音声よりも文章で勉強した方が長期的には理解力が高まるという研究
最近では動画での学習サービスも増えていて、神授業がどこにいてもスマホで見れる時代になっています。私もスタディサプリを少し使ってみたことがありますが、私が高校時代に受けた授業よりもずっと分かりやすて面白くて驚きでした。
このように動画形式の授業では、トップレベルの講師の質の良い授業が受けられるというメリットがある一方で、ただ動画を見るという受け身の姿勢になってしまいがちというデメリットもあります。
そこで本稿では、音声での学習と文章での学習の効果を比較してくれたドイツの研究(*1)を参考に、動画形式の授業が生徒の理解度に与えるデメリットについてお話ししていきたいと思います。
もちろん動画形式の授業に反対というわけではなく、動画形式の授業もおすすめだけど、そのデメリットを理解して補ってあげたらもっと良いよねという話になります。
「望ましき困難」が学習効果を高める
どんな学習方法が生徒の理解度を高めるのかの研究は色々とされていますが、その中で発見されていることの一つに「望ましき困難」というものがあります。
この「望ましき困難」とは、あまり苦労なくスラスラと学習した生徒よりも、自分で考えて苦労して学習した生徒の方が理解度が向上するという現象のことを言います。
例えば、解き方のヒントが与えられている状態で問題を解いて学習した生徒と、全くヒントなしで学習した生徒の理解度をテストして比較してみると、面白い結果が得られていて、
- 学習の直後にはヒントが与えられた生徒の方がテストの成績が良かった
- しかし、時間が経過してからテストした場合にはヒントなしの生徒の方が成績が良くなった
となることが分かっているんですね。
つまり、スラスラと学習した内容は浅い理解になって記憶から消えやすいのに対して、自分で考えて苦労して学習した内容は深い理解になって記憶に定着しやすいということですね。なので困難な学習では短期的には成績は落ち込んでも、長期的にはプラスに転じるわけですね。
音声で学ぶか文章で学ぶか
それで動画形式の授業のように音声で学ぶ場合と、文章で学ぶ場合を比べた場合には、文章で学ぶ方が自分の力で文章を読み解かなければいけないので、授業の困難さは上がります。つまり「望ましき困難」に従うと、頑張って文章の授業を受けた方が、長期的には理解度は向上するということが期待されるわけですね。
それで、この現象が本当に起こるのかを実験してくれたのがドイツの研究(*1)になります。この研究では雷の発生メカニズムを、
- イラスト+音声で教える場合
- イラスト+文章で教える場合
の2つのケースで理解度に違いが出るのかを比較しています。短期的な理解度と長期的な理解度を比較するために、理解度テストは学習の直後と1週間後2回実施しています。
結果
それで、生徒の理解度がどうなったのかというと
- 学習の直後の理解度テストでは、ほとんど差はないか、音声で学んだ生徒の方がちょっと成績が良いくらいだった
- しかし、1週間後の理解度テストでは、文章で学んだ生徒の方が成績が良かった
ということで、まさに文章形式の授業で望ましき困難の効果が得られていて、長期的な深い理解を得るには音声よりも文章のほうが良いという結果となっています。
さらにこの研究ではテストの内容をもう少し詳しくみていて、
- 学習した内容そのものはどちらの生徒も1週間後でも答えることができた。だけど、学習した内容を使うような少し応用した問題では、文章で学習した生徒の方が有意に成績が高かった。
ということも分かっています。つまり文章で学習した生徒の方が、その内容を応用できるような深い理解ができているということですね。
以上、この研究から分かる動画形式の授業のデメリットとしては
- わかりやすい授業を聞くだけの受け身の学習になってしまうと、その直後には理解できていても、長期的な深い理解が得られない可能性がある
ということですね。なのでこれを補って学習効果を向上させるには、動画の授業にプラスして、自分で考えて練習問題を解くなどの困難の要素をプラスしてあげないとダメということですね。
まとめ
本稿では「音声で学ぶか文章で学ぶかの学習効果の違い」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 学習において「望ましい困難」があると、理解に時間がかかるので短期的には成績は落ち込むけど、深い理解が得られて長期的には成績は向上する
- 音声で学ぶ場合と、文章で学ぶ場合を比較すると、文章で学ぶ方が困難差は上で、長期的な理解力も文章のほうが良い
- なので、動画形式の授業だけでなく、自分で考えて問題を解くなどの、困難の要素もプラスすると学習効果はより高まる
ということですね。
学習には望ましい困難が必要ということで、応用問題に挑戦したり、なぜそうなるのかを考えてみたりと、「とにかく自分で頭を悩ませて考えること!」を大切にすると、将来それを応用していけるような深い理解が得られるでしょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]