感情によって金の使い方が変わる!エモーショナル・アカウンティングの研究
メンタル・アカウンティングといって、人は無意識のうちに心の中でお金をその意味で分類しています。
例えば、
- ジャケットのポケットの中から発見されたラッキーな1万円
- 仕事で稼いだ1万円
- 子供の将来のための貯蓄口座に入っている1万円
はどれも同じ1万円というお金です。しかし、心の中では明らかにそれぞれの1万円の意味合いが違っていて、使い道も全く変わってきます。思いがけず得られたラッキーな収入はパーッと使いがちなのに対して、子供のための貯金はなかなか手が出しづらいですよね。
これに似た新しい考えがエモーショナル・アカウンティングです。これはお金の意味合いだけでなく、お金に対する感情も使い道に作用するのでは?という考えになります。
例えば、仕事でお金を稼いでも、人のためになる仕事をしたポジティブな感情と結びついたお金をもらうのと、人を騙す仕事をして罪悪感のようなネガティブな感情と結びついたお金をもらうのでは、お金の使い方が変わってくる可能性があるわけですね。
エモーショナル・アカウンティング
エモーショナル・アカウンティングについてスタンフォード大学らの研究(*1)が調べてくれています。この研究では
- ネガティブな感情と紐づいたお金は、快楽的なことに使われることは少なく、ネガティブな感情を払拭するために建設的で善いことに使われるのでは?
ということを実験してくれています。
実験1 :ネガティブなお金の使い道は?
まず最初にこの研究では648人の学生を対象に、ポジティブなシナリオとネガティブなシナリオの2つのパターンでお金が得られた場合に、快楽的なことにどれだけお金を使うのかを測定しています。
それぞれのシナリオがどのようなものかというと
- ポジティブなシナリオ
「ジャケットのポケットから1万円が発見された」
「裕福な親戚からお金をもらった」
「親戚のおじさんからお金をもらった」
- ネガティブなシナリオ
「道に落ちている誰かの1万円を手にした」
「貧乏な親戚からお金をもらった」
「親戚のおじさんからお金をもらったが、おじさんは病気だ」
という感じです。
それで各シナリオで、アイスクリームを買うとか、ステレオを買うみたいな快楽的なことに、どれだけお金を使うのかを測定したんですね。
結果:
結果として、ポジティブなお金とネガティブなお金にどのような違いがあったのかというと
- ポジティブなシナリオでお金をもらった人は、44%の人が快楽的なことにお金を使い、その平均額は69ドルだった
- ネガティブなシナリオでお金をもらった人は、27%の人が快楽的なことにお金を使い、その平均額は48ドルだった
ということ。つまり、ネガティブな感情と結びついたお金は快楽的なことには使われにくいということがわかったわけですね。
ちなみに、同じような実験で「親戚のおじさんからお金をもらって、そのとき他の友達が病気になったことを知った」という、お金とは直接紐づかないネガティブな感情の効果も測定されていて、
- お金とは直接紐づかないネガティブな感情のシナリオでは、ポジティブなシナリオと同じくらい快楽的なことにお金が使われた
ということが分かっています。なので快楽的なことが回避されるのはネガティブな感情が直接お金と紐づいているときのみということですね。
実験2:ネガティブな感情で善いことにお金を使うのか?
それで次の実験では選択肢として
- 快楽的なことにお金と使う
(お菓子を買ったり、コンサートのチケットを買ったりなど) - 建設的で善いことにお金を使う
(勉強の教科書を買う、ペンを買うなど)
とお金の使い道を増やして実験を行っています。
その結果として分かったことは
- ポジティブなシナリオでお金をもらった人は、39%の人が建設的で善いことにお金を使い、その平均額は113ドルだった
- ネガティブなシナリオでお金をもらった人は、59%の人が建設的で善いことにお金を使い、その平均額は143ドルだった
ということ。つまり、ネガティブな感情と紐づいたお金は、快楽的な使い方がされにくいだけでなく、より善いことに使われやすいということですね。
さらに、お金の使い道による感情の変化でも面白いことが分かっていて、
- 快楽的なお金の使い方を回避するだけでは、ネガティブな感情は増えることも減ることもなかった
- 建設的で善いことにお金を使うことを選ぶと、ネガティブな感情を感じている人は54% から27%に減った
ということ。つまり、より善い使い道を選択することで、お金に紐づいたネガティブな感情を軽減することができるわけですね。ネガティブ感情のお金が良い使い道に使われやすいのはまさにこれが理由なのかもしれませんね。
まとめ
本稿では「エモーショナル・アカウンティング」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- ポジティブな感情を結びついてお金は快楽的なことに使われやすい
- ネガティブな感情に結びついたお金は建設的な善いことに使われやすい
- お金を善いことに使えば、お金に結びついたネガティブな感情を軽減することができる
ということですね。
ハンバーガーを食べる罪悪感がサラダを一緒に注文させるように、お金に関するネガティブな感情がその使い道を善い方向へ向けさせるみたいで面白いですね。無駄遣いとなくすという意味では、ポジティブな感情と結びついた思いがけない収入が一番快楽的に使いがちなので、ポジティブな感情にも注意しましょう
[参考文献]
*1 : Emotional Accounting: How Feelings about Money Influence Consumer Choice.