑やジャンクフードの誘惑などに負けずに、自分を律することができる意志力の強い人」というイメージが多いでしょう。

しかし、このイメージに疑問を投げつけるのがペンシルバニア大学の研究で、

  • セルフコントロール能力が高い人は、良い行動を習慣にしているだけで、特に意志力は使ってないのでは?

ということを実験してくれています。行動は習慣になってしまえば、ほとんど考えずに自動的に行えるので、「頑張って運動しよう」と思わなくても「いつも通り運動しなきゃ」と自然と思えるというわけですね。

セルフコントロール能力と習慣

この研究では6つの実験により、セルフコントロール能力と習慣、そして意志力の関係を調べてくれていますので、順番に見ていきましょう。

実験1:良い習慣と意志力

まず一つ目の研究では、500人を対象に

  • 不健康な食べ物をどれだけ控えられているか?
  • 運動をどれだけ行っているか?
  • ベッドにつく時間と朝起床する時間は規則的か?

といった基本的な良い生活習慣とセルフコントロール能力の関係を、自己採点でのアンケート調査で調べています。

その結果は、

  • セルフコントロール能力が高い人ほど、食生活・運動・睡眠の全ての生活習慣が良かった
  • 食生活・運動・睡眠の生活習慣が良い人は、それらの行動を選択するときに使う意志力が少なく、「ほぼ自動的に選択」していた。

ということ。つまり、食生活や運動が規則正しいストイックな人は「誘惑に打ち勝つ強い心の持ち主」に見えますが、実は「あまり考えずにその行動を自動的にやっているだけ」ということですね。

実験2:学校の勉強では?

続いて、大学生を対象に勉強の習慣でセルフコントロール能力を調べています。そしてこの実験では、友達から遊びの誘いがあったけど勉強を優先しなければいけないときにどれだけ意志力を使うのかを測定しています。

結果は、

  • セルフコントロール能力が高い人ほど、決まった場所や時間で勉強を習慣的に行っていた
  • 勉強を習慣にしている人ほど、友達から遊びの誘いがあったときに必要な意志力も少なかった

ということ。つまり、この実験でわかったのは、一度習慣にしてしまえば、それがデフォルトになるので、誘惑もあまり意志力を使わずとも断れるということですね。

実験3:困難な状況ではどうか?

続いては同じように勉強を選択できるかの調査ですが、状況を変えて

  • 勉強をやる気分でないとき
  • ストレスが溜まっているとき
  • 機嫌が悪いとき

といった困難な状況で勉強を選択する意志力を測定しています。

その結果は、

  • セルフコントロール能力が高い人ほど、勉強の習慣が強かった
  • 勉強が習慣になっていると、困難な状況でも勉強を選択できた

ということ。つまり、困難なときでも勉強を選択できるのは、「意志力が強いから」ではなく、「習慣になって自動化されているから」と言えるわけですね。

実験4〜6:長期的な効果は?

実験4〜6では

  • 勉強の習慣と宿題の提出率や先生から見た生徒の評価
  • セルフコントロール能力が高い人ほど、大学の成績も良いのか?
  • 5日間の瞑想プログラムに参加した人は、3ヶ月後にセルフコントロール能力が高いほど習慣を続けられているのか?

といったセルフコントロール能力の長期的な効果を測定しています。

その結果は、

  • セルフコントロール能力が高い人ほど、勉強や宿題が習慣になっていて、長期的にも学校の成績や授業態度の先生の評価が良かった
  • 瞑想プログラムに参加した人も、3ヶ月後にはセルフコントロール能力が高い人ほど瞑想を習慣として続けていて、瞑想を行う上での意志力も低く自動的に行っていた

ということ。

長期的に見てもセルフコントロール能力が良い成績につながることはもちろん、セルフコントロール能力で習慣を作ってしまえば、意思力は次第に必要なくなるということが分かりますね。

まとめ

本稿では、「セルフコントロール能力が高い人ほど意志力を使っていない説」についてお話ししました。

ポイントをまとめると

  • セルフコントロール能力が高い人は、学業や仕事の成績から身体の健康まで様々な良い効果があるが、それはその成果につながる良い習慣が築かれているから
  • セルフコントロールの能力が高い人は、行動を習慣にして自動化しているので、そもそも意志力があまり必要なく、困難なときでも良い行動を選択できる

ということですね。

ダイエットでも仕事の成功でも、セルフコントロール能力が必要になる長期的な成果を達成したい場合には、

  • まず、その成果につながる良い行動の習慣とは何かを考える
  • その行動が定着しやすくするために、場所や時間、環境などを固定する
  • とにかくその行動の回数増やして自動化していく
    (最初は失敗してしまうこともあるけど、めげずにまた繰り返していく)

というのが大切そうですね。最初は意志力が必要かもしれませんが、次第に楽に実践していけるようになると思います。


[参考文献]

*1 : More than Resisting Temptation: Beneficial Habits Mediate the Relationship between Self-Control and Positive Life Outcomes

Naoto

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