睡眠不足になるとエリートでも認知能力は落ちてしまうのか?の研究
当たり前のことですが、睡眠不足になると頭がうまく回らなくなって、認知能力が低下してしまいます。Netflixにハマったりして一晩の睡眠不足になるだけでも、翌日ウトウトして仕事の集中できなかったり、頭が重い感じがしていつもより思考が遅くなったりしますよね。
それで、睡眠不足により記憶力や脳の反応速度といった認知能力が低下してしまうことは、これまでの研究でも確かに確認されています。しかし、それらの研究は一般の人を対象にしたものが大半で、普段から頭をよく使う認知能力のエリートであれば、もしかしたら睡眠不足でも認知能力を維持できるかもしれません。
そこでリムリック大学の研究では、
- 普段から高い認知能力が必要な仕事をしているエリートでも、睡眠不足になると認知能力は低下してしまうのか?
を調べてくれていましたので、本稿ではその中身を見ていきましょう。
睡眠不足と認知能力の低下
リムリック大学の研究が対象としている認知能力のエリートがどんな人たちかというと、
- 飛行機のパイロットやオペレーター
飛行機が墜落しないように常に異常を警戒して、複雑な飛行機の操縦や指令を出さなければいけない - 軍隊
敵襲に備えて常に警戒が必要だし、状況に応じて瞬時に判断・行動することが求められる - 医療従事者
手術のようなミスが許させず複雑な医療処置は、高い集中力が必要となる - エリートアスリート
状況に応じた瞬時の判断や、自分のパフォーマンスに集中する能力が鍛えられている
といった人たちになります。どの職業もミスした時のリスクが大きく、少しの認知能力の低下が重大な事故やパフォーマンスの低下につながってしまう可能性があります。実際に仕事で高い認知能力が必要な人たちは、他の人と比べて仕事と関係ない全般的な認知能力テストでも成績も良いことが知られているんですね。
そこで、リムリック大学の研究では、こうしたエリートが睡眠不足になったときの影響を調べた14件の研究結果をシステマティックレビューという形でまとめてくれています。ちなみに、これらの研究でいう睡眠不足とは、普段の睡眠時間が7時間前後なのに、数日だけ4時間前後に減ってしまったときのことを言います。完全に徹夜することは稀ですが、これくらいの睡眠不足なら日常生活でも普通にあり得そうですよね。
結果
この研究では認知能力の低下を次の3つのタスクの種類に分けて分析しています。
- 突発性の低いタスク
突然的に状況が変わることが少なく、同じ集中力をずーと維持することが必要なタイプのタスク - 突発性の高いタスク
突発的に状況が変わるので、それに応じて注意の向ける方向を変えたり、頭の使い方を変える必要があるタスク - 切り替えのあるタスク
突発性の低いタスクと高いタスクが両方含まれていて、両者の頭の使い方を柔軟に切り替える必要があるタスク
そして、これらの3つのタスクでの睡眠不足の影響を見てみると、
- 突発性の低いタスクでは、睡眠不足で有意なパフォーマンスの低下が見られた
(具体的には脳の反応速度や判断速度、注意力の維持に低下があった) - 突発性が高いタスクでは、睡眠不足でもパフォーマンスの低下は見られなかった
(複雑に頭を使うタイプのタスクでもエラーの確率は変わらなかった) - 切り替えのあるタスクでは、睡眠不足でパフォーマンスが低下する可能性はあった
(他の2つ比べたあまり確かではない)
ということ。
つまり、これらの結果からわかる結論としては、認知能力のエリートでも睡眠不足になってしまうと、
- 状況に応じて複雑に頭を使うタスクのパフォーマンスは落ちにくいけど、同じ状況で注意を維持するタスクのパフォーマンスは落ちやすい
ということです。単調な仕事は眠気を誘うものなので、睡眠不足の影響がより強く出やすいのかもしれませんね。
まとめ
本稿では「認知能力のエリートでも睡眠不足の影響を受けるのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 認知のエリートが4時間程度に睡眠時間が減ってしまうと、複雑に頭を使うパフォーマンスは低下しにくいが、単調に注意を維持するパフォーマンスは低下してしまう
ということ。
長距離の車の運転のような、単調だけどずっと注意が必要な場合には、睡眠不足で注意力が低下してしまいやすいので気をつけましょう。特に車の運転のようなちょっとした眠気が重大な事故につながってしまうリスクがある場合には、十分に睡眠を取ることとを徹底した方が良さそうですね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]