具体的な目標と抽象的な目標を合わせることの効果とは?
効果的な目標設定の方法としてよく大切だと言われるのは、
- 具体性:具体的に行う行動を決めること
- 測定可能性:達成基準が数値として測定できること
- 期限:締め切りが決められていること
といったことです。例えば、目標が「健康的な体になる」だと抽象的で何をすればいいのか迷ってしまいますが、「毎週2回ジョギングをして3ヶ月で5kg痩せる」だと目標が具体的なので行動が起こしやすいわけですね。
それでこのような具体的な目標設定は研究により効果があることが分かっているのですが、それらの研究は「特定のタスクの短期間の成果」を測定しているものが多いんですね。なので具体的な目標は短期的には効果があっても、そこで満足してしまって長く続かない可能性もあるわけです。
そこでこの問題に注目したのがベルン大学の研究(*1)で、
- 長期的な目標を達成するのには、具体的な目標と一緒に、抽象的な目標も持っていた方がいいのでは?
ということを実験により確認してくれています。抽象的な目標は「健康的な体になる」といった終わりのない目標であることが多いので、より長期の目標達成に効果的だと考えられるわけですね。
抽象的な目標と具体的な目標
ベルン大学の研究では256人の参加者が集められ、各参加者は目標の種類に応じて次の4つのグループに分けられています。
- 抽象的な目標グループ
なぜその目標を達成したいのかを考えてもらって、「私は〜な人になりたい」という形式の目標を3つ立ててもらうグループ - 具体的な目標グループ
どうやってその目標を達成するのかを考えてもらって、「私は〜する」をという形式の目標を3つ立ててもらうグループ - 抽象的+具体的な目標グループ
上2つのグループと同じ手順で、抽象的な目標と具体的な目標の両方を立ててもらうグループ - コントロールグループ
抽象的な目標も具体的な目標も立てないグループ
そして目標設定から3ヶ月の期間を置いて、その期間に目標達成のためにどれだけ努力をしたのか?などの指標を測定しています。
結果
それで目標の種類に応じてどのような結果が得られたのかを順番に見ていきましょう。
①なぜ?の抽象的な目標グループの結果
- 立てた目標の抽象さが一番高かった
- 目標達成のための努力量が一番少なかった
- 目標を一番長期的に考えていた
- 3ヶ月後の進捗をあまり成功とは感じていなかった
②どうやって?の具体的な目標グループの結果
- 立てた目標の抽象さが低かった
- 目標達成のための努力量が抽象的な目標グループよりも高かった
- 目標を長期的には考えず短期的に考えていた
- 3ヶ月後の進捗を成功と考える傾向があった
③なぜ?+どうやって?の抽象的かつ具体的な目標グループの結果
- 目標達成のための努力量が一番高くなった
(ただし具体的な目標グループとは統計的には有意でない少しの差) - 他の指標が特に大きくは違わなかった
ということです。
具体的な目標は達成のための行動力を増やすのに有効で、抽象的な目標は短期的な成果に満足せずに長期的に目標を追いかけるのに有効と、両者にそれぞれのメリットがあるわけですね。
抽象的な目標と具体的な目標を合わせた結果として、3ヶ月間の努力量が一番多くなったということですが、具体的な目標グループとあまり大きな差が出ていないので、いまいちパッとしない感じはあります。基本的には具体的な目標で日々の行動力を上げつつ、短期的な目標の節目などで抽象的な目標に立ち返って長期的な展望を考えてあげると良いのかもしれませんね。
まとめ
本稿では「具体的な目標と抽象的な目標の効果」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 日々の行動力を上げるには具体的な目標が欠かせない
- 短期的な成功に満足せずに上を目指すには抽象的な目標の方が有効
- 具体的な目標と抽象的な目標を合わせると、長期的な努力量が向上する
ということですね。
抽象的な目標だけでは行動につながらないし、具体的な目標だけでは長期的な成果は上げにくいということ。目標は大きな目標から小さな目標へを分割していけるので、最初に理想の自分のような抽象的で長期的な目標を立てて、それを具体的で短期な目標に細かく分割してあげるのも良さそうですね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]