勉強内容を記憶に定着させるには、繰り返してテストが効果的という研究
本稿のテーマは「記憶に残すための効果的な学習方法」についてです。
一度覚えた単語の意味がなかなか出てこなかったり、昔は解けたはずの問題がすっかり解けなくなってしまったりと、勉強をしてもなかなか記憶に定着しないことがあります。
しかし、心理学や脳科学の研究では、より記憶に残る勉強方法は何かが研究されていて、その中でも「検索学習」という方法が特に効果が高いことが分かっています。
検索学習とは「一度覚えたことを自分で思い出すこと」で記憶を強化する方法です。例えば、英単語を覚えたい場合には、単語帳で繰り返し読むのではなくて、テスト形式にして単語の意味を思い出すような勉強方法をします。要するに、情報を繰り返してインプットするよりも、自分の頭の中の情報をアウトプットする方が記憶の定着を強化してくれるということなんですね。
より効果的な検索学習とは?
それで検索学習にも色々とやり方はあるのですが、パデュー大学らの研究(*1)では
- 一度覚えたことも繰り返し思い出した方が良いのか?
について実験で調べてくれていました。
この研究では、40個のスワヒリ語の単語の意味を覚えてもらう実験を行なっています。単語の学習方法としては
- 「単語の勉強→小テスト」のサイクルを4回繰り返す
というように、インプットとテストによりアウトプットを繰り返す方法をとっています。そして、勉強とテストの中身に関して参加者は4つのグループに分けられて
- 勉強もテストも毎回全ての単語を行うグループ
- 一度テストで正解した単語は、勉強のセッションから除外するグループ
ただしテストは毎回全ての単語を行う - 一度テストで正解した単語は、テストのセッションから除外するグループ
ただし勉強では毎回全ての単語を行う - 一度テストで正解した単語は、勉強のセッションからもテストのセッションからも除外するグループ
ということで、表にまとめると
勉強 | テスト | |
グループ1 | 全ての単語 | 全ての単語 |
グループ2 | 不正解の単語のみ | 全ての単語 |
グループ3 | 全ての単語 | 不正解の単語のみ |
グループ4 | 不正解の単語のみ | 不正解の単語のみ |
という感じになっています。
結果:
それで1週間後にどれだけ単語を覚えているのかの最終テストを実施すると、結果は次のようになりました。
縦軸がテストの正解率を表していて、横に4つのグループが並んでいます。
一番左が、勉強もテストも全ての単語のグループ
二番目が、勉強は不正解の単語のみのグループ
三番目が、テストは不正解の単語のみのグループ
四番目が、勉強もテストも不正解の単語のみのグループです。
この結果から分かるのは
- テストは全ての単語を実施した方が良い
(全ての単語をテストした左2つの正解率が8割近いのに対して、一度正解した単語をテストから抜いた右2つの正解率は3割程度に落ちている) - 勉強のときには一度覚えたことを再学習する必要はない
(一番左と二番目で最終スコアに差がないので、テストだけ全てやれば大丈夫)
ということですね。
なので、教科書やノートを読み直すようなインプットの学習を繰り返すのはあまり意味がなくて、テストのようなのアウトプットの学習を繰り返すことが記憶の定着を促進してくれるということですね、また、テストでは全ての単語を復習した方が良かったことから、アウトプットの学習は一度覚えたことでも繰り返してあげた方が良いということもわかります。
アウトプット学習に力を入れよう
同じくパデュー大学の研究(*1)では、実際に生徒はどんな学習方法をしているのかを調査してくれています。
学習方法 | 行なっている生徒の割合 | 一番大切だと思っている生徒の割合 |
教科書・ノートを読み返す | 83.6% | 54.8% |
練習問題を解く | 42.9% | 12.4% |
暗記カード | 40.1% | 6.2% |
ノートを書き直す | 29.9% | 12.4% |
グループで勉強する | 26.5% | 0.5% |
暗記する | 18.6% | 5.6% |
語呂やリズムで覚えやすくする | 13.5% | 2.8% |
要約する | 12.9% | 3.9% |
実践的に思い出す (テストする) | 10.7% | 1.1% |
教科書にマーカーを引く | 6.2% | 1.6% |
現実世界での例を探す | 4.5% | 0.5% |
この表によると、大半の生徒は教科書やノートを読み直すことが最も大切だと思ってしまっているということですね。テスト形式の検索学習で勉強していたのはわずかに10.7%で、この勉強方法が一番重要だと理解していたのは1.1%しかいなかったということ。検索学習は学習方法として優秀なのですが、まだまだ生徒の理解が進んでいないようですね。
ちなみに、暗記カードや練習問題も検索学習にはなりますが、頑張って自分で思い出そうとせずに、すぐに答えやヒントを見てしまうとインプットの学習になって効果は落ちてしまうので注意が必要です。
まとめ
本稿では「検索学習で記憶に定着させる方法」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 記憶に長期的に定着させるには、テスト形式で思い出すことを繰り返す「検索学習」が効果的
- 検索学習では一度覚えたことでも定期的に思い出すようにすると効果的
- 教科書やノートを読み返すような、インプットの学習は繰り返しても記憶には残らない
ということですね。
教科書やノートを読み返したり、学習動画をみることは手軽なのでついついやりがちですが、記憶に残すには自分で頑張って記憶を思い返す必要があるということですね。
学習には望ましい困難さが必要という説もあって、実は楽に学んだことほど記憶から消えやすく、応用もききにくくなってしまうんですね。なので、自分で頭を使って努力することは良い学習にとっては欠かせないものと理解して、立ち向かっていくようにしましょう。
[参考文献]