天職の良い所と悪い所。天職はコストが高いという研究結果
天職とは自分はこの仕事のために生まれてきたと思えるような、自分にぴったりの職業のことです。
自分の天職で働けるということは幸せなことで、心理学の研究でも
- 天職だと感じている人は、モチベーションが高い
- 天職だと感じていると人生の満足度が向上する
- 天職だと感じているとストレスも感じにくくなる
などの良い効果が確認されているようです。
それでは天職には悪い面はないのかというと、そうでもないみたいで、ワシントン大学の研究(*1)によると天職はコストが高いというんですね。
そこで本稿ではこの研究を参考に、天職の良い所と悪い所をお話ししていきたいと思います。
天職の良い所と悪い所
ワシントン大学の研究では動物園の飼育員を対象にして、天職と感じることどのような効果があるのかを調査しています。
なぜ動物園の飼育員なのかというと、アメリカでは飼育員は大変な仕事の割には給料は低めで、かつ昇進も少ない、それにも関わらず飼育員は高い働きがいを感じているからということ。つまり、飼育員はお金や地位でなく、純粋に動物園で働きたいと思っている人が多く、天職だと感じている人も多いんですね。
それで、この研究では157箇所の動物園の合計982人の飼育員を対象に、アンケート調査をしていて、天職と感じている飼育員の特徴を分析しています。
天職だと感じる2つの要素
その結果によると、
- 天職だと感じている人ほど、自分の仕事に意義を感じている
- 天職だと感じている人ほど、飼育員と職業を重要な仕事だと感じている
ということ。つまり、天職だと感じている人は「自分に適した職業だとフィット感」と「社会的に役に立つ仕事だという意義感」の2つを感じているということです。
具体的に飼育員がどのようなことを答えたのかというと、「動物が好きな自分にはこの仕事しか考えられない」とか、「絶滅の危機にある動物を保護することに意義を感じる」と言った感じです。
なので、自分の天職を探すときにも、「自分の好き嫌い」とともに「社会の役に立つこと」の2つで考えると良いのかもしれませんね。
天職はコストが高い
天職については悪い面もわかっていて、
- 天職だと感じている人ほど、仕事への義務感が高い
- その結果として、自分の人生を犠牲にしてでも仕事を優先してしまう傾向もあった
ということ。
具体的に飼育員がどんな目にあってしまうのかというと、安い給料で働かされてしまったり、夜に働かなければいけないこともあって自分の生活のリズムが崩れてしまったりという感じです。動物の世話を放り出すわけにもいかないので、その義務感から断ることができないんですね。
もちろん天職で働くことが幸せなことなので、自分が納得できればそれでいいと思います。バランスを間違えて自分の人生を犠牲にしすぎないように注意は必要ということですね。
天職はいつ生まれたのか?
はるか昔の原始人だった頃の仕事は狩猟など食料を確保することでしたが、それは生きるために必要だから行うもので、天職という感じではありませんでした。
中世のキリスト教でも労働は罰であって、食べるために必要だから働くというスタンスです。なので、生活に必要な分だけ働いたらそこで労働は終了で、それ以上に稼ごうなんて人は少数だったようです。
それでは、いつ天職という概念が生まれたのかというと、16世紀の宗教改革のときなんですね。この宗教改革によって、自分の職業に一生懸命に取り組むことが良い生き方だという考えが定着し、広まっていったということ。こうしてみると天職は意外と最近の考え方なんですね。
そして、この天職の考え方が定着して一生懸命に働くようになると、経済の発展が加速して、科学や資本主義とともに世界がどんどんと成長するようになったんですね。
しかし、天職の考えが世界を発展させた一方で、最近では仕事でうつになったりと働きすぎが原因で不幸になる人も増えてしまっています。なので、一生懸命に働くことも大切ですが、自分の人生を犠牲にしすぎないようにバランスをとることも大切だと私は思います。
まとめ
本稿では「天職には悪い面もある」というお話をしました。
ポイントをまとめると
- 天職には「自分へのフィット感」と「社会への貢献感」が必要
- 天職の悪い面として、社会のために自分がやらなくてはという義務感が生まれてしまって、自分の人生が犠牲になってしまうことがある
- 天職という考えは比較的に新しいもので、絶対に正しいというものでもない。なので、仕事と人生のバランスをちゃんと取ろう。
ということですね。
あまり義務感が強すぎても良くないということなので、天職と大袈裟に考えずに、自分に合っていて社会にも貢献できる仕事と考えるくらいでもいいのかもしれませんね。
[参考文献]
*1: The Call of the Wild: Zookeepers, Callings, and the Double-Edged Sword of Deeply Meaningful Work