セルフコントロール能力を高めるアプリを作ったら効果があったぞという研究
セルフコントロール能力とは、その時の感情や目先の誘惑に惑わされずに、苦労があったとしても長期的に良い選択をできる能力のことです。ゲームばかりせずに勉強したり、先延ばししている困難な仕事に取り組んだり、お菓子の誘惑に負けずにダイエットしたりと、人生の様々な場面で必要になるとても大切な能力ですね。
しかし、セルフコントロール能力が大切なことは重々承知していても、自分はセルフコントロール能力が高いと自信を持って答えられる人は少ないのではないでしょうか。過去を振り返ってみても、もっと勉強しておけば良かったとか、あんなに食べ過ぎるんじゃなかったとか、セルフコントロール能力がもっと高ければと後悔することも多いでしょう。
そこで本稿では、セルフコントロール能力を高める方法として
- セルフコントロール能力を高めるスマホのアプリを実験的に作ってみたら意外と効果が出たぞ
という研究があったので、本稿ではこの研究を見ていきましょう。
セルフコントロール能力を鍛えるには
セルフコントロール能力を鍛えるのにはどうすればいいのか?
答えはシンプルでセルフコントロール能力は使えば使うほど高まっていくことが分かっています。筋トレと同じように、自分が誘惑や感情を抑えてセルフコントロール能力を発揮する経験が、心を強くしてくれるわけですね。
それでは、心を修行のように追い込まなければいけないのかというと、実はそういう必要もありません。実際に研究で効果が確認されている方法では、「歯磨きやドアを開けるときの手を、自分の利き手と違う方の手でやる」というちょっとした工夫でも、積み重ねればちゃんと効果がでるんですね。
そこでオランダの研究では、
- ちょっとしたセルフコントロール能力が必要なタスクを、スマホアプリでゲーム感覚で実践させてあげれば、セルフコントロール能力を効果的に高められるのでは?
ということを実験しています。
実験:セルフコントロール能力向上アプリ!
オランダの研究が実験で使用したアプリは
- 電気のスイッチを利き手でない方の手でつける
- 飲み物を持つ手を利き手でない方の手にする
- ジッパーを開けるときの手を利き手でない方の手にする
といった感じで、利き手を使わないチャレンジを10日間にわたって実践するものです。このアプリはゲーム感覚になっていて、毎日チャレンジを実践できたかを記録していて、ゴールまでの進捗がどのくらいかも一目でわかるようになっています。
それで、この実験ではチャレンジをアプリにすることの効果を確かめるために、
- アプリを活用してチャレンジを実践する場合
- メールで知らせてチャレンジを実践する場合
- 特に何もしない場合
の三つのパターンを用意しています。さらに、チャレンジの数として
- 毎日1個のチャレンジが提供される場合
- 5日分の5つのチャレンジがまとめて提供される場合
の二つの方法も比較しています。
10日間の実践の最後には
- セルフコントロール能力がどれだけ向上したか?
- 怒りでセルフコントロールができなくなってしまう経験がどれだけ減ったか?
といった変化を測定して、トレーニングの効果を分析しています。
結果:
実験の結果を見てみると、
- アプリを実践した人はセルフコントロール能力が有意に向上していた
- メールで実践した人と何もしなかった人はセルフコントロール能力は高まっていなかった
ということ。アプリを実践した人のみがセルフコントロール能力が高まるという結果になっています。
他の結果についてはどうだったのかというと、
- 怒りでセルフコントロールを失う経験は、どのグループでも向上していなかった
- 1日1つずつの場合と、5日分まとめての場合では、特に効果は差が出なかった
ということ。怒りのような強いセルフコントロールが必要な場合には、今回のような10日間のちょっとしたチャレンジだけでは足りないのかもしれませんね。
まとめ
本稿では「セルフコントロール能力がアプリで高まる」というお話をしました。
ポイントをまとめると、
- 利き手と違う手を使うようにするだけでもセルフコントロール能力は鍛えられる
- アプリを使ってチャレンジをゲーム感覚で提供すると効果が高まる
- ただし、怒りを抑えるような強いセルフコントロールには今回のアプリは効果はなかった
ということ。
今回のアプリは実験的に作られたものなので、残念ながら入手はできません。しかし、毎日チャレンジを一つ実践するのであれば、Todoアプリに毎日1個のチャレンジを登録しておくとかでも同じ効果が期待できるかもしれません。利き手でない手を使う以外にも、皿洗いをすぐやるとか、1日5分だけ英単語の勉強するとか、ちょっとしたセルフコントロールから毎日挑戦していけると面白いのではないでしょうか。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]