ゲームで攻撃性が増す?ゲームの悪影響はどこまで本当なのかに関する研究
最近ではゲームで遊ぶ子供もずいぶんと増えています。特にスマホでゲームができるようになったこともあって、今ではほとんどの子供がゲームで遊ぶようになっているのではないでしょうか。
しかし、それに伴って問題視されるようになったのが、ゲームが子供に与える影響についてです。
- 暴力的なゲームで子供が攻撃的になってしまうのではないか?
- ゲームをすると学力が下がってしまうのではないか?
- ゲームばかりやって社会的なつながりが薄れてしまうのではないか?
といった問題ですね。
なぜこれらの問題が出てきたのかというと、アメリカの銃の乱射事件であったり、学力の低下だったりと、何かと問題があるとゲームを犯人扱いする人がいるからなんですね。
しかし、これらのゲームの悪影響の話は確かにあり得そうな話ではありますが、データで確かめられた証拠はないんですね。
そこで本稿では、エビデンスベースでしっかりとデータ分析してくれた研究(*1)を参考に「ゲームの悪影響はどこまで本当か?」を見ていきましょう。
ゲームと子供への影響
ステッソン大学の研究(*1)では、メタ分析という手法を用いて、ゲームの悪影響に関する101件の研究結果をまとめてくれています。この研究が扱ってくれた悪影響は5つの種類があって
- 攻撃性の増長
- 社会性の低下
- 学業の成績の低下
- うつ症状の増加
- 集中力の低下
ということ。どれもゲームを悪者扱いする人がよく話題に出すものですね。
結果①:ゲーム全般の悪影響は実はほぼゼロ
まず最初に種類を問わずに全てのゲームを総合した場合に、ゲームのそれぞれの悪影響への相関がどうなったのかというと、
- 攻撃性の増長 : r = 0.06
- 社会性の低下:r = 0.04
- 学業の成績の低下:r = −0.01
- うつ症状の増加:r = 0.04
- 集中力の低下: r = 0.03
という結果が得られています。
どの悪影響の相関の値もほぼゼロであることから、ゲームの悪影響はほとんどないという結果が分かります。
結果②:暴力的なゲームの悪影響もほぼゼロ
続いて暴力的なゲームに絞った場合に、それぞれの悪影響への相関がどのようになったのかというと、
- 攻撃性の増長 : r = 0.06
- 社会性の低下:r = 0.04
- 学業の成績の低下:r = N/A
- うつ症状の増加:r = 0.00
- 集中力の低下: r = N/A
という結果となっています。(N/Aはデータ不足のため算出不可)
相関の値を見てもらえれば分かるとおり、暴力的なゲームの場合でもほぼゼロに近いので、ゲームが子供に与える影響はあったとしてもごく僅かなものだと言えます。
結果③:バイアスについて
101件の研究を総合するとゲームの悪影響は最小限で取るに足らないものという結果となってますが、その中には悪影響があったという研究も混じっています。
そこで、それらの研究の違いを分析してくれていて、
- 質の高い研究ほどゲームに悪影響は無いという結果が多かった
- 逆に質の低い研究ではゲームの悪影響が確認されることもあった
ということが分かっています。
質の低い研究では、攻撃性などの悪影響の測定方法が標準化されていなかったりして、研究者がゲームには悪影響があるものだという想定に有利な測定方法を選んでしまった可能性があるということ。
つまり、ゲームには悪影響があるという研究結果は、実験方法に偏りがあって信頼度は低めということですね。これらを考慮すると、今回のゲームに悪影響はほとんどないという研究結果は、信頼度は高めと言えるでしょう。
ただし、一部の研究結果では人のよる影響度の違いも報告されていて、大半の人にはゲームは悪影響はなかったけど、ごく一部の人だけ攻撃性が増したという研究結果もあるようです。なので基本的には悪影響は心配しなくても大丈夫だと思いますが、もしゲームの影響で明らかにおかしな行動をとる子供がいたら、その子供は別途対処する必要があるのかもしれません。
まとめ
本稿では「ゲームの悪影響はどこまで本当か?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 暴力的なゲームでも普通のゲームでも次のような悪影響はほとんどない!
①攻撃的になる
②社会性が低下する
③学業の成績が落ちる
④うつの症状が増える
⑤集中力が低下する
ということですね。
私も子供の頃からゲームをやって育ってきましたが、周りの友達を思い出しても、ゲームが原因で攻撃的になったりしている人はいなかったと思います。もちろんゲーム中毒になって学校をサボるとかまでいくと悪影響はあると思いますが、普通に学校にいって普通にゲームで遊ぶ程度なら悪影響はほぼないと考えていいと思います。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]