リモートの授業でスポーツや音楽専攻の学生はどんな影響を受けているのか?

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コロナの影響もあって、大学の授業が Web講義行われるようになったりと、学習のオンライン化が進んでいます。これにはメリットとデメリットがあって、

  • 大学に出席しなくてもリモートで授業が受けられる
  • 講義を録画して後で繰り返して見られる
  • 大学の友達と一緒に学ぶ楽しさが薄れてしまう
  • 物によっては講義の質が低下してしまうことがある

などの影響が考えられます。

そして、特にオンライン講義で悪い影響を受けやすいのは、スポーツや音楽などの実技系の授業。やはり運動のような実技は直接フォームのチェックなどを受けた方が授業の質も上がりますし、音楽に関してはオンライン化することで音質の低下などの影響を受けてしまうかもしれません。

そこで本稿では、

  • コロナによる学習のオンライン化で、スポーツや音楽系の専攻の学生の授業の満足度はどのような影響を受けているのか?

について調べてくれたリュブリャナ大学の研究(*1)を見ていきましょう。

オンライン学習と授業の満足感

リュブリャナ大学の研究では、スロベニアでコロナがピークになっている時期に、314人の学生のオンライン授業への満足度などを測定しています。314人のうちの198人が音楽系の専攻、107人がスポーツ系の専攻となっています。

この研究ではフローを軸に、授業の満足感や授業への感情的な変化、コロナによる影響を分析しています。フローとは集中状態のことで、授業に没頭していたり、時間の感覚を忘れてあっという間に授業が終わったと感じるような体験のことを言います。

もう少し具体的にフロー体験の要素を見てみると、

  • 授業の難易度がちょうど良いチャレンジングなレベルである
  • 行動と意識が一つになって、授業中に他のことを考えたりしない
  • ゴールが明確になっている
  • 明確なフィードバックがある
  • 完全に集中している
  • 受け身でなく自分でコントロールしている感覚がある
  • 自意識を忘れる
  • 時間感覚がなくなる
  • 目的を達成する経験がある

といった感じ。

こうしたフロー体験がコロナの影響でどう変化して、それが授業の満足感や授業で感じる感情に影響しているのかを分析してくれたわけですね。

結果:フロー体験と授業の満足感

まず授業の満足感に関しては2つのことがわかっていて、

  • 明確なゴールがあることはオンライン授業の満足感を向上した
  • 集中力が高い人はオンライン授業で満足感は低下した

となっています。

学習目的や達成基準などの講義の明確なゴールがあると、オンライン授業で満足感は向上するようです。Udemyなどのオンラインの学習コースでは、学習内容が明確で、自分がどのくらい進捗しているのかもよく見えるので、達成感を感じやすいですよね。

一方で集中力が高い人にとってはオンライン授業はマイナスになっています。これはオンライン授業の方が集中するのが大変だというデメリットが関係していて、授業は本当に集中したい人にとっては教室での授業の方が満足感は高くになるようです。

結果2:フローと感情面

次にフローとオンライン授業で感じる感情面の関係を見てみると、

  • チャレンジングな難易度はオンライン授業のポジティブな感情を増やした
  • 明確なゴールはオンライン授業のポジティブな感情を増やした
  • 目的達成の経験はオンライン授業のポジティブな感情を増やした

ということ。また、ネガティブな感情面に関しては

  • 明確なフィードバックはオンライン授業のネガティブな感情を減らした
  • 自意識を忘れて没頭する体験はオンライン授業のネガティブな感情を減らした
  • 勉強を自分でコントロールしたいと思う人は、逆にオンライン授業でネガティブな感情が増えてしまった

ということ。

オンライン授業でも、明確なゴール設定やフィードバックなどのフロー体験を生む要素があれば、感情面でオンライン授業が好まれないことはないようです。しかし、オンライン授業になると自分で主体的にコントロールするのが難しくなってしまうようで、そうするとネガティブな感情が高まってしまうようですね。

結果3:コロナの影響を強く受けた人

最後にコロナの影響を強く受けた人の特徴を見てみると、

  • 勉強に明確なゴールを持っている人はコロナの影響を強く受けやすかった
  • 集中力が高い人はコロナの影響を強く受けやすかった

ということ。逆にコロナの影響に強かった人としては

  • 自分のスキルと講義の難易度がマッチしていると感じている人はコロナの影響を受けにくかった
  • 目的達成の経験が多い人はコロナの影響を受けにくかった

ということ。

生徒のタイプによってもコロナの影響の受けやすさが変わってくるみたいですね。

まとめ

本稿では「フロー体験とオンライン授業の満足感」についてお話ししました。

ポイントをまとめると

  • 体育や音楽系のオンライン授業でもゴールを明確すれば授業の満足度が向上するし、フィードバックや達成経験があれば授業へのポジティブな感情を増やせる
  • 一方で、授業に集中したい人にとっては、オンライン授業では集中が難しく、授業の満足度も低下しやすい

ということ。

やはりオンライン授業にも良い面と悪い面があるということ。生徒によってもオンライン授業の良い効果を受けやすい人と、オンライン授業で苦労する人がいるようなので、うまく授業を工夫する必要がありそうですね。

以上、本稿はここまで

[参考文献]

*1 : Wellbeing and flow in sports and music students during the COVID-19 pandemic

Naoto

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