個人の共感能力だけでなく、チームの感情スキルを高めることも大切だという研究結果
仕事ではチームで働くことが多く、どのようなチームが高いパフォーマンスを発揮できるのかは色々と研究されています。例えば、どんな性格の人が集まるとチームのパフォーマンスに高まるのかなどですね。
それらの研究の一つとして、感情スキルに注目する研究もあります。感情スキルとは、EQ(emotional quotient:心の知能指数)としてよく知られているような感情に関する能力のことです。これらの感情スキルは仕事において大切なもので、感情スキルが高い人ほど仕事で成果を上げやすいことが分かっているんですね。
そこで、感情スキルは個人として高いことはもちろん大切だけど、チームとして感情の対応能力が高いことも実は大切なのではないかと考えたのがグリフィス大学の研究(*1)になります。
この研究ではチームとしての感情スキルが仕事の成果やコミュニケーションにどう影響するのかを調べてくれています。そこで、本稿ではこの研究を参考に、チームのパフォーマンスを高めるためには、どのような感情スキルが必要なのかを見ていきましょう!
感情スキルとは
感情スキルには大きく4つの分類があります。
- 自分の感情に気づくスキル
- 他人の感情に気づくスキル
- 自分の感情に対処するスキル
- 他人の感情に対処するスキル
感情に気づくスキルは文字通りに、自分や他人の感情に適切に気づく能力を表しています。一方で感情に対処するスキルは、怒りのままに行動してしまわないように感情を抑えたり、場面によって適切に感情を表現したり、あるいは他人を励ましたりモチベートしたりと、感情をうまく感情をコントロールする能力のことを言います。
チームの感情スキルとは
チームがうまく機能するにはメンバー同士が強みを活かしあって、弱みは補い合うことが必要になります。こういったメンバー同士の相互支援を円滑にこなすために、チーム内でメンバー同士がお互いの感情に気づいて適切に対処し合うような関係性をチームの感情スキルと言います。チームの感情スキルはメンバー個人の感情スキルを総合したものという見方もできます。
感情スキルとチームのパフォーマンス
グリフィス大学の研究ではチームの感情スキルとパフォーマンスの関係を調べるために、244人(合計57チーム)にプレゼンの課題を与えて8週間のチーム活動を行ってもらっています。
その結果としてどのようなことが分かったのかというと
- 個人としての感情スキル(気づきと対処)は、その人がチームでうまくコミュニケーションを取れるかどうかと関係はなかった
- 一方で、チームとして感情に対処するスキルが高いと、チームメンバーのコミュニケーションはうまくいった
ということなんですね。つまり、チームのコミュニケーションを高めたい場合には、個人的な感情スキルよりも、チームでお互いに感情をうまく対処していく能力が大切ということですね。個人的に感情スキルが高くても、チーム全体がギクシャクしてしまっていたら、コミュニケーションはうまくいかないのかもしれませんね。
さらにプレゼンのパフォーマンスがどうだったのかというと
- チームの感情スキルが高いと、プレゼンのパフォーマンスも高かった
ということで、チームの感情スキルが高いとコミュニケーションが上手くいって仕事の成果も上がるということが示唆されたわけです。
そして、チームの感情スキルの弱点として面白かったのが
- チームの感情に気づくスキルは、メンバーのコミュニケーションに負の相関をしていた
ということなんですね。この結果に関しては、感情に気づくスキルは高すぎると、相手の感情を伺いすぎてむしろコミュニケーションがとりづらくなってしまうということが考えられるみたいです。
まとめ
本稿では「チームの感情スキル」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- チームの感情に対処するスキルが高いと、コミュニケーションが良くなって、仕事のパフォーマンスを上がる!
- しかし、感情にお互いの感情に気を使いすぎてもコミュニケーションはとりづらくなってしまうので注意!
ということですね。
やっぱり、チームとしてお互いにモチベーションを高めあったり、支え合う関係は大切みたいですね。
以上、本稿はここまで
[参考文献]
*1: A multilevel model of emotional skills, communication performance, and task performance in teams