通勤で幸福感はどう変わるのかをまとめてくれた論文
通勤は実は意外と重要なことで、通勤時間や通勤方法次第で幸福感が低下してしまうことが分かっています。人によっては往復で2時間以上を通勤にかける人もいて、仕事の時間を除いた1日の自由時間が2時間も減ってしまうわけですから、そりゃ手痛いわけです。
それで、通勤と幸せの関係についてこれまでの研究をまとめてくれたのが、西イングランド大学らの論文(*1)になります。この論文では
- 通勤時間にどれだけストレスやネガティブな感情が発生してしまうのか?
- 通勤/帰宅時間の後で、仕事や趣味の時間にどれだけ通勤の悪い効果が波及してしまうのか?
- 長期間にわたって悪い通勤を続けることは幸福感にどう影響するのか?
- 通勤の方法によってこれらの効果に違いはあるのか?
といったことをまとめてくれていますので、本稿ではその中身を見ていきましょう。
通勤中に感じるネガティブな効果とは?
まず最初に、まさに通勤をしている最中に感じる通勤のネガティブな効果としては、過去の研究で次のようなことが分かっています。
- 基本的には通勤時間が長くなるほどストレスを強く感じてしまう
- 特に電車やバスの通勤の人は、車内が混むほどストレスが強くなる
- 他の様々な活動と比べてみると、通勤中は一番ポジティブな感情のスコアが低く、ネガティブな感情のスコアも最も低い部類の1つになっている
- 信号に待たされたり、電車が遅延したりといった、通勤時間の変動や予測不可能性がストレスを上げてしまう
要するに、通勤は退屈でストレスフルなものだということですね。日本の場合は特に満員電車がひどいので、通勤時間や通勤方法の選択には注意したほうがよさそうですね。
通勤方法による違い
そして、通勤の方法によってもネガティブな効果の程に違いがあることもわかっていて、
- ストレスの高い順に通勤方法を並べると、車 > バス・電車 > 歩き・自転車という感じ
- 車通勤の人は、通勤を不快でイライラすることだと感じやすい
- バス・電車通勤の人は、通勤は不快だがイライラはしない
- 自転車通勤の人は、通勤は心地良いがイライラもしやすい
- 歩き通勤の人は、通勤は心地よくでイライラもしない
ということ。心理的に良い通勤方法は、歩き>自転車>バス・電車>車という感じですね。特に歩きと自転車は体を動かすため、健康に良い効果も確認されているのでオススメです。
通勤時間以外への波及効果
それで、通勤の悪い効果が他の時間にも波及してしまうのかに関しては
- 通勤時間が長いほど、家族や友人を過ごす時間や趣味の時間が少ない
- 通勤時間が長いほど、睡眠時間が短いという研究もある
- 通勤時間が長いほど、人との付き合いも減ってしまう
- ストレスやネガティブな感情も波及して、仕事中でもネガティブが高くなってしまう
ということが分かっています。
要するに、通勤時間が他の活動時間を減らしてしまうのと、ネガティブな気分が通勤後に尾を引いてしまうという2つの波及効果があるわけですね。
しかし、一つ面白い研究結果もあって
- 自転車通勤の人は、逆に仕事での活力が高まっていた
ということが分かっています。波及効果という意味でも、やっぱり体を動かす通勤方法が良いみたいですね。
通勤時間と幸福感
最後にストレスフルな通勤を続けたときの長期的な効果として、幸福感への影響を見てみると、
- 通勤時間が長いほど幸福感も低下し、特に60〜90分の人は幸福感が低下してしまっていた
(ただし低下のほどはそれほど大きくはない) - 歩き通勤ではメンタルが改善したという研究も混じっている
- 片道45分の通勤時間がかかると転職する確率が25%向上していた
といった感じ。やっぱり悪い通勤方法を続けると幸福感は低下してしまうみたいですね。
通勤を改善するには?
それではこの研究を参考に通勤を改善するための対策をいくつか並べてみたいと思います。
- 満員電車を避けて、できるだけ通勤時間は短くする。
- 通勤方法は歩きや自転車を優先して、特に車は避ける。
- 一緒に通勤する人がいるとストレスが低下するので、同僚を誘ってみる
- 通勤途中に自然があるとストレスが低下するので、公園を通ったり、緑豊かな道を選んでみる
- フレックスタイム制で出社時間が自由だとストレスは低下するので、あるなら活用する
という感じで、以上のポイントを活用してみてください。
まとめ
本稿では「通勤と幸福の関係」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 通勤は基本的にはストレス向上や幸福感の低下といったネガティブな効果がある
- さらに通勤は他の活動の時間を減らし、仕事や生活の時間にも通勤の悪い効果が波及してしまうことも分かっている
- 特に車通勤で通勤時間が長くなるほど悪い効果も増える
- 歩きや自転車通勤は運動にもなって良い効果もある
という感じですね。
最近ではリモートワークやら、自動運転やらも話題になっているので、今後の通勤方法の変化に期待したいところですね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]