性格とモチベーションが仕事の成功にどう関係しているのか?を長期的に調べた研究
当然のことですが、仕事の成功には性格とモチベーションが大きく影響します。真面目で勤勉な人や、社交的な人は仕事がうまく進められますし、モチベーションがない人が仕事で大きな成功を収めるのは難しいことでしょう。
しかし、考えてみると難しいのが、性格もモチベーションも時間とともに変化する点。性格は一見変わりにくい要素に見えますが、実は長期的にみると性格が変わらない人の方が珍しいです。若い頃にやんちゃな性格が年齢とともに真面目になったり、怒りっぽい人が歳をとって丸くなるなんてこともありますよね。また、モチベーションの常に変動するもので、スランプ気味でモチベーションが低下する時期もあれば、仕事が充実してモチベーションが高まる時期もあるでしょう。
そこで本稿では、
- 仕事において性格とモチベーションは長期的にどのように相互作用しているのか?
- 長期的な性格とモチベーションの変化は仕事の成功にどうつながっているのか?
について調べてくれたハンブルグ大学の研究(*1)を見てみましょう。
性格・モチベーションと仕事の成功
ハンブルグ大学の研究では、4121人を対象に
- 性格(ビッグファイブ)
- 仕事のモチベーション
- 仕事の成功
の三つを測定しています。これらの三つの要素の長期的な相互関係を調べるために、測定は20年の期間をおいて2回行われています。1回目の測定では平均年齢が22.8歳の人たちが、2回目の測定では平均年齢39.81歳になっているので、新人社会人が中堅になる過程での性格やモチベーションの変化を測定しているわけですね。
もう少し具体的に測定した内容を見てみると、次のようになっています。
性格:ビッグファイブ性格分析で下記の五つの性格の要素を測定
- 誠実性:真面目で勤勉な性格
- 開放性:好奇心が強く新しいことに挑戦する性格
- 協調性:グループ全体の利益を考えて周りの人に協力する性格
- 社交性:他の人と交流を深めるのが好きな性格
- 精神安定性:怒ったり落ち込んだりの感情の波が小さく安定している性格
仕事のモチベーション
- 知性の自己認識
自分は他人よりも知性が高いと感じているか - 仕事の自己効力感
仕事の困難も自分で努力して超えていく自信があるか - 仕事のやる気低下
仕事が時間の無駄に感じたり、フラストレーションを感じていないか
仕事の客観的成功
- 収入の高さ
- 仕事のポジション
- リーダシップを取るポジションか?
(下に何人の部下がいるか)
仕事の主観的成功
- 仕事の満足感
- ワークライフバランスの満足感
結果:性格とモチベーションの時間変化
最初に性格と仕事のモチベーションが時間とともにどのように相互作用していたかの結果を見てみると、それぞれの要素の時間変化の傾きの関係が次のグラフになっています。
知性の自己認識 | 自己効力感 | やる気低下 | |
精神安定性 | .49 | .48 | −.32 |
協調性 | .16 | .12 | −.09 |
社交性 | .16 | .28 | −.11 |
開放性 | .12 | .14 | −.08 |
誠実性 | .30 | .65 | −.31 |
このグラフから分かるのは、精神安定性と誠実性の性格が特にモチベーションと深く関係しているということで、
- 精神安定性と誠実性が時間とともに高まった人は、自分の知性を高く感じ、困難を乗り越える自信がつき、仕事でやる気が低下することが少なくなった
という結果が得られていることが分かります。
結果2:仕事の成功との関係
続いて性格と仕事の成功とどのように関係していたかの結果を見ると、
- 誠実性が高まった人は、収入・ポジション・リーダーシップの三つが高まり、仕事の満足感も増したが、ワークライフバランスは低下していた
- 精神安定性が高まった人は、リーダーシップが向上し、仕事の満足感もワークライフバランスも向上していた
- 協調性が高まった人は、リーダシップが低い傾向があったが、仕事の満足感もワークライフバランスも向上していた
- 社交性の高まりは収入・ポジション・リーダーシップとは特に関係なかったが、仕事の満足感とワークライフバランスは向上していた
- 開放性の高まりは高い仕事のポジションにつながっていたが、リーダーシップは低下していた
さらにモチベーションと仕事の成功の関係として
- 自己効力感の高まりは、収入の増加と仕事満足感・ワークライフバランスの高まりにつながっていた
- 仕事のやる気の低下は、ワークライフバランスの低下につながっていた
- 知性の自己認識の高まりは、収入・ポジション・リーダーシップの向上と、仕事満足感・ワークライフバランスの高まりにつながっていた
ということ。
仕事の成功という意味でも誠実性と精神安定性が大切で、この二つがもたらす自己効力感と知性の自己認識の向上も仕事の成功に大きく影響しているみたいですね。
まとめ
本稿では「性格・モチベーションの時間変化と仕事の成功」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 誠実性と精神安定性の性格が向上した人は、自己効力感の向上、知性の自己認識の向上、やる気低下の帽子などのモチベーションの向上効果が得られていた
- 誠実性や精神安定性は、収入や仕事のポジションの高まりと、仕事の満足感の向上につながっていた
ということ。
やっぱり安定して勤勉にコツコツ働くタイプの人が仕事では成功しやすいようですね。この研究では20年にわたる性格の変化を測定しています。なので、今は仕事に向かない性格でも、時間をかけて自分の性格を変えていければ仕事でも成功しやすくなるでしょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]