音楽を聴くと作業の集中力や脳の反応速度は向上するのか?
勉強するときや何かの作業をするときなどに音楽を聴く人は多いと思います。しかし、作業中の音楽がパフォーマンスを向上するのかについては是非があって、
- 音楽を聴くことで退屈感が薄れて集中力が高まるのではないか?
- 音楽は脳にとっては刺激なので、集中力を阻害してしまうのではないか?
と対立する意見があるんですね。もちろんこれは音楽の刺激の強さによるということも考えられて、適度な音楽は集中力を増してくれるけど、激しくてうるさい音楽になると集中力は低下してしまう可能性もあります。
そこで、本稿では
- 自分の好きな音楽を聴きながら、タスクに取り組んだら集中力は向上するのか?
を実験してくれた研究を見ていきたいと思います。
音楽と集中力
ゴールドスミス・カレッジの研究(*1)では40人を集めて、
- 音楽なしでタスクに取り組んだとき
- 自分の好きな音楽を聴きながらタスクに取り組んだとき
で集中力や脳の反射速度にどのような違いが出るのかを実験しています。
この実験で使われたタスクとしては
- ディスプレイに針が停止した時計のアイコンが表示される
- 時間が経つと急に時計の針が動き出す
- 参加者は時計の針が動き出した瞬間にボタンを押して針を止めなければいけない。
と、時計をじっと監視する集中力と、時計の動きをすぐに止める脳の反応速度が求められるタスクになっています。このタスクは合計で40回行われ、半分は音楽なし、もう半分は自分の好きな作業用音楽を聴きながら行っています。そして、時計の針を止めるたびに集中力が測定されていて、
- 疲れて頭がぼーっとしてしまったり、他のことを考えてしまわなかったか?
- 集中力を保つことができたか?
- 空腹感や体の痛み、気温や周りの人の動きなどの外部刺激に集中力を奪われなかったか?
の3点に回答するようになっています。
結果1:音楽と集中力
実験の結果としてわかったことをまとめると
- 音楽を聴くと、集中力が有意に高まる(d=0.20)
- 音楽を聴くと、他のことが頭に浮かんだり、ぼーっとしたりが減る(d=0.30)
- 音楽は外部刺激に対する集中力の維持には特に効果はなかった(d=0.03)
ということ。なので、今回のタスクのような比較的簡単なタスクで、自分の好きな音楽を聴くことは集中力の向上につながるということが分かったわけですね。
頭の中で他のことを考えてしまうのが減るということは、単純なタスクの退屈感や疲労感を音楽が軽減してくれているようですね。数学の問題を解くみたいな脳をフルに使うタスクで音楽がどのように作用するのかはわからないものの、あまり頭を使わない単純作業では積極的に音楽は聴いて良さそうですね。
結果2:音楽と脳の反応速度
続いて脳の反応速度に関する結果を見てみると、
- 脳の反応速度はタスクの回数を重ねるごとに徐々に遅くなっていった
- 脳の反応速度は音楽ありと音楽なしで特に変わらなかった
ということが分かっています。
音楽は集中力は向上しても脳の反応速度までは向上してくれないということで、音楽は反応速度が必要なタスクよりは、持続した注意力が必要なタスクに向いているようです。
結果3:音楽の種類
この研究では各参加者が自分の好きな音楽を聴いているので、音楽の種類も様々です。そこで、音楽のジャンルやテンポ、歌詞の多さなどが集中力や脳の反応速度に影響するのかを調べていて
- 音楽のジャンル・テンポ・歌詞の多さは集中力や脳の反応速度に関係がなく、どれも同じような効果が得られた
という結果になっています。
ただし、今回の実験ではいつも自分が作業で好んで使う音楽という条件なので、テンション上げる用の音楽とかは選ばれていないと思います。なので、作業の邪魔にならない範囲なら好きな音楽を使えば良いということでしょう。
まとめ
本稿では「音楽と集中力」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 音楽は単純なタスクであれば集中力を向上してくれる
- 音楽は脳の反応速度には関係がない
- 音楽の種類は作業用の範囲内なら好きなものでOK
ということ。
難しいタスクでは音楽が脳の邪魔をしてしまう可能性もあるので、簡単なタスクや脳が疲れて頭がぼーっとしてしまうときなどに音楽を有効活用すると良いでしょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : The effect of preferred background music on task-focus in sustained attention