ブルーライトで睡眠の質は落ちるが、夜の認知パフォーマンスは向上するという話
寝つきをよくするには、スマホやPCのブルーライトを避けることが大切です。
ブルーライトは脳を覚醒させてしまう刺激なので、ブルーライトが目に入ると脳が睡眠モードに入りにくくなってしまうんですね。夜にネットフリックスやゲームをすると、いつまでも眠くならずにズルズルと夜更かししてしまうのは、このブルーライトが一つの原因でしょう。
そこで、本稿ではこのブルーライトの睡眠抑制効果について
- ブルーライトを浴びると夜の眠気やメラトニンの分泌はどれだけおさえられるのか?
- ブルーライトを浴びると、集中力といった認知パフォーマンスはどう変わるのか?
を調べてくれたスイスの大学の研究(*1)を見ていきましょう。
夜のブルーライト実験
この研究では、寝る前に浴びるブルーライトの量が睡眠や脳の覚醒のどのように影響するのかを確かめるために実験を行なっています。この実験では
- LEDタイプのディスプレイ
- LEDでないディスプレイ
の2つのディスプレイを用意しています。寝る前の5時間がディスプレイを見る時間になっていて、映画を見るなどしてどちらかのディスプレイの前に張り付いてもらっています(ちゃんと休憩はあります)。
この2つのディスプレイの違いはブルーライトの出力量の違いで、下の図のようにLEDでないディスプレイのブルーライトは3分の1程度に抑えられています。
そして、2つのディスプレイを見た時の効果の違いとして
- メラトニンの分泌量
- 眠気の強さ
- 脳波の強さ
- 認知タスクのパフォーマンス
が測定されています。
ブルーライトと眠気の変化
最初にブルーライトで眠気がどのように変化したのかの結果を見ると
- ブルーライトを見た人の方が、夜の眠気が少なかった
- ブルーライトを見た人の方が、メラトニンの分泌量も少なかった
- ブルーライトを見た人の脳波は、うとうとしているときに高まるシータ波が弱くて、脳がより覚醒していることがわかった
メラトニンは睡眠ホルモンとも言われていて、質の良い睡眠には必要なホルモンです。ブルーライトが睡眠を妨げてしまうのは、主観的な眠気でもそうですし、体内のホルモンや脳波のレベルで見てもそうだということですね。
ブルーライトと脳のパフォーマンス
続いて、この研究ではブルーライトを浴びることで、脳のパフォーマンスがどう変わるのかを確かめています。脳の様々な側面のパフォーマンスを図るために、下記の3種類のタスクを行ってもらっているんですね。
- 注意力タスク
特定の文字が現れたらボタンをすぐ押して、他の文字なら押してはいけない - 時間の予測タスク
何秒経ったかを体内時計を頼るに予測する - 記憶タスク
60個の言葉のペアを記憶する
それで、ブルーライトを浴びた人とそうでない人でどのような違いが出たのかというと、
- ブルーライトを見た人の方が、注意力タスクがうまかった
- ブルーライトを見た人の方が、体内時計が速かった
- 総合的な記憶量には差が出なかった。しかし、ブルーライトを見た人は最後に見た単語をよく覚えている傾向があり、ブルーライトでない人は最初に見た単語を覚えている傾向があった。
ということ。
まとめると、ブルーライトを見た人の方が、脳が覚醒しているだけあって、認知タスクのパフォーマンスが高いわけですね。記憶の仕方に差が出た理由としては、ブルーライトを浴びた人は、新しい情報への警戒心が高まっているので、最後に見た単語をよく記憶できたのではないかということ。しかし、全体で覚えている単語数に差は出なかったので、寝る前に単語を覚えるくらいの勉強ならパフォーマンスを落とさずにできるのかもしれませんね。
まとめ
本稿では「ブルーライトと脳の覚醒」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- ブルーライトは脳を覚醒させて、眠気を遠ざけてしまう
- ブルーライトの脳の覚醒効果は、夜の頭のパフォーマンスを上げるのには良い(記憶タスクならブルーライトがなくても大丈夫)
ということですね。
夜のブルーライトは頭のパフォーマンスを向上できるけど、睡眠の質を低下させてしまうの諸刃の剣と言えるでしょう。個人的には睡眠の質が低下して日中に眠くなってしまっては元も子もないので、睡眠はしっかりととって持続的にパフォーマンスを発揮することをお勧めします。最近のPCやスマホでは、ナイトモードに対応していて、ディスプレイのブルーライトを落とせるものも多いので活用してみると良いでしょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]