ビートルートジュースで筋トレのボリュームは向上するのか?
ビートルートは真っ赤な色をしたカブのような野菜で、ビートルートのジュースには運動のパフォーマンスを向上してくれる効果があることが知られています。
なぜビートルートが運動のパフォーマンスを向上してくれるのかというと、ビートルートにはNO(一酸化窒素)の成分が含まれていて、この成分が血管を拡張して血流を多くすることで、酸素の効率がよく行き渡るようになるからなんですね。
しかし、ビートルートジュースの効果を調べた研究は持久力に注目したものが多く、筋トレに効果があるかどうかを調べている研究は少ないということ。そこで、コルドバ大学らの研究(*1)が
- ビートルートジュースを飲むとベンチプレスとスクワットの回数が増えるのか?
について実験をしてくれていましたので、本稿ではその中身を見ていきましょう。
ビートルートジュースと筋トレ
この研究では12名の参加者を集めて、
- ビートルートジュースを飲んだ120分後に筋トレをした場合
- ビートルートジュースを飲まずに筋トレをした場合
の2パターンで筋トレを行ってもらってビートルートジュースの効果を測定しています。ちなみに集められた12名は2年以上筋トレを続けているそこそこの上級者になります。
実施する筋トレのメニューは
- ベンチプレス
1セット目:最大重量の60%で限界回数まで
2セット目:最大重量の70%で限界回数まで
3セット目:最大重量の80%で限界回数まで
- スクワット
1セット目:最大重量の60%で限界回数まで
2セット目:最大重量の70%で限界回数まで
3セット目:最大重量の80%で限界回数まで
の合計で6セットになっています。
これらの筋トレを行いながら
- 各セットの限界回数
- 筋トレの動作速度
- 筋トレのパワー
- 主観的な疲労感
が測定され、ビートルートジュースの効果が比較分析されています。
結果1:スクワットの回数の伸び
最初にスクワットの回数の比較結果を見てみると
- ビートルートジュースを飲むことで、スクワットのトータル回数が増えた
- 特に重量が軽いほどスクワットの回数も大きく伸びた
(最大重量の60%:効果量=0.78)
(最大重量の70%:効果量=0.59)
(最大重量の80%:効果量=0.44)
ということが分かっています。
ビートルートジュースには筋持久力を高める効果があり、低重量でボリュームを多く行う筋トレでは特に効果があるようです。一方で最大筋力を高める効果はないようで、高重量の筋トレでは効果があまりなくなっていますね。
結果2:ベンチプレスの回数の伸び
次にベンチプレスの回数の比較結果を見てみると
- ビートルートジュースを飲んでもベンチプレスの回数は変わらなかった
(最大重量の60%:効果量=0.05)
(最大重量の70%:効果量=0.04)
(最大重量の80%:効果量=0.08)
という結果が得られています。
スクワットの回数は伸びたのに、ベンチプレスの回数が伸びなかった原因としては、使われる筋肉の多さが関係している可能性があるということ。スクワットの方が動員する筋肉の部位が多いため、必要な酸素量も多いです。そのため、ビートルートジュースの血管拡張効果の恩恵がスクワットの方がより強く得られたということですね。確かに、スクワットの方が呼吸がつらくなりやすいのでこの理屈はわかる気がします。
結果3:パワーや動作速度、疲労感
最後にその他の測定項目として
- ビートルートジュースを飲んでも筋トレの動作速度やパワー、主観的な疲労感は特に変化しなかった
ということ。
やはりビートルートジュースが向上してくれるのは筋持久力のみで、パワーまでは向上しないということですね。これらの結果をまとめると、筋トレでビートルートジュースが効果が得られるのは
- 呼吸がつらくなるような多くの筋肉を動員する種目
- 低重量でボリュームを多く稼ぎたいとき
と言えるのではないでしょうか。ビートルートジュースは持久系の運動にはぴったりですが、筋トレのような筋力系の運動にはいまいち使いどころが難しそうですね。
まとめ
本稿では「ビートルートジュースは筋トレの効果を向上してくれるのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- ビートルートジュースでスクワットの回数を向上するが、ベンチプレスの回数は向上しない
- ビートルートジュースは特に低重量で回数を多くこなしたいときに効果が高い
- ビートルートジュースが向上するのは筋持久力でパワーは向上しない
ということですね。
ちなみに、プレワークアウトにもNOによる血管拡張効果を狙った成分が含まれていることが多いです。なので、ビートルートジュースに拘らなくてもプレワークアウトを飲めば十分かもしれませんね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]