睡眠不足でトレーニングからの回復が遅れてしまうという研究
トレーニングからの回復を早めるテクニックはいくつかあって、冷たいシャワーを浴びる、マッサージする、加圧ウェアを着るなどの方法が研究により少し効果があることがわかっています。
しかし、ケープタウン大学の研究(*1)では、回復を早めるテクニックはあれど、やっぱり大事なのは「睡眠」なのではないかということに注目しています。確かに、睡眠は疲れを取るためには基本中の基本で、トレーニングをしていない時ですら、睡眠不足になると体に疲れが溜まってしまうわけですか、トレーニングでダメージを受けているときに睡眠不足になったらもっとひどいことになってしまいそうですよね。
そこで、この研究では、睡眠時間がどれだけトレーニングの回復に影響するのかを実際に実験により確かめてくれていますので、本稿ではその中身を見ていきましょう。
睡眠不足とトレーニングの回復
この研究では、普段からトレーニングをしているサイクリング選手16人を対象にしていて、
- HIIT(高強度インターバルトレーニング)を実施してもらう
- その日の夜に、8時間または4時間寝てもらう
- 次の日(トレーニングから24時間後)に、体がどれだけ回復しているのかを測定する
という方法で、8時間たっぷりと寝た場合と、4時間しか眠れなかった場合の回復具合の違いを確かめています。
結果
それで、睡眠時間の違いが、24時間後の回復度にどのように影響したのかというと
- 4時間睡眠の人はピークパワーの回復が遅かった(効果量d=−1.98)
- 4時間睡眠の人は眠気を強く感じていた(効果量d=1.41)
- 4時間睡眠の人はトレーニングへのモチベーションが低下してしまった(効果量d=−0.89)
という結果が得られています。
特に大きく差が出たのはピークパワーで、効果量d=−1.98と大きく低下したままになってしまっています。なので、筋トレをやる人などは十分な睡眠をとって筋肉の回復を早めることが特に重要になりそうですね。
また、トレーニングのモチベーションが下がってしまうのも、運動を始めたてで習慣化できていない人にとっては、運度をやめてしまう原因にもなり得るので注意したいところですね。
ちなみに睡眠不足でもあまり差が出なかった項目もあって
- 筋肉の疲労感はそこまで差は出なかった
- 筋肉痛にもそこまで差は出なかった
ということで、睡眠不足であっても筋肉痛などの体の疲れの感覚としては、十分に睡眠をとった場合と比べてもあまり差は出ないのかもしれませんね。しかし、実際に発揮できるパワーは落ちてしまっているので、感覚だけで回復したとは思わない方が良さそうですね。
トレーニングと睡眠
トレーニングからの回復を早めるには、十分に睡眠を取ることが大切ということがわかりましたが、トレーニングが原因となって睡眠の質や量が低下してしまうこともあるので注意が必要です。
①高強度のトレーニングに注意
適度な強度の運動は睡眠の質を上げてくれることが分かっていますが、負荷の高い運動は逆に睡眠を妨げてしまうことがあります。オーバートレーニングの人に出る症状としても、寝付きが悪くなったり、夜に何回も起きてしまうなどの睡眠障害が現れることがあるんですね。
私も夜に強度の高い筋トレをした日には、なかなか寝付けなかったり、すごく浅い眠りになってしまったりすることがあります。なので、最近よく眠れないと感じたらトレーニングの強度が高過ぎることが原因かもしれませんので注意してください。
②朝のトレーニングに注意
朝にトレーニングをする人は、トレーニングするために早起きになるので、その結果として睡眠時間が減ってトレーニングの効率が悪くなってしまうことがあるようです。
なので、朝にトレーニングをしたい人は、夜は早めに寝るなどして、睡眠時間を十分に確保できるように計画をしましょう。
まとめ
本稿では「睡眠不足とトレーニングの回復」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 睡眠不足でピークパワーの回復が遅くなる!
- 睡眠不足でトレーニングのモチベーションも下がってしまう!
- 強度の高いトレーニングや朝のトレーニングが睡眠の質や量を低下させることもあるので、トレーニングと睡眠のバランスをうまくとろう!
ということですね。
睡眠不足になって体の回復が追いつかないと、
ダメージの残ったまま強度の高いトレーニング
→トレーニングによって睡眠の質や量が低下
→次のトレーニングも回復が間に合わない
という感じで、負のスパイラルに入ってしまう可能性もあるので、睡眠はしっかりととって体を休めるようにしましょう。
こちらの記事では回復力だけでなく、「筋トレのパフォーマンス自体も睡眠不足で低下してしまう」ということをまとめていますので、参考にしてみてください。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : One night of partial sleep deprivation impairs recovery from a single exercise training session