歳をとるほど時間が過ぎるのが早く感じるのは何故なのか?の研究

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人は歳をとるほど時間が早く過ぎるように感じると言います。子供の頃の1年と、大人になってからの1年を思い出してみると、子供の頃の1年間の方がずっと長く感じられるのではないでしょうか?

本稿では、歳をとるほど時間が過ぎるのが早くなるのはなぜかについて

  • 時間のチャンクが大きいほど、時間が過ぎるのが早く感じるのでは?

という観点で調べてくれた研究を見てみたいと思います。

時間が過ぎるのが早く感じるのの諸説

それではなぜ歳をとるほど時間が過ぎるのが早く感じるかというと、諸説が言われていて

  • 生きてきた時間の分母説
    10歳の少年にとって昨年の1年間は全体の10%にもなるが、50歳のおじさんにとっては1年はわずか2%にしかならない。なので、歳をとるほど1年の重みが軽くなっていく。
  • 死への恐怖説
    年齢をとるほど段々と死に近づいて、残された人生の少なさを感じるようになる。こうした心理の変化が時間の感覚に影響しているという説。
  • 新しい経験が減る説
    子供の頃は未経験のことばかりで、毎日新しい発見がある。しかし、年齢を重ねて経験を積むほど、新しい経験が少なくなって、ただ時間が流れていってるように感じてしまう。

などが有名なところです。

時間のチャンクと時間の感覚

カンザス大学の研究では、3つ目の説に近い観点として、時間のチャンクというものに注目しています。時間のチャンクとは、人生のなかで同じような生活をしていた期間の区切りのようなもの

例えば、就職をきっかけに生活のパターンが「仕事して、家事をして、寝て、休みの日に遊んで」になれば、人生の中でこのパターンが続く期間が同じチャンクになります。もしかするとこの人は、結婚や引っ越しをきっかけにして新しい生活パターンのチャンクが始まるかもしれません。

こうしたチャンクの観点で見てみると、子供の頃は新しい経験も多く、チャンクが変化しやすいことが分かります。そうすると、子供は1年の中にも細かいチャンクがたくさんあって、1年の出来事が充実していて長く感じるようになります。一方で大人は、毎日同じような生活パターンになりやすいでしょう。そのため、人生を振り返ったときに、大きな一塊のチャンクが人生のウェイトを大きく占めていて、時間の密度がスカスカであっという間に過ぎたように感じるというわけですね。

実験:時間のチャンクで時間の感覚が変わるのか?

カンザス大学の研究では、この時間のチャンク説を確かめるために、3つの実験を行っています。

まず一つ目の実験では、2つのグループを用意して

  • 時間のチャンクグループ
    ここ1年間で行った活動が、どれだけ似通ったものなのかを考えてもらう
  • コントロールグループ
    ここ1年間で実際には起きなかったことを考えてもらう

ということをやってもらっています。

時間のチャンクグループでは、1年間が同じようなことばかりやっていたと思わせるので、1年が早く感じられるだろうというわけですね。

結果を見てみると、

  • 時間のチャンクグループの人は、コントロールグループよりも1年間を早く感じていた
    (時間のスピード感覚 M=0.94 vs M =0.46)

となっています。

1年を振り返った時に、1年間の中での変化が少なく一塊の大きなチャンクになってしまうと、時間が過ぎるのも早かったと感じるというわけですね。

実験2:同じような1年と同じような1日

続いて、カンザス大学の実験2,実験3では

  • 1年のチャンクを考えるグループ
    ここ1年間の活動を学校・仕事・交流・その他の4つの分類でまとめるグループ
  • 1日のチャンクを考えるグループ
    昨日1日の活動を学校・仕事・交流・その他の4つの分類でまとめるグループ

での時間感覚を測定しています。

実験の結果を見てみると、

  • 1年のチャンクを考えたグループは、1日のチャンクのグループと比べて、時間が過ぎるのを早く感じていた

ということ。

つまり、一つのチャンクが長くなるほど、時間が過ぎるのも早く感じるということがこの実験で分かったわけですね。

まとめ

本稿では「時間のチャンクと時間間隔」についてお話ししました。

ポイントをまとめると、

  • 変化が少なく同じような生活パターンのチャンクは、時間が早く過ぎたように感じる
  • 人生の中のチャンクが大きくなるほど、思い出として時間が早く過ぎたように感じる

ということ。

小学校・中学校・高校の違いは、子供の頃には大きな違いで一つ一つがチャンクとなっても、大人になると学生時代と一括りの同じチャンクのように感じてしまったりもしますよね。

時間感覚の面白いのが、体験しているときと、思い出したときのスピード感が真逆になることがある点。様々な変化のある活動は、やっている最中には夢中になってあっという間に感じる一方で、同じようなことばかり行う活動は、退屈で長く感じるものです。これが思い出となると真逆になって、変化が多いほど充実した長い時間の思い出となって、変化が少ないほど密度の薄い短い思い出となるんですね。うーん、不思議ですね。

以上、本稿はここまで。


[参考文献]

* 1 : Why life speeds up: Chunking and the passage of autobiographical time

Naoto

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