座りすぎはどのくらい運動すれば解消できるのか?
仕事ではデスクワークで座りっぱなし、帰ってもテレビを見たりネットを見たりで座りっぱなしと、一日中座りっぱなしという人も多いと思います。しかし、座りっぱなしは健康には悪いことで、座りっぱなしが様々な生活習慣病のリスクをあげてしまうことが問題となっています。
これに対して、運動は健康にいいものです。座りっぱなしが体をほとんど動かさないわけですから、その逆で運動で体を動かすことが健康を促進しているわけですね。人間は動物なので本来は動くことが必要だということです。
そうすると気になるのが、「座りっぱなしの悪い効果を解消するのには、どのくらいの運動をすればいいのか?」ということ。
そこで本稿では、この問題について調べてくれた研究(*1)を参考に、座りっぱなしを解消するための運動量についてお話ししていきたいと思います。
座り時間と運動量
この研究では、座りっぱなしと普段の運動量の関係を調べた研究の中から、質の良いものを16件選出してメタ分析でまとめています。これらの研究を合わせるとデータ数は100万人以上ということで、結構大規模なデータ分析となっています。
それでは、研究結果からわかったことを見ていきましょう。
結果①:座りっぱなしと死亡率
まず最初に運動量が低い人の間で見られた傾向として
- 1日の座り時間が長くなるほど、全死因死亡率が増加した
- 運動量が少ないと、座り時間が短くても12%死亡率が増加して、座り時間が長くなると最大で59%も死亡率が増加した
ということ。
やはり座りっぱなしは健康に悪いもので、座り時間が長いほど死亡率が上がってしまうという結果が得られていますね。
結果②:運動の効果
続いて、運動量が高いグループの結果を見てみると、
- 運動量が最も多いグループ(週35.5METs)では1日8時間以上座っても死亡率は増加しなかった
- 座り時間が長くて運動量が多い人は、座り時間が短くて運動量が少ない人よりも死亡率は低かった
ということ。
1日に8時間以上座る人はそれを完全に解消するためには週に合計35.5METほどの運動が必要だということです。これがどのくらいの運動量かというと、中程度の負荷の運動を毎日1時間〜1時間15分に当たります。結構な運動量ですね。
ちなみに、8時間以上座る人で運動量がこれを下回った場合でも、完全に死亡率の低下を解消することはできないけど、そこそこ改善することは可能です。
また、座り時間が短くて運動量が少ない人よりも、座り時間が長くても運動量が多い人の方が死亡率は低かったということで、運動の健康効果の高さが座りっぱなしの解消を補ってあまりある効果を発揮していることがわかります。
結果③:テレビを見る時間
この研究ではテレビを見る時間の長さと死亡率の関係も調べてくれています。
その結果は、
- 1日に1時間〜2時間のテレビの視聴であれば死亡率は増加しなかった
(ただし最も運動量が低いグループ以外) - 3時間を超えると運動量が最も高いグループ以外は死亡率が増加した
- 5時間を超えると運動量が最も高いグループでも死亡率が増加した
ということ。
基本的にはテレビを見る時間も死亡率を低下させてしまうけど、運動量でそれをある程度は解消ができるといった感じです。ただし、5時間を超えてしまうと週に合計35.5METsの運動でも死亡率の増加は解消しきれなかったということなので注意が必要ですね。
おそらくテレビだけでなく、ネットやスマホ、ゲームなども体を動かさないという点では同じなので、同じように死亡率を低下させてしまう可能性があります。そうなると1日5時間もまんざらではなくなってしまうので気を付けましょう。
まとめ
本稿では「座りっぱなしを解消するための運動量」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 座り時間が長いほど死亡率は増加してしまうが、運動で解消ができる
- 運動量としては1日に8時間以上座る人では毎日1時間程度の運動が必要
- テレビは5時間を超えると運動でも解消できないので見過ぎに注意
ということですね。
座りっぱなしの解消をするには
- 運動を習慣にする
- 座りっぱなしにならないように30分に一回は体をストレッチする
- スタンディングデスクを使う
- ステッパーやエアロバイクで運動しながらテレビを見る
などの対策ができると思います。
特に運動をするとその後のタスクのパフォーマンスが上がったりもするので、座りっぱなしにならないように30分おきくらいで、こまめに運動をするのも良い手だと思います。例えば、スクワットや階段を上り下りなどの運動なら割とどこでもできるので、隙間時間などでできるのではないでしょうか。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Physical activity attenuates the detrimental association of sitting time with mortality: A harmonised meta-analysis of data from more than one million men and women