仕事のパフォーマンスや職場の幸せを上げるのに有効な3つの心理的能力とは?
最近ではポジティブ心理学が仕事の場面にも応用がされていて、働きがいや職場での幸せをどうすればも研究が進んでいるんですね。
その中でもある研究(*1)によると
仕事のパフォーマンスや幸福度と相関する3つの心理的な能力
が調べられていたので、紹介したいと思います。
3つの心理的能力
仕事のパフォーマンスや幸せには社員の性格や能力などの様々な要因が影響しますが、この研究では次の3つの心理的な能力に注目しています。
①希望
ゴールが達成できるという感覚を持って、それを達成しようと行動するモチベーションにつなげる能力。
②楽観主義
物事を楽観的に考える能力。楽観的な人は良い出来事の解釈が永続的で全体的かつ自分に原因があると考える傾向があります。例えば、仕事でプレゼンがうまくできたときに
永続的:今回だけでなく今後のプレゼンもうまくいくと考える
全体的:「俺ってすごいのかも」みたいにプレゼン能力だけでなく自分全体が良かったと考える
原因 :うまく行ったのは自分が頑張ったからと考える
という感じ。
③レジリエンス
逆境に立ち向かったり、失敗から早く立ち直る能力。この能力が高い人は困難な仕事にも積極的にチャレンジしていける。
なぜこの研究がこれらの3つの能力に着眼したのかというと、これらの3つの能力は性格のように変えられないあるいは変えるのに時間がかかるものではなく、比較的に後からでも身につけやすい能力だからということです。
例えば、希望なんかはゴール設定やゴールまでの計画の設定方法などを工夫することでも上げることができますし、楽観主義なんかも物事の良い面に注目してみたりすることでも高めることができます。
希望、楽観主義、レジリエンスの効果
この研究ではこれらの3つの心理的能力が
- 仕事のパフォーマンス
- 仕事満足度
- 仕事での幸福度
- 組織へのコミットメント
にどのように関係しているのかを調べています。
調査の対象としては、様々な業界の135の組織の総計1032人から全般的なデータを取得し、さらに 232人から追加で仕事のパフォーマンスなどの詳細のデータを取得しています。
これらのデータから分析して得られた相関係数が次の表です。
パフォーマンス | 仕事満足度 | 仕事の幸福度 | コミットメント | |
希望 | .22 | .34 | .31 | .10 |
楽観主義 | .16 | .34 | .35 | .09 |
レジリエンス | .14 | .28 | .30 | .12 |
これらはどれも統計的に有意な値ということ。(p<0.01)
この値から分かるのは、希望、楽観主義、レジリエンスはどれも仕事のパフォーマンスや満足度、幸福度、コミットメントを上げてくれるということですね。
ただし、コミットメントについては相関係数が低めになっているので効果の大きさとしては小さめかもしれませんね。
さらにこの研究ではステップワイズ法というデータ分析で深掘りをしていて、
その結果としてわかったのが、
- 楽観主義の人は仕事のパフォーマンスが高い
- 希望のある人は仕事満足度、仕事の幸福、コミットメントが高い
という2つの関係が特に強いということです。
金額にするとどのくらいの効果なのか?
この研究では面白いことにこれらの3つの心理的能力の効果が金額にするとどのくらいなのかも算出てくれています。
その結果は
- 年収550万の従業員で算出すると1人あたり1年で30万〜60万の効果
ということです
なので1000人の会社なら3〜6億の効果ということですね。
まとめ
本稿では仕事のパフォーマンスや仕事の満足度を高めてくれる心理的な能力について説明しました。
ポイントをまとめると
- 希望、楽観主義、レジリエンスは仕事のパフォーマンスや満足度、幸福度、コミットメントと相関している
- その中でも楽観主義とパフォーマンスの関係と、希望と満足度・幸福度・コミットメントの関係が強い
ということですね。
希望、楽観主義、レジリエンスは性格などと違って、比較的に後からでも身につけやすい能力ということなので、これらの3つを高めていけば充実した仕事につながるかもしれませんね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1: Positive Organizational Behavior in the Workplace: The Impact of Hope, Optimism, and Resilience