目標を設定すれば、集中力はより長く維持できるようになるのか？の研究

仕事や勉強は集中力を浪費するもので、長時間頭を使っていると段々と集中力が低下してしまいます。授業中なのにウトウトと眠くなってしまったり、仕事中に関係ないことを考えていたり、集中力を維持するのは難しいものですよね。

そこで本稿では、

• 目標設定は集中力を維持するのに役に立つのか？

について調べてくれた研究を見てみましょう。

目標設定と集中力

目標設定はタスクのモチベーションを上げるのに定番の手法です。

何も目標を持たずに「試験勉強を頑張ろう」と思って勉強するよりも、「80点以上を目指して毎日1時間勉強しよう」と目標を明確に決めておいた方が、達成しようという気持ちが高まるものですよね。

そこで目標設定は短期的なタスクにも応用できて、

• これから30分で100個の英単語を勉強しよう
• 資料作成を1時間以内で終わらせよう

など、一つ一つのタスクに目標を決めてあげれば、そのタスクの間は集中力を高く維持できることが期待できます。短く時間を区切るからこそ、集中力が維持しやすいということもあります。

テキサス大学らの研究では、この点について実験していて

• 30分の間、パソコンの画面に映し出されたタイマーが動き出したら、できるだけ早くストップボタンを押す

というタスクを行っています。

このとき目標設定の効果が試されていて

• 反応時間が300ms以内を目標にしたときや、800ms以内を目標にしたときに、目標なしの場合よりも集中力や反応速度が向上するのか？
• 目標に加えて、実際の反応時間のフィードバックを与えると、効果は向上するのか？
• 目標を達成できた場合の報酬をつけると、効果は向上するのか？

といったことが分析されています。

結果：目標設定で集中力は向上するのか？

早速結果を見てみると、

• 目標設定をした人は、反応速度が向上していて、後半になっても反応速度が速いまま維持していた
• これは目標設定がタスクへの警戒心を後半まで維持してくれているからだった
• 目標の難易度は300msでも800msでも同じように効果が得られていた

ということ。

確かに、目標を設定すればタスクの集中力が向上し、後半まで高いパフォーマンスを維持できるという結果になっています。面白いのは、目標設定はモチベーションは特に向上していなかったということ。なので、やりたくなくてモチベーションの湧かない仕事でも、目標の時間を決めて短時間で終わらせようとすれば、集中力やパフォーマンスは向上できるのかもしれませんね。

結果2：フィードバックの効果

続いて、目標に対して、今自分がどれだけ達成できているのかのフィードバックを与えた場合は、

• 目標設定とフィードバックを組み合わせた人が、一番集中力の低下が低かった
• フィードバックが加わると、タスクに関係ないことを考えてしまうことが減り、反応時間が大きく低下してしまうことが減った

ということ。

フィードバックをつけると、目標設定の効果がより高まることが確認されています。なので、目標は達成できたかどうかのフィードバックが得られるものを設定するとより効果的でしょう。例えば、目標が「30分で英単語を100個を覚える」だったら、その結果として「30分で英単語を103個覚えられた」とフィードバックを自分一人でも得ることができます。

結果3：報酬の効果

最後に目標を達成できた時の報酬をつけた場合を見てみると、

• お金の報酬をつけても、集中力は改善されず、反応時間も向上しなかった
• 時間の報酬をつけると、タスクのモチベーションと注意が向上したが、パフォーマンスは向上しなかった

ということ。

集中力の維持には報酬はあまり効果がないということ。報酬がつくのでモチベーションは高めてくれるようですが、残念ながらそれがパフォーマンスの向上にはつながらないようです。

まとめ

本稿では「目標設定で集中力は長く維持できるようになるのか？」についてお話ししました。

ポイントをまとめると

• 目標を設定すると、集中力が向上し、より長く高いパフォーマンスを発揮できるようになる
• 目標に加えてフィードバックもつけると、この効果がより大きくなる
• 目標達成に報酬をつけても、集中力やパフォーマンスは向上しなかった

ということ。

仕事や勉強は、30分とか1時間の集中しやすい区切りで分割して、その一つ一つの区切りで目標設定をつけると良さそうですね。

以上、本稿はここまで。

[参考文献]

*1 : Examining the Effects of Goal-Setting, Feedback, and Incentives on Sustained Attention