幸福感が高いと体の炎症も低下するのかを長期的に調べた研究

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炎症とは体を外傷やウィルスなどから防御しようとする反応です。例えば、スポーツで怪我をしたとにも炎症が起きて、筋肉が傷んだり腫れたりしますよね。

そして、怪我のような目に見える炎症よりももっと厄介な炎症が慢性炎症です。慢性炎症は現代の多くの人が抱えてしまっているもので、睡眠不足や不健康な食生活、ストレスなど身近な様々な原因が体内で目に見えない慢性炎症を起こしていまっています。慢性炎症は生活習慣病や老化につながることも分かっているので、健康的に生きるためには炎症のケアを欠かせないんですね。

そして、本稿で注目するのは慢性炎症とメンタル面の関係で、

  • 幸福感が向上すれば炎症も低下するのか?

についてユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究(*1)が調べてくれていましたので、その中身を見てみましょう。

メンタルと炎症

慢性炎症には様々な原因が関係すると言いましたが、メンタル面も炎症に影響することが分かっています。ポジティブな感情が多い人ほど体内の炎症が少なかったり、炎症が多い人ほと鬱などのメンタル面の病気が多いことが分かっているんですね。

そこで、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究では幸福感と炎症の関係について注目していて、

  • 幸福感が高い人ほど炎症は少ないのか?
  • 幸福感が低い人ほど炎症がひどいとしたら、それはメンタルの病気が関係しているのか?

について調べてくれています。

この研究の特徴としては

  • 50歳以上を対象にしている
  • 8780人の大規模なデータを使っている
  • 2004年/2008年/2012年と長期的な幸福感と炎症の変化を追跡している
  • 幸福感を4種類に分けて測定している

という点です。これまでも幸福感と炎症の研究はありましたが、サンプル数が少なかったりしたので、この研究では大規模のデータでしっかりと調べてくれています。そして幸福にも一時的な快楽から、持続的な充実感まで色々な種類があるので、幸福感を次の4種類に分けているのもこの研究の面白いところです。

  1. ポジティブ感情
    楽しい、嬉しいと言ったポジティブな感情
  2. 人生満足感
    自分の人生を振り返ってみて今満足しているかどうか
  3. 自己実現
    目的を持ち、毎日がエネルギーに満ちていて、人生を通して成長しているかどうか
  4. 主体的コントロール感
    自分の人生を自分自身でコントロールできると感じているか

分類としては上の2つは一時的な幸福感なのに対して、下の2つが人生を通した持続的な幸福感になっています。

結果1:4つの幸福感と炎症

最初に、時間の変化とともに幸福感と炎症がどのように変化していたのかを見てみると

  • ポジティブ感情が高まった人は炎症が減った(白血球が減った)
  • 人生満足感が高まった人は炎症が減った(白血球が減った)
  • 自己実現が高まった人は炎症が減った(白血球/CRP/フィブリノゲンが減った)
  • 主体的コントロール感が高まった人は炎症が減った(白血球/CRP/フィブリノゲンが減った)

ということが分かっています。

まず大切なことは全ての幸福感は炎症の低下に繋がっているということ。そして、下2つの幸福感では白血球/CRP/フィブリノゲンの3つの炎症性物質の全てに効果ありとなっているので、特に持続的な幸福感が炎症を低下させる効果が強いということが分かります。

結果2:メンタルの病気と炎症

続いて、幸福感が低い人はメンタルの病気を抱えがちで、それが炎症を増やしてしまっているのでは?という観点について、

  • メンタルの病気の影響を差し引いても、幸福感と炎症の関係の係数は3%〜22%しか低下しなかった

という結果が得られています。

なので、幸福感の低下が炎症を増やすのは、メンタルの病気を介しした効果ではなく、もっと直接的な効果が強いということです。メンタルの病気が無くても、人生が充実していないだけで炎症は増えてしまう可能性があるわけですね。

結果3:炎症がひどくなりやすいの特徴

次に幸福感の低下が炎症を引き起こしてしまう効果が強めにでた人の特徴は

  • 女性よりも男性の方が幸福感の低下で炎症が増えやすい
  • 高齢者(65歳以上)ほど幸福感の低下で炎症が増えやすい
  • 太りすぎの人ほど幸福感の低下で炎症が増えやすい

ということです。

太り過ぎの人は炎症が悪化しやすいということで、過食やタバコなどの悪い生活習慣がメンタルの病気よりも炎症に悪いということが示唆されています。なので、炎症を抑えるには

  • 良い生活習慣を手に入れる(運動・睡眠・食事など)
  • 持続的な幸福感を高める(人間関係・自己実現など)

の2つを目指すと良さそうですね。

まとめ

本稿では「幸福感と炎症」についてお話ししました。

ポイントをまとめると

  • 幸福感(特に自己実現や主体的コントロール感)が高まると炎症も低下する傾向がある
  • メンタルの病気は幸福感と炎症の関係にはあまり関係はなかった
  • 過食やタバコなどの悪い生活習慣の方が炎症に強く関係していた

ということですね。

炎症には様々な原因があり、幸福感の低下もその原因の一つということで、持続的な幸福感を感じられていない人は、人生の意義とか目標を探してみるのもいいのではないでしょうか。

以上、本稿はここまで。


[参考文献]

*1 : The longitudinal relationship between changes in wellbeing and inflammatory markers: Are associations independent of depression?

Naoto

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