簡単なタスクばかりこなす人ほど、自分の能力を過大評価しているという研究

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人は自分の能力は他人よりも優れていると思いたがる傾向があります。

例えば、自分の知能が全体の上位何%に入るかを予測してみてください。全員が自分の能力を正しく理解できていれば、予測の平均は50%になるはずです。しかし、実際に予測してもらった実験結果では平均が60%を超えたりしていて、多くの人が自分は平均以上の能力があると過大評価をしているんですね。

実はこうした過大評価は知能、社交スキル、仕事の能力、車の運転スキルなど多くの分野で確認されている問題。何が問題なのかというと、自分の能力を過大評価してしまうと、それに満足してそれ以上の成長が望めなくなったり、新しいスキルを学ぶときにも自分に足りない知識のギャップを正しく認識することができなくなってしまうんですね。

そこで本稿では、

  • 自分の能力の過大評価はどんな人が行ってしまいやすいのか?

について調べた研究を参考に、過大評価を避けて成長を続けていく方法について学んでいきましょう。

過大評価をしやすい人とは?

ワシントン州立大学の研究では、過大評価を能力の捉え方の観点から調べていて、

  • 人の能力が固定的なものと考えるか、能力は高めていけるものと考えるかの違いが過大評価に関係しているのでは?

ということを確かめてくれています。

能力が固定的と考えるとは、生まれつきの才能で能力が決まるとか、遺伝的な要因で能力の大半が決まっていると考えること。そして、能力を高めていける考えは、自分の努力次第で能力はどんどんと伸ばしていけるという考えになります。

実験:能力の捉え方と過大評価

ワシントン州立大学の研究では、三つの実験で能力の捉え方と過大評価の関係を分析しています。

三つの実験はどれも

  • あらかじめ能力を固定的と考えるか、高めていけるものと考えるかを測定する
  • 知能テストを受けてもらう
  • 自分の知能テストの能力が下から何%の位置にいるか予測してもらう
  • 予測の平均がどれだけ過大評価になっているのかを分析する

といった手順になっています。

結果:能力は固定的と考えるほど自己評価が過大

早速実験の結果を見てみると、

  • 能力が固定的と考える人は、自分の能力を66.19%〜68.80%の位置にいると予測していた
  • 能力は高められると考える人は、自分の能力を55.59%〜59.31%の位置にいると予測していた

ということ。

50%から大きく離れるほど能力を過剰に評価してしまっているので、能力が固定的と考える人の方が自己評価が過大になりやすいことが分かります。一方で能力は高めていけると考える人は、55%程度に収まっているので、自己評価の精度がずっといいことになります。

結果2:なぜ能力が固定的な人は自己評価が過大なのか?

能力を固定的と考える人ほど自己評価が過大になってしまうのがなぜかについても、この研究では後半の2つの実験で調べてくれています。

その結果を見てみると、

  • 能力が固定的と考える人は、知能テストで難しい問題と簡単な問題があった場合に、簡単な問題ばかり解く傾向があった
  • 能力が固定的と考える人に難しい問題だけを解かせた場合には、自己評価が58.68%に低下して過大評価がなくなった

ということ。

つまり、能力が固定的と考える人は、簡単な問題ばかり解いて自分の能力が高いと勘違いしてしまっているんですね。これは裏を返せば、能力が固定的な人は自分の能力が低いと思いたくないから、困難な問題を避けてしまっているということでもあります。

現実で言えば、失敗を恐れて挑戦することを避けてしまったり、ネガティブなフィードバックを避けてしまったりするほど、自己評価は過大になってしまいやすいでしょう。挑戦やネガティブなフィードバックは成長の機会でもあるので、こうした機会を避けて簡単なことばかりこなしてると、自己評価ばかり高くて実力はない人になってしまうので注意しましょう。

まとめ

本稿では「自己評価が過大になってしまいやすい人」についてお話ししました。

ポイントをまとめると

  • 人の能力は生まれつき固定的だと考える人ほど、自己評価は過大になりやすい
  • 困難な問題を避けて簡単なことばかりこなすことが過大な自己評価につながっている

ということ。

自分の能力を正しく認識して成長していくには、自分の良い面ばかり見ないで、失敗の経験やダメだった所などのネガティブな面にも目を向けなければいけないわけですね。自己評価を正して成長を続けるためには、すでにできることばかりやらないで、一つ上のレベルに挑戦するように心がけていきましょう。

以上、本稿はここまで。


[参考文献]

*1 : Understanding overconfidence: Theories of intelligence, preferential attention, and distorted self-assessment

Naoto

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