自分の関心にあった仕事につけば仕事の満足感は高まるのか?
人それぞれやりたい仕事や夢は違うものです。好きなことを仕事にして生きていければ、人生は楽しくなりそうです。しかし、仕事には辛い面もあるので、好きなことは趣味にとどめて、仕事にはしない方が良いと考える人もいます。
そこで本稿では、
- 仕事の内容と自分の関心がマッチした時、どれだけ仕事の満足感は高まるのか?
を調べてくれた研究を見ていきましょう。
仕事の関心の6タイプ
仕事への関心には次の6つタイプがあると言われています。人によってどのタイプの関心を持つのかが異なるわけですね。どれか一つの関心のみの場合もあれば、複数の関心を同時の持つこともあるでしょう。
- 現実的な関心
現実世界の具体的な対象に興味があること。
車が好きで車の修理をする仕事をしたり、動物が好きだからペットショップで働いたりとか。 - 研究的な関心
物事を深く掘り下げて考えたり、調査・分析したりすることに興味があること。
新しい技術の研究であったり、ビッグデータの分析など。 - 芸術的な関心
クリエイティブに新しいものを創造することに興味があること。
芸術家や音楽家、洋服のデザイン、商品アイデアの企画など - 社会的な関心
他者との関わり合いに興味があること。
サービス業などの人と接する仕事や、介護などの人を助ける仕事など - 企業的な関心
企画をしたり組織を運営することに興味があること。
人の監督やリーダシップを発揮する仕事など - 慣習的な関心
規則やルールに従って、定まった方法で行うことに興味があること
事務的な仕事や、反復作業など
これらの6つのタイプの関心は、人によって持ち方が変わるだけでなく、職業によっても求められる関心が変わります。両者が一致した時に、仕事の満足度が高まると考えられるわけですね。
例えば、研究員は第一に研究的な関心が求められる仕事で、続いて現実的な関心と芸術的な関心も求められます。研究好きでこれらの関心が高い人は研究員として楽しく働けますが、決まったルール通りに働きたい慣習的な関心が高い人は研究職についても満足感が低くなってしまうかもしれません。
分析:関心の一致と仕事の満足感の関係
ヒューストン大学の研究では、従業員の関心のタイプと仕事が求める関心のタイプの一致と仕事の満足感の関係を分析しています。この研究では、105件の先行研究をメタ分析でまとめてくれたんですね。これらのデータを総合すると39,602人ものデータ規模になるということで、信頼度も高めと言えるでしょう。
結果:関心が一致すると満足感が高まるのか?
早速分析の結果を見てみると
- 確かに関心が仕事内容と一致するほど、満足感は高まる傾向があった
- しかし、相関の強さはρ=0.19で思っていたよりも弱い関係性であった
ということ。
なので、確かに仕事と関心が一致する方が良いものの、一致しなかったとしても満足感に大きな悪影響があるわけではないようです。
ちなみに他の研究でわかっている範囲で言えば
- 仕事の自律が満足感に与える影響がρ=0.47
- スキルの多様性が満足感に与える影響がρ=0.41
となっています。
つまり、仕事と関心の一致よりも、スキルを発揮して主体的に働けることの方が満足感にとって大事なんですね。
結果2:どんな満足感が高まるのか?
自分の関心と仕事に求めれらる関心が一致した時に、具体的にどのような面の満足感が高まるのか?
その分析した結果を見てみましょう。
- 仕事の選択への満足感が一番高まりやすかった(ρ=0.34)
- 組織への満足感も高まりやすかった(ρ=0.33)
- 仕事そのものへの満足感は少し高まった(ρ=0.10)
- 給料への満足感とは関係がなかった
- 昇進の満足感とは関係がなかった
- 上司への満足感とは関係がなかった
- 同僚への満足感とは関係がなかった
関心が一致すれば仕事や組織への満足感は高まるようです。しかし、給料・昇進や人間関係面の満足感は、関心が一致していても高まりません。自分の好きな仕事をしている人でも、これらの満足感は低くなってしまうことがあるわけですね。
まとめ
本稿では「仕事と関心が一致すれば、仕事の満足感は高まるのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 仕事と関心が一致するほど仕事の満足感は高まるが、その関係は思っていたよりも弱い
- 仕事と関心が一致すると、仕事や組織への満足感は高まるが、給料・昇進・人間関係の満足感には効果がない
ということ。
満足感だけみると関心との一致はそこまで重要ではなさそうですね。しかし、仕事と関心の一致は仕事のパフォーマンスにも影響することが分かっていて、そちらは若干強めの関係となっています(ρ =0.32)。自分の好きな仕事なら、モチベーション高く働くので、パフォーマンスも高まるわけですね。なので、関心との一致もある程度は考慮してあげた方が良いでしょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Interest Fit and Job Satisfaction: A Systematic Review and Meta-Analysis