人はクリエイティブなアイデアを実際に出されると嫌だという研究結果
クリエイティビティが大切か?と聞かれれば、誰でも「大切だ」と答えるでしょう。
斬新な商品の発明だったり、新しい問題解決方法の発見だったりと、クリエイティビティは新しいものを生み出すときの源泉なわけですから、そりゃ大切なわけです。
しかし、アイデアが新しいということは、前例がないというネガティブ面もあります。つまりクリエイティブなアイデアは大きなプラスになる可能性がある一方で、
- 不確実性が高い
- 失敗のリスクが高い
というネガティブな側面も持っているわけですね。
そうすると困ったことに
- 人はクリエイティビティは大切だと考えていて、みんなにはクリエイティブでいて欲しいと考えている
- しかし、クリエイティブなアイデアを実際に出されたときには、リスクが怖くて受け入れられない
ということが起きてしまう可能性があるわけですね。
そこで本稿では、このクリエイティブなアイデアほど嫌われてしまうバイアスが本当にあるのかを調べてくれた研究(*1)を見ていきたいと思います。
クリエイティブなアイデアは嫌われるのか?
この研究では2つの実験により、不確実性が高い状況と低い状況で、クリエイティブさをどのように評価するのかを比較しています。
実験1
一つ目の実験では「不確実性を感じているときほどクリエイティブさはマイナスに評価されてしまうのでは?」ということを確かめてくれています。
この実験では73人を対象にしていて、半分は不確実性の低いグループ、もう半分は不確実性の高いグループに分けています。不確実性の高いグループは、追加の報酬がランダムにくじ引きで与えられると伝えることで、参加者が感じる不確実性を煽っています。この方法の効果は先行実験で確認済みとのこと。
その後に、両方のグループにクリエイティブな言葉と現実的な言葉の評価を行ってもらって、その回答の反応速度などから現実的な言葉を好むのか、クリエイティブな言葉を好むのかの傾向を算出しています。
その結果として分かったことは
- クリエイティビティが大切だという外面的な好みは、不確実性に依らずに一定だった
- 実際にクリエイティビティをどう受け取るかの内面的な好みでは、不確実性が高いグループの方がクリエイティビティを嫌う傾向があった
ということ。やはりクリエイティブなアイデアの持つ不確実性は、実際にアイデアを評価するときになるとマイナスに働いてしまうということですね。
この実験では不確実性はランダムな報酬で付与しているので、アイデアそのものの不確実性だけでなく、他の要因の不確実性もクリエイティブなアイデアの評価に影響してしまうことも分かります。アイデアを評価する側としても、アイデアを出す側としても、この点は注意した方が良さそうですね。
実験2
2つ目の実験では同じように2つのグループを作ります。
- 「どんな問題にも解決方法が複数あるものだ」と考えてもらって不確実性を低下させたグループ
- 「どんな問題も最適な解決方法は一つだけだ」と考えてもらって不確実性を高めたグループ
そして、この2つのグループでクリエイティブなアイデアと現実的なアイデアの好みの傾向と、実際にクリエイティブなアイデアをどう評価するのかを測定しています。
その結果は
- 実験1と同様に、クリエイティビティの外面的な好みは変わらなかったが、内面的なクリエイティビティの評価は不確実性が高いほどバイアスがかかる傾向があった
- 不確実性の高い人は、みんながクリエイティブだと評価しているアイデアでも、そのアイデアのクリエイティブさを低く評価する傾向があった
ということ。
つまり、不確実な状況ではクリエイティブなアイデアを嫌うだけでなく、アイデアのクリエイティビティそのものを正しく評価もできなくなってしまうということですね。
ただし、この研究では新しい知識や経験へのオープンさを示す開放性という性格の要素も測定していて、
- 開放性が高い人ほどクリエイティブなアイデアを嫌うバイアスの影響は少ない
という相関関係も得られています。なので、特に注意が必要なのは、従来の考えに固執する人で、かつ不確実性を感じている人ということですね。
まとめ
本稿では「クリエイティブなアイデアほど嫌われてしまうのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 人は外面的にはクリエイティビティは大切だと言って、これは常に変わらない
- しかし、不確実な状況では内面的にはクリエイティブなアイデアをマイナスに評価してしまうバイアスがある
- このバイアスは新しい考えや経験を好まない性格の人ほど強い
ということですね。
クリエイティブなアイデアを出しでは、不確実性を減らすことが大切ということですね。なので、失敗を恐れずに挑戦する雰囲気や、周りからのサポートなど、クリエイティブになることに安心感が得られると良いと思います。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1: The bias against creativity: Why people desire but reject creative ideas.