音楽やテレビのメディア系マルチタスクで、集中力は低下しないのか?
メディア系のマルチタスクとは、情報メディアを見聞きしながら他の作業を行うことです。例えば
- 音楽を聴きながら仕事をする
- テレビを見ながら勉強をする
- ブログを見ながらWeb会議に参加する
など、日常的にやっている人も多いのではないでしょうか。
心理学の研究によると、基本的にはマルチタスクはお互いのタスクが干渉して集中力を低下させてしまうのでオススメできません。2つのタスクを同時に処理できれば効率的なように思えますが、実際には2つのタスクを細かく切り替えながら処理しているだけで、頭の切り替えが追いつかずにパフォーマンスが低下してしまうんですね。
メディア系のマルチタスクは、それ自体は受け身で集中力がいらないタスクではあります。しかし、メディアには音や映像といった刺激があるので、それらがもう一方のタスクの集中力を阻害してしまう可能性は十分にあり得ます。
そこで本稿では、
- 普段からメディアを使いながらの作業が多い人は、集中力やタスクの切り替えが困難にならないのか?
について調べてくれたウォータールー大学の研究(*1)を見ていきましょう。
メディア系のマルチタスクに悪影響はあるのか?
ウォータールー大学の研究では、202人を対象にオンライン調査をしています。
この調査では
- 普段どのくらいメディアを使いながら作業をするのか?
とともに
- 心ここに在らずで集中力を失ってしまっていることがあるか?
- 不注意になって失敗することがあるか?
(冷蔵庫に牛乳を取りに行ったけど、ジュースを持ってきてたとか) - 物事をよく忘れてしまうことはないか?
- 作業に関係ないことを考えてしまうことはないか?
- タスクを切り替えるときにすんなり切り替えられているか?
といったことを調べています。
この研究の特徴としては、参加者の主観的な回答をもらっていること。客観的に集中力を測定しようとすると、どうしても実験室などの非日常になってしまいがち。主観的な回答では個人の感覚に左右されてしまうデメリットもありますが、日常生活のリアルな回答が得られるメリットもあります。
結果:マルチタスクの弊害とは
早速結果を見てみると、メディア系のマルチタスクを普段から頻繁に行う人に見られた傾向として、
- 作業中に集中力を失ってしまうことが多かった(r=0.28)
- 注意力が欠けて失敗することが多かった(r=0.28)
- 頭の中で作業と関係ないことが浮かんでしまうことが多かった(r=0.15)
また、マルチタスクで特に害がなかった項目としては
- 物忘れなどの記憶力は低下しなかった
- タスクを切り替えるのにかかる主観的な苦労は増えていなかった
ということ。
これらはあくまで相関関係なので、これから因果関係を推定して結果としては
- メディア系のマルチタスクを行うと、集中力が阻害される(r=0.28)
→集中力がなくなると、頭の中で関係ないことが浮かんでしまう(r=0.61)
→集中力がない上に、頭の中で他のことを考え出すと、注意不足によるミスが増えてしまう
という流れになっているみたいです。
タスクの切り替えは低下していないので、メディア系のマルチタスクを行う人は、一つのタスクに集中することが苦手という感じですね。やはり、深い集中が必要な場合には、音楽や動画などの外部の刺激を遮断して、シングルタスクで取り組むことが大切ということです。
まとめ
本稿では「メディア系のマルチタスクと集中力」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 音楽を聴きながらやテレビを見ながらなど、情報メディアと他のタスクをマルチタスクで行う人は、集中力が低く、タスクに関係ないことを考えがちで、ミスも多い
ということです。
スマホの通知なども集中力を阻害する要因になってしまうので、深い集中が必要なタスクでは、情報メディアが目に入らない作業環境を作るのもいいかもしれません。
一方で、食事をしながらテレビを見るとか、音楽を聴きながら運動するとか、娯楽として楽しむことが目的ならあまり問題はないかもしれませんね。
以上、本当に集中したいタスクはシングルタスクで実践していきましょう。
[参考文献]