給料が上がれば社員のエンゲージメントも上がるのか問題
エンゲージメントとは、会社と従業員の結びつきの強さのようなもので、簡単に言えば従業員が自分の働いている会社が好きで、一生懸命働きたいと思っているかどうかです。
エンゲージメントが高ければ、従業員としても働きがいを持てますし、会社側としても従業員の生産性が高まるので、両者ともに嬉しいわけです。しかし、会社の風土を変えるのが難しいように、実際にエンゲージメントを高めるのはなかなか難しい問題でもあります。
そこで、ポーランドのヤギェウォ大学の研究(*1)が
- 高い給料をあげればエンゲージメントは高まるのか?
について調べてくれていました。本稿ではこの研究を参考に、エンゲージメントを上げるのに給料以上に大切なものは何かを見ていきましょう。
給料とエンゲージメント
この研究ではオンライン調査で様々な企業の様々な職種の1201人を対象に
- 報酬(給料)
- エンゲージメント
- 仕事量の多さ
- 同僚からのサポート
- 上司からのサポート
を測定しています。さらに、この研究でいう報酬(給料)はもう少し細かく分類されていて
- 毎月の通常給料
- お金以外の追加報酬
- ボーナス
の3種類となっています。
これらの測定データから分析したのは、従業員のエンゲージメントが高さには、3種の報酬とサポートなどの仕事の環境面のどれが強く関係しているのかということです。
結果1:給料とエンゲージメント
まず報酬(給料)がエンゲージメントとどのように関係していたのかというと
- 毎月の給料の金額はエンゲージメントに有意な関係はなかった
- お金以外の追加報酬もエンゲージメントに有意な関係はなかった
- ボーナスもエンゲージメントに有意な関係はなかった
ということで、どのタイプの給料もエンゲージメントは上げてくれないという結果になっています。
この研究で測定したボーナスには、仕事のパフォーマンスに応じたボーナスや、上司の評価に応じたボーナスなども含まれています。しかし、今回の結果ではそれらもエンゲージメントを向上しなかったということなので、成果を出せば給料をいっぱい上げるという考えではエンゲージメントはあげられないようですね。
結果2:仕事の環境面とエンゲージメント
給料はエンゲージメントを上げてくれないということで、それでは仕事の環境面がどうだったのかというと、
- 年齢が高いほどエンゲージメントは高かった
- ポジションが高い人ほどエンゲージメントが高かった
- 同僚のサポートが多い人ほどエンゲージメントが高かった
- 上司のサポートが多い人ほどエンゲージメントが高かった
- 会社の施設・装置や供給品が貧弱で仕事に影響するとエンゲージメントは低くなった
- 仕事量は多い方がエンゲージメントが高かった
ということ。給料と違って仕事の環境面はエンゲージメントに大きく影響するようです。
過去の研究では給料とエンゲージメントに相関があるという結果もあったようですが、それらは給料の直接的な効果ではなく、給料が高い人ほどポジションが高くて仕事のリソースも多い結果ではないかと研究者は言っています。
なので、エンゲージメントを上げたければ、給料を上げるよりも、仕事の環境面を整備して安心して働ける環境を作ってあげる方がずっと効果が高いということですね。
まとめ
本稿では「給料をあげればエンゲージメントも上がるのか?」についてお話ししました。
今回の研究のポイントをまとめると
- 給料を上げてもエンゲージメントは向上しない
- 一方で仕事の環境面はエンゲージメントに大きく関係している
- なので、エンゲージメントを向上させたければ、同僚・上司のサポートや会社の設備面、挑戦しがいのある適切な仕事量を整えることが大切
ということ。
確かにいくら給料が良くても、毎日働く環境が悪ければ会社や仕事への愛着は湧きにくいですよね。なのでエンゲージメントを高めたければ、日々の仕事の人間関係などの環境面を高めていきましょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]