他人に親切をすると幸福感は上がるが、逆に不親切をすると幸福感は下がるのか?

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他人に親切をすることはちょっとしたことでも幸福感を向上してくれることが分かっています。チャリティーに参加したり、友達にプレゼントをしたり、少額の寄付をしたりと、小さな親切をたくさんすればそれだけ幸福感も高まるわけですね。

しかし、本稿で注目するのは”親切の逆”で、他人に不親切をしてしまうと幸福感が低下してしまうのか?という点。

  • つい口を滑らせて知り合いを怒らせてしまった
  • 借りたものを壊してしまった
  • 困っている友人の頼み事を断ってしまった

など、自分の本意ではなくとも、他人に不親切にしてしまうことはありますよね。大概こうした不親切の後は、なんであんなことしてしまったんだろうと落ち込むことが多いため、他人への不親切が幸福感を低下してしまうのも頷ける話でしょう。

そこで本稿では、

  • 他人に不親切にしてしまうことが、幸福感や幸福の基盤となる3大欲求(自律・有能感・関係)とどう関係しているのか?

について調べてくれた研究を見ていきましょう。

心の3大欲求と幸福感

3大欲求といえば「食欲」「睡眠欲」「性欲」だと言われていますが、これは人間が生きていくために必要な欲求になります。言うなれば体の3大欲求という感じですね。心理学では体の3大欲求とは別に、心の3大欲求が考えられていて、これは自己決定論という学説で定義されています。心の3大欲求とは、

  • 自律感
    他人から言われたりルールなどに強制されたやらされ感でなく、自分で考えて自分で行動する主体性を感じていること
  • 有能感
    自分は優れた能力を持っていて、社会の役に立っていると感じていること
  • 関係性
    家族や友人、会社の仲間など他の人とのつながりを感じていること

になります。

自律感がなくてやらされ感が高い状態、有能感がなくて自分は無力だと思ってしまっている状態、他人とのつながりが感じられず孤独な状態では、心は満たされずに幸福を感じることは難しいでしょう。これらの3つの欲求は幸福感やモチベーションには欠かせないものなんですね。

不親切で幸福感は低下するのか?

アールト大学の研究では、

  • 他人に不親切をしてしまうことは、心の3大欲求は損なわれてしまうのか?
  • 他人に不親切をしてしまうことは、最終的に幸福感を低下してしまうのか?

ということを3つの実験で合計で1000人以上の人を対象に測定を行なっています。

これらの測定では幸福感の測定として、

  • ポジティブ感情が高いか?
  • 自分を受け入れているか?
  • 人生に意味を感じているか?
  • ネガティブ感情が少ないか?
  • うつや不安などを感じていないか?

など多面的に幸福を測定しています。

結果:

早速分析の結果を見てみると、

  • 他人への不親切は、自律感・有能感・関係性の3つを全て低下してしまった
  • 3つの欲求を考慮すると他人への不親切には直接幸福感を低下する効果はなかった

ということ。

それでは他人への不親切で自律感・有能感・関係性が低下してしまうとどうなるのかというと、

  • ポジティブ感情が低下してしまった
  • 自己受容が低下してしまった
  • 人生の意味が低下してしまった
  • ネガティブ感情が高まってしまった
  • 不安やうつが高まってしまった

ということで、幸福感が低下してしまっていることがわかります。

つまり、他人へ不親切にする→自律感・有能感・関係性が低下する→幸福感が低下する、という間接的な経路で幸福感が低下してしまうわけですね。

他人への不親切が3大欲求を低下してしまうのが具体的にどういうことかというと、

  • 自分ではコントロールできない思いがけない要因で他人に不快感を与えてしまって自律感が低下する
  • 他人に不快感を与えてしまって、自分の有能感が損なわれてしまう
  • 他人に不快感を与えてしまうことが、その人とのつながりを弱めてしまう

といったことが心理的には働いているのでしょう。

まとめ

本稿では「他人に不親切にすると、幸福感は低下してしまうのか?」についてお話ししました。

ポイントをまとめると、

  • 他人に不親切にしてしまうと、心の3大欲求である自律感・有能感・関係性が低下してしまう
  • 心の3大欲求が低下してしまうと、幸福感まで低下してしまう

ということ。

他人に親切にすることは全く逆の効果で、心の3大欲求を高めて、幸福感まで高めてくれるということでもあります。普段のちょっとして親切の積み重ねが、自分の心の基盤を作ってくれると考えると、もっと親切をしなきゃという気持ちになりますね。

以上、本稿はここまで。


[参考文献]

*1 : Distinguishing between basic psychological needs and basic wellness enhancers: the case of beneficence as a candidate psychological need

Naoto

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