睡眠の質や睡眠時間にはどれくらい遺伝が作用するのか?
質の良い睡眠を十分に取ることは、食事や運動と並んで健康に欠かせない大切なポイントの一つです。そして、睡眠の質は自分自身で向上できる部分もあって
- 寝る前にはブルーライトを避ける
- 寝る前に食事をしない
- 日中に適度な運動をする
- 寝る前にお風呂などで体温を上げる
などが睡眠の質の向上に効果的だと言われています。
しかし、人の体には環境的な要因で後から変えられる部分と、生まれつきの遺伝的な要因で変えられない部分があります。例えば、性格は遺伝的な要因を強く受けるもので、短期間で大きく性格を変えることは難しいですよね。考えてみると睡眠の時間や質にも遺伝的な要因が影響する可能性があって、上記の環境的な要因を生かしたテクニックとどちらの影響が強いのか?が気になるところです。
この点についてオランダ神経科学研究所らの研究では
- 睡眠の時間と睡眠の質には何%くらい遺伝的な要因が影響しているのか?
を調べてくれていましたので、本稿ではその中身を見ていきましょう。
遺伝と睡眠時間・睡眠の質
オランダ神経科学研究所らの研究(*1)では、睡眠と遺伝に関して調べた研究23件をメタ分析でまとめています。これらの研究データには合計で
- 睡眠時間に関しては年齢が6ヶ月〜88歳の45,328組の双子のデータ
- 睡眠の質に関しては年齢が16歳〜95歳の39,020組の双子のデータ
が含まれていて、データの規模としても十分だと思います。
双子は遺伝子が似ているため、遺伝の研究ではよく登場します。双子間で睡眠の時間や質に差異が出るとすれば、それは遺伝以外の環境的な要因の影響が強いということ。なので、こうした双子のデータの睡眠時間と睡眠の質のばらつきから、遺伝的な要因と環境的な要因の影響の割合を分析できるんですね。
結果:睡眠時間と睡眠の質の遺伝の影響度
分析の結果を見てみると、
- 睡眠時間の変動の46%が遺伝的な要因、残りの54%環境的な要因で決まっていた
- 睡眠の質の変動の44%が遺伝的な要因、残りの56%環境的な要因で決まっていた
ということ。
睡眠時間も睡眠の質も、おおよそ半分くらいは遺伝的な要因で決まるということ。思っていたよりも遺伝的な要因の影響が強いですね。そもそも適切な睡眠時間や適切な睡眠のリズムは人それぞれ変わるもので、そこには遺伝的な影響が強く作用することが分かっています。例えば、ショートスリーパーで生まれつき短い睡眠時間の人もいると言いますよね。そのため、実際の睡眠時間や睡眠の質も遺伝的な影響を強く受けるのも当然のことかもしれませんね。
結果2:年齢と遺伝の影響
睡眠時間と遺伝の影響については、年齢によっても影響度が変化することも分かっていて
- 幼児期での遺伝の影響は17%
- 幼少期での遺伝の影響は20〜52%
- 青年期での遺伝の影響は69%
- 成人での遺伝の影響は42〜45%
ということ。
青年期には特に遺伝的な影響が強く睡眠時間に作用するようです。青年期は夜更かしが増えたりなど、睡眠のリズムも乱れやすい時期なので、性格などの遺伝の影響が強い要因が作用しているのかもしれませんね。
まとめ
本稿では「睡眠時間と睡眠の質に遺伝が与える影響」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 睡眠時間には遺伝的な影響が46%作用している
- 睡眠の質には遺伝的な影響が44%作用している
- 睡眠時間は青年期に特に遺伝的な影響が高まって69%になる
ということ。
遺伝的な要因も結構強いということで、自分の遺伝子にあった睡眠のリズムを理解することが大切なのかもしれませんね。もちろん環境的な要因も半分以上作用しているので、ブルーライトを避けるなどのテクニックもやる価値は十分にあります。遺伝的な要因と環境的な要因の両方を理解して、より良い睡眠を目指していきましょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1: Heritability of sleep duration and quality: A systematic review and meta-analysis