笑顔を見るだけで無意識のレベルで忍耐力が向上するという研究結果

ランニングやサイクリングなどの有酸素運動では、疲れてくるほど「もう止めたい」という気持ちが強くなってきます。持久系のパフォーマンスは心理的な疲れの影響を大きく受けていて、肉体的な限界の前に心がブレーキをかけているわけですね。

それで、心理的な疲れの感じ方は、そのときの環境であったり、体調であったり、モチベーションであったりと様々な要因で変化します。

私の経験としても、ランニングマシンで黙々と走る場合には、その単調さから「もう止めたい」と感じやすいのに対して、景色の良いコースを走る場合には楽しんでもっと長い時間を走れるような実感があります。

スポーツにしても仕事にしても、これを良い方向に応用して、ちょっとした工夫で疲労の認識を変えることができれば、忍耐力を向上できる可能性があるわけです。

そこで、この問題についてバンガー大学の研究(*1)が面白いことを調べていて

  • 笑顔などのポジティブな視覚情報は、無意識のレベルで疲労感を軽減してくれるのでは?

ということを実験していましたので、本稿ではその内容を見ていきましょう。

笑顔を忍耐力

この研究では、13人の参加者にどれだけ自転車を漕いでいられるかの忍耐力テストを実施してもらいます。ただし、忍耐力テストの前に顔の画像を見てもらうことになっていて

  1. 笑顔の画像を見る
  2. 悲しい顔の画像を見る

と二通りの画像が用意されています。ちなみに、この実験では無意識が忍耐力に与える影響を調べるために、画像が表示されるのはわずか16msだけになっています。

結果:笑顔の効果とは?

それでこの実験では、無意識で笑顔を見た場合と、無意識で悲しい顔を見た場合で、その後の忍耐力テストで自転車を漕ぐ時間にどれだけ差が出るのかを比較しています。

その結果は

  • 無意識で笑顔を見た場合の方が、178秒(+12%)ほど自転車を漕ぐ時間が長かった
    (笑顔:平均1519秒 vs 悲しい顔:平均1342秒)

ということで、忍耐テスト前に笑顔がちらついただけで12%も忍耐力が向上しているんですね。ちなみに、この実験では自転車を漕いでいる間の主観的な疲労感も測定していて、こちらも笑顔を見た場合の方が有意に低かったということ。つまり、笑顔が疲労感を軽減してくれて、その結果としてより長く自転車が漕げたわけですね。

さらに、

  • 忍耐力テスト前に測定した気分やモチベーションなどの心理状態には差がなかった

ということ。なので、笑顔の効果は自分でも認識はできていなくて、まさに無意識レベルで効果が発揮されているんですね。

ポジティブワードと忍耐力

それで、笑顔が忍耐力を向上してくれることが分かりましたが、この研究ではポジティブワードを見ることも忍耐力を向上してくれるかも実験してくれています。

実験の方法は先ほどの実験と同じなのですが、忍耐テスト前に見るのが顔ではなくて

  1. 活動的なワード
    「行動」「GO」「気力」「活気」
  2. 活動的でないワード
    「苦労」「STOP」「睡眠」「疲れ」

という言葉に置き換わっています。この実験でも表示されるのは16msで、無意識のレベルに刺激を与えています。

結果:活動的なワードの効果

それで実験の結果としては

  • テスト前の気分やモチベーションなどの心理状態に差はなかった
    (ワードの刺激は意識には影響しなかった)
  • 活動的なワードを見た場合の方が、399秒長く自転車を漕いだ
    (活動的:平均2577秒 vs 活動的でない:平均2178秒)
  • 活動的なワードを見た場合の方が、自転車を漕いでいるときに感じる疲労感が低かった

と、活動的なワードでも笑顔と同様の結果が得られています。

自転車を漕いでいる時の疲労感の推移のグラフを見てみると、

と、活動的なワード(●)は活動的でないワード(◯)よりも疲労感が低く推移していることが分かります。無意識の一瞬の刺激でもこれだけ差が出るのは面白いですね。

まとめ

本稿では「ポジティブな視覚情報が忍耐力を向上する」というお話をしました。

ポイントをまとめると

  • 持久系のパフォーマンスは、肉体的な耐久力だけでなく、心理的な忍耐力の影響も強く受ける
  • 笑顔やポジティブワードのような視覚情報は、疲労感を軽減して忍耐力を向上してくれる
  • このような視覚情報は、一瞬の無意識のレベルの刺激でも効果がある

ということですね。

今回の実験では無意識のレベルの一瞬の刺激でしたが、一瞬ではなくじっくりと見ても効果はあると思います。なので、ランニングをするときや、仕事でもう一踏ん張りしたいときなど、忍耐力が必要なときはポジティブになれるものを目に入れると良いでしょう。よく目に入る場所に、やる気が湧く言葉や画像を飾っておくのも良いかもしれないですね。

以上、本稿はここまで。


[参考文献]

*1 : Non-conscious visual cues related to affect and action alter perception of effort and endurance performance

Naoto

シェアする