運動が睡眠を改善する効果はどのくらいなのか?を調べた研究

最終更新日

Comments: 0

十分な睡眠時間が取れなかったり、スマホの影響などで睡眠の質が低下していたりで、日中に眠くなってしまうということに悩む人も多いと思います。

良い睡眠を取るためには、夕方以降はカフェインを控える、寝る前に風呂に入って体を温めるなど、様々な改善策がありますが、その中の一つに”運動をする”もあります。

そこで、本稿では運動と睡眠の関係を調べてくれた研究(*1)を参考に、運動が睡眠をどれだけ向上してくれるのかを見ていきたいと思います。

目次

  • 一時的な運動の睡眠改善効果
  • 習慣的な運動の睡眠改善効果
  • 睡眠の質を高める運動のポイント
  • まとめ

運動は睡眠をどれだけ改善してくれるのか?

この研究では、まず運動を次の2つに分けて効果を検証しています。

  • 一時的な運動(1週間以内)
  • 習慣的な運動(1週間以上継続)

そして、一時的な運動に関する41件の研究と習慣的な運動に関する25件の研究を集めて、メタ分析という手法でこれらの研究を総合的に見たときに、運動に睡眠を改善する効果があるのかを確かめてくれています。すべての研究を合わせると、実験の総参加者数は2,863人で、そこから得られた457個の効果量をまとめてくれています。

そして、睡眠の良し悪しとしては次の指標を採用しています。

  • 睡眠の総時間
  • 余波睡眠(深い眠り)の時間
  • 睡眠のステージ1〜4の時間
  • レム睡眠()の時間
  • ベッドについてから眠るまでの時間
  • 夜中に起きた回数
  • 睡眠効率(ベッドにいる時間のうち実際に寝ている時間の割合)
  • 睡眠の質

様々な指標を使うことで、運動がどのように睡眠を改善してくれるのかを分析しているみたいですね。

一時的な運動の効果

それでは一時的な運動の効果から見ていきましょう。
メタ分析の結果わかったのは

  • トータルの睡眠時間を増やす(効果量:d=0.22)
  • 眠りにつくまでの時間が短くなる(効果量:d=0.17)
  • 睡眠の効率が上がる(効果量:d=0.25)
  • 深い眠りの時間が増える(効果量:d=0.19)
  • ステージ1の浅い眠りの時間が減る(効果量:d=0.35)
  • レム睡眠の浅い眠りの時間が減る(効果量:d=−0.27)

ということで、簡単にまとめると

  • 眠りにつくまでが速くなって、トータルの睡眠時間も増える
  • さらに浅い眠りが減って、深い眠りが増える
  • だけど、その効果量は小さめ

ということですね。

一時的な運動でも効果は小さめですが、睡眠を改善する効果がちゃんとあるみたいですね。

習慣的な運動の効果

一方で習慣的な運動の効果がどうだったのかというと

  • トータルの睡眠時間を増やす(効果量:d=0.25)
  • 眠りにつくまでの時間が短くなる(効果量:d=0.35)
  • 睡眠の効率が上がる(効果量:d=0.30)
  • 睡眠の質が上がる(効果量:d=0.74)

ということ。こちらも簡単にまとめると

  • 眠りにつくまでが速くなって、トータルの睡眠時間も増える
    (一時的な運動よりも効果量は少し高い)
  • 睡眠の質がグッと良くなる
    (効果量が0.74で高め)

ということです。

習慣的に運動をすれば、睡眠の質が良くなる効果があるみたいで、これは一時的な運動では得られないということです。

運動の睡眠改善効果に影響する要因

続いて、この研究では運動の睡眠改善効果が人によって変わったり、運動の種類なんかでも変わったりするのではないかということを調べてくれています。
その結果としてわかったことは

  • 有酸素運動でも無酸素運動でも効果は同じ
  • 寝る時間の3時間前〜8時間前の間に運動をすると効果が高い
    (深い眠りの時間が長くなる)
  • 習慣的な運動では運動時間が長いほど効果も高い
    (眠りにつくまでの時間が速くなる)
  • 一時的な運動では男性の方が得られる効果が高かった
  • 普段の活動レベルが高い人は一時的な運動で深い眠りがより大きく増えた
  • 習慣的な運動では年齢が若い方が効果が高かった

ということです。ポイントとしては

  • 運動は有酸素運動でも無酸素運動でも良いが、時間は長めが良い
  • 運動は寝る3時間前〜8時間前の間が良い

ということに気をつければ良いと思います。

まとめ

本稿では、運動が睡眠を改善する効果についてお話ししました。

ポイントをまとめると

  • 一時的な運動でも、眠りにつきやすくなり、深い眠りも増える効果はある
    ただし、効果の程は小さめ
  • 習慣的な運動にも、眠りにつきやすくなり、深い眠りも増える効果があり、さらに睡眠の質がグッと良くなる
  • 運動のポイントは、有酸素運動でも無酸素運動でも良いが、寝る3時間〜8時間前に行い、運動時間は長めが良い

ということですね。

運動は長めが良いということですが、オーバートレーニングになると逆に睡眠の質が低下してしまうので注意してください。私も一時期トレーニングのボリュームを上げた時に、睡眠の質が落ちて夜中に何度も起きてしまうようになってしまった経験があります。なので、このような症状が見られたら運動量を減らして見てください。

以上、本稿はここまで。


[参考文献]
*1: The effects of physical activity on sleep: a meta-analytic review

Naoto

シェアする