階層型組織は仕事のパフォーマンスにとって良いものなのか?悪いものなのか?

会社の組織にも様々な形があって、役職といった上下関係がしっかりと決められた階層型の組織もあれば、個人の裁量で比較的自由に仕事を進められる会社もあります。

それで、この階層型組織は賛否両論のあって、

「階層型の組織の方が仕事の調整がしやすくて組織のパフォーマンスが上がる」

という意見もあれば、

「階層型組織はメンバー間の対立を生んで組織のパフォーマンスを下げてしまう」

という意見もあるんですね。

そこで、本稿では「階層型組織とチームのパフォーマンスの関係」を分析してくれた研究(*1)を参考に、階層型組織の良い面と悪い面を探っていきましょう。

階層型組織は本当にいいものなのか?

研究(*1)では階層型組織とパフォーマンスの関係を調べてくれた54件の研究をメタ分析でまとめてくれています。これらの54件の研究を合わせると、研究対象となったチーム数は13,914チームにもなるとのこと。

そして、これらのデータから何を調べたのかというと

  • (良い面)階層型組織は組織内のメンバーの統制を促進してくれるのか?
  • (悪い面)階層型組織はチームメンバー間の対立を増やしてしまうのか?

という階層型組織の良い効果と悪い効果が本当に存在するのかを調べています。

良い面としては、階層型組織で上下関係と各個人の役割が明確になる方が、チーム全体で同じ目標に向かうのに適しているのではないかということですね。明確なトップダウンの指示がないと、各メンバーがバラバラになってしまいそうですもんね。

悪い面としては、階層型組織で上下関係が決まると、上司との価値観が合わないときなどに対立が起きてしまうことがあるということですね。

そしてこの研究の分析ではこれらの良い効果・悪い効果の結果として

  • 階層型組織はチームのパフォーマンスを上げるのか?
    (パフォーマンスとは、目標の達成率や、アウトプットの質や量、仕事の効率など)
  • 階層型組織はチームの成長能力を上げるのか?
    (成長能力とは、メンバーのコミットメントやチームへの満足度、チームへの残存率、離職率の低さなど)

という階層型組織が最終的にチームのアウトプットにどう繋がるのかまでを分析してくれています。

メタ分析の結果とは?

そして分析の結果どのようなことが分かったのかというと

  • 階層型組織の方がメンバーの統制がうまくいくということはなく、逆に負の相関があった
  • 階層型組織の方がチームメンバー間の対立が多かった

ということ。

残念ながら階層型組織がメンバー統制に良いと考えられていた効果は確認されず、悪い効果のみが結果として現れてしまっています。メンバーを統制するということは、ただ階層型の組織に当てはめて指示すればいいというわけではなく、もっと難しい問題なのかもしれませんね。

さらに、階層型組織とチームのパフォーマンスの関係がどうだったのかというと

  • 階層型組織の方がチームのパフォーマンスも低かった
  • 階層型組織の方がチームの成長能力も低かった

ということ。階層型組織には統制の低下や対立が増えるという悪い効果があって、それらが結果としてパフォーマンスと成長能力の低下につながってしまったということです。

仕事のタイプによって変わるのか?

さらに、この研究では深掘りして「仕事のタイプによっては階層型組織の方がいいこともあるのではないか?」という疑問についても調査していて、次の3つの仕事の要素が階層型組織とチームのパフォーマンスの関係にどう影響するのかを分析してます。

  • 仕事の相互依存性
    各メンバーが仕事を進めるのに、どれだけ他のメンバーと協力する必要があるのか?
  • 仕事の明瞭性
    各メンバーの仕事内容が明確に決められているのか?
  • 仕事の複雑性
    メンバーの仕事が答えや解決方法がいくつもあるような複雑な課題かどうか?

そしてその結果として分かったのが、

  • 仕事の相互依存性が強くなるほど、階層型組織ではパフォーマンスが下がってしまった
  • 仕事の明瞭性が高いほど、階層型組織はパフォーマンスを向上してくれた
  • 仕事の複雑性は特に関係なかった

ということ。

やることが明確に決まっている仕事では階層型組織が役には立つということですが、これは逆の意味では、仕事内容が明確でなく、その時々の状況で臨機応変に対応しなければいけないような仕事では階層型組織は不利ということなので注意が必要ですね。

まとめ

本稿では「階層型組織は本当に良いものなのか」についてお話ししました。

ポイントをまとめると

  • 階層型組織にしたからといってメンバーの統制がうまく取れるわけでもない
  • 階層型組織にはメンバー同士の対立を増やしたり、パフォーマンスの低下や成長能力の低下といった悪い効果の方が多い
  • やることが明確にきまった仕事では階層型組織が役に立つこともある

ということですね。

トップダウンの命令が強い組織ではなく、社員全員が自分の裁量をある程度持って主体的に働く組織の方が強いということですね。なので、トップダウンであれこれと細かく指示するほど、組織のパフォーマンスは低下してしまう可能性があるので注意が必要ですね。

以上、本稿はここまで。


[参考文献]

*1: Why and When Hierarchy Impacts Team Effectiveness: A Meta-Analytic Examination

Naoto

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

コメントする