ストレスで食べすぎてしまうは、実はストレスが原因ではない説
ダイエット中なのにどうしても我慢できずに食べてしまうことってありますよね。
人は状況によって自制心が低下してしまうもので
- 仕事でクタクタに疲れている時
- ネガティブな気持ちになっている時
- お酒を飲んで抑制が効かなくなっている時
- 現実逃避したい時
など、どうしても誘惑に負けやすくなってしまいます。
そして、本稿で注目するのは「ストレスを感じている時」です。ストレスも自制心を低下させる要因であることは、多くの研究で確認されている周知の事実。ストレスが溜まってしまうと、ストレス発散を理由に短期的な行動をやってしまうものですよね。
しかし、スワースモア大学の研究(*1)では、
- ストレスで自制心が低下するのは、ストレスが直接の原因でなく、ただ注意力が奪われていることが原因なのでは?
ということ。本稿ではこの研究を参考に、自制心の弱点を理解していきましょう。
注意力と自制心
自制心を保つには、注意力をキープすることが必要です。ダイエット中なら、ケーキは食べてはいけないという注意を維持しなければ、その注意が途切れた瞬間にダイエットが失敗してしまいます。
そして、ストレスを感じる状態は、えてして頭の中に負荷がかかっている状態。頭に負荷がかかると、頭の処理能力がそちらに奪われて、誘惑に警戒する注意力が薄れてしまいます。
この説が正しいとすると、
- ストレスでなく注意力が奪われることが原因だとすると、頭に負荷をかける処理はなんでも自制心を低下してしまう
ということになります。スワースモア大学の研究では、この説が本当なのかを実験により確かめてくれているんですね。
実験:頭の負荷と自制心
この研究では、
- ダイエット中の学生30名
- ダイエット中でない学生30名
の合計60名を対象に実験を行っています。
どんな実験かというと、学生の目の前にお菓子(クッキー、チョコレートなど)を並べて、どれだけお菓子を食べてしまうのかを測定するもの。ただし、頭の負荷を調整するために、タスクをこなしながらお菓子を食べてもらっていて、
- 低負荷のグループ
音がなったらすぐにボタンを押すタスク - 高負荷のグループ
音がなったらすぐにボタンを押すタスク + スライドに映っている絵を記憶するタスクを同時に行う
の2グループに分けています。想定としては、高負荷のグループは自制心の低下が大きく、お菓子を食べる量が多くなってしまうということです。
結果:ダイエットと負荷によって効果が変わる
結果が次のグラフになっています。
このグラフからわかるのは、
- ダイエット中の人は、低負荷のタスクの時よりも、高負荷のタスクの最中にお菓子を多く食べてしまった
- ダイエット中でない人は真逆で、高負荷のタスクの時よりも、低負荷のタスクの最中にお菓子を多く食べてしまった
ということ。
ダイエット中の人は、食べたい欲求を注意力で抑えているので、高負荷のタスクで注意力が弱まると、お菓子を食べすぎてしまう。一方でダイエット中でない人は、そもそも欲求を抑える注意をしていないので、低負荷で退屈なときにお菓子を多く食べてしまう、という感じの結果になっています。
ストレスは関係しないのか?
先程の実験結果では、高負荷のタスクにストレスを感じて、それが食べ過ぎにつながったのでは?とも考えられます。そこで、スワースモア大学の研究では、もう一つの実験で自制心の低下の原因について深掘りして調べています。
その結果をざっと見てみると
- 確かに高負荷のタスクの方がストレスはほんの少しだけ高かったが、これでは食べた量の差は説明できない。
→ ストレスが主要な原因ではない - タスクの負荷によって、食事に関する欲求は変わらなかった
→ 高負荷のタスクで、もっと食べたいという欲求が高まっているわけでもない - タスクの負荷によって、自分の食べた量の認知力は変わらなかった
→ 高負荷のタスクの人は、自分の食べた量を変わらずに把握しつつも食べてしまっている
ということ。これらの結果から考えると、「高負荷のタスクでは、注意力が低下して誘惑に勝てなくなった」というのが第一の原因として濃厚になるわけですね。
まとめ
本稿では「ストレスで食べ過ぎてしまうの真の原因」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- ストレスで食べ過ぎてしまうのは、ストレスが食欲を強めているのでなく、頭の負荷で注意力がキープできなくなっているから
- つまり、ストレスを感じなくても、頭に負荷がかかるだけで自制心の低下につながってしまう
ということですね。
これに対処するには
- 頭の負荷を軽くしておく。例えば、マルチタスクをやめる、すぐに片付く仕事を溜めない、よく寝るなど頭のキャパを上げておく。
- 誘惑が視線に入らないように遠ざけておく
- 自分が誘惑に負けやすい状況を事前に理解しておく
とかの準備をすると良いでしょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Don’t mind if I do: Disinhibited eating under cognitive load