能力が高すぎる社員を活躍させるには、ジョブクラフティングが有効だという研究

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会社の中には優秀な人もいれば、あまり優秀でない人もいます。それで社員が優秀なこと自体は良いことなのですが、そうした社員と仕事のミスマッチには気をつける必要があります。例えば、超優秀で様々なスキルを持った人がいたとしても、仕事が簡単すぎると、せっかくのスキルが活用されずにモチベーションが低下したり、不満が溜まってしまうんですね。

そこで、こうした不満を和らげるのに役立つのがジョブ・クラフティングです。ジョブ・クラフティングとは、仕事の内容や進め方などを社員が自分に合わせてクラフト(再定義)することを言います。例えば、プログラミングが得意な人であれば、エクセルのデータ入力の作業を、手作業でやるのでなくプログラムで自動化するとか。自分の能力にあった形に仕事を変えられれば、超優秀社員の持て余したスキルも自分で工夫してうまく活用してくれるわけですね。

そこで本稿では、

  • 優秀な社員が行うジョブクラフティングは、仕事の活力やパフォーマンスにどう影響するのか?

を調べてくれた研究を見ていきましょう。

過剰能力のジョブ・クラフティング

この研究では、優秀な社員が行う次の2種類のジョブ・クラフティングの効果を検証しています。

  • 強みを活かすジョブクラフティング
    自分の強みを活かせるように仕事の形を変えるジョブクラフティング。このタイプのジョブクラフティングは、仕事への活力を高めると同時に、仕事のパフォーマンスも向上してくれることが期待できる。
  • 興味を活かすジョブクラフティング
    自分が興味があることを活かすように仕事の形を変えるジョブクラフティング。このタイプのジョブクラフティングは、仕事の活力は高めてくれるが、自分の好き勝手やってしまう可能性もあり、仕事のパフォーマンスは向上しない可能性がある。

データとしては653人の社員の過去2ヶ月間の仕事において

  • その社員は自分の能力が仕事に必要な能力を上回っていると思っているか?
  • 2種類のジョブクラフティングをどれだけ行ったか?
  • 直属の上司から見て社員のパフォーマンスはどうか?

といったことが測定されています。

結果:過剰能力のジョブ・クラフティングの効果

研究の結果を見てみると、

  • 能力が過剰に高いと思っている人ほど、強みを活かすジョブ・クラフティングと、興味を活かすジョブ・クラフティングを多く行っていた
  • 強みを活かすジョブ・クラフティングは、優秀社員の活力を高め、仕事のパフォーマンスまで向上していた
  • 興味を活かすジョブ・クラフティングは、優秀社員の活力を高めていたが、仕事のパフォーマンスは向上していなかった

ということ。

こうしてみると、優秀な社員にはあれこれ強い束縛をせずに、自分のスキルを活かすように、ある程度自由に働いてもらったほうが良いことが分かります。Googleでは仕事の時間の20%を自分の好きなように使って良いと聞きますが、まさにこうした制度が優秀な社員を惹きつけるのに役に立っているのかもしれませんね。

結果2:強みを活かすジョブ・クラフティングの注意点

この研究では強みを活かすジョブ・クラフティングにも注意点が発見されていて

  • 社員が会社との一体感を感じていて、社員の目的と会社の目的が一致していないと、強みを活かすジョブクラフティングのパフォーマンス向上は低減してしまった

ということ。

つまり、優秀な社員にはある程度自由にやってもらうにしても、きちんと会社の目指す方向と合っていないといけないわけです。そのためにも、会社の方針の共有や、社員が自分の会社を好きでいられるような文化作りも大切になるでしょう。

まとめ

本稿では「能力が高すぎる社員のジョブクラフティングの効果」についてお話ししました。

ポイントをまとめると、

  • 能力が高い社員が強みを活かすジョブ・クラフティングをすると、仕事の活力とパフォーマンスが向上する
  • 能力が高い社員が興味を活かすジョブ・クラフティングをすると、仕事の活力は向上するが、パフォーマンスは向上しない
  • 強みのジョブ・クラフティングでパフォーマンスを上げるには、社員と会社の一体感が必要

ということ。

能力が高い社員がいるなら、その人には強みを活かしてどんどん挑戦してもらうと良いでしょう。ただし、ジョブ・クラフティングは社員が主体的にやるもので、会社からやらされるものではないので、その点は注意しましょう。

以上、本稿はここまで。


[参考文献]

*1 : Job crafting towards strengths and job crafting towards interests in overqualified employees: Different outcomes and boundary effects

Naoto

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