将来のキャリアを具体的にイメージできると、将来のための行動力が高めるという研究
本稿のテーマは「将来のキャリアのための行動力」についてです。
将来はこんな仕事がしたいとか、将来はこんな人間になりたいとか、自分のキャリアを思い描くことってありますよね。特に、年の始めだったり、人生の節目だったりで、将来について考えることは多いのではないでしょうか。
しかし、漠然と将来のキャリアのイメージがあったとしても、日々その将来のために行動できる人は少ないと思います。思い切ってスキルアップのための教科書を買ってみたものの、半分も読まないうちに本棚で眠ってしまうなんてことがあるのではないでしょうか。ダイエットにしろ、勉強にしろ、短期的な誘惑に負けずに長期的な目標を追求することは難しいということですね。
そこで本稿では、将来のキャリアのイメージとそのキャリアのための行動力の関係について調べてくれた研究(*1)を参考に、将来の自分をイメージすることの効果についてお話ししていきたいと思います。
将来のイメージと今の行動力
この研究では将来のキャリアのイメージとそのキャリアのための行動力の関係を調べていて、合計で397人を対象に次の項目を測定しています。
①将来のイメージの鮮明さ
将来の希望として自分はどんなふうに働きたいのかをイメージしてもらって、そのイメージがどれだけ鮮明で強くイメージできているのかを測定。
②将来のイメージの細かさ
将来の希望のキャリアにつけたとして、自分が誰と、どんな風に、何をして働いているのかといった詳細を、どれだけ細かくイメージできているのかを測定。
③キャリア・アイデンティティ
キャリアがどれだけ自分のアイデンティティに合っているのかを測定。つまり、そのキャリアがどれだけ自分に合っていると感じているのかということですね。
④キャリアの熱望
自分の選んだキャリアで成功したり、何かを達成したいという気持ちがどれだけ強いのかを測定。
⑤キャリアのための主体的な行動
将来の希望のキャリアを達成するための行動をどれだけしているのかを測定。行動としては、スキルアップための行動や、人間関係を広げる行動、キャリアの相談やプランニングといったものが含まれます。
ちなみにここでいうキャリアとは、今の自分の仕事の延長線上のキャリアではなく、全く新しい業界や業種にも移れるとして、自分がどんなキャリアを選択したいかというキャリアになります。
そしてこの研究では、これらの5つの測定項目から
- 将来をより鮮明にイメージしている人ほど、そのキャリアを熱望する気持ちが強く、キャリアの達成のための行動が増えるのでは?
ということを分析してくれています。
結果
それで、分析の結果がどうだったのかというと
- 将来のキャリアを鮮明にイメージできる人の方が、そのキャリアへの熱望度が高かった
- 将来のキャリアを鮮明にイメージできる人の方が、短期的な利益よりも長期的な利益を優先する未来志向が強かった
- 将来のキャリアを鮮明にイメージできる人の方が、その後6ヶ月にわたってキャリアを達成するための行動を多く取っていた
ということ。
やっぱり、漠然と将来はこんな風になりたいと思っているくらいでは、なかなかその目標のための行動は生まれないようです。もっと鮮明に将来の自分はこうだ!というイメージが頭に浮かぶと、そこに辿り着くために頑張ろうという気持ちが働いて、将来のための行動が生まれるということですね。
イメージは具体的になるほど行動も増える
さらに、この研究では次のような結果も得られています。
このグラフは、
▲で結ばれた直線が、将来のイメージが強い人
◆で結ばれた直線が、将来のイメージが弱い人
を表していて、
将来のイメージの具体性が上がった時に、行動がどれだけ増えるのか
をプロットしています。
グラフから分かるのは
- 将来のキャリアのイメージが強い人は、イメージが具体的になるほど、将来のための行動が増える!
- 将来のキャリアのイメージが弱い人は、イメージが具体的になっても、将来のための行動は増えない
ということ。
なので、将来のための行動を増やしたければ、まず絶対に達成したい!と思えるような強い将来のイメージをして、その後にそのイメージの具体性(いつ、どこで、誰と、何をして・・)を深めればいいということですね。
まとめ
本稿では「キャリアのイメージと行動力」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 将来のキャリアのイメージが鮮明で具体的になるほど、そのキャリアを達成するための行動が増える!
ということですね。
今は働き方や社会の変化が加速している時代なので、一本線のキャリアを歩むことが難しくなってきていると思います。「Life Shift」という本によると、近い将来には人類の半分以上が100歳まで生きるようになり、生涯にわたって学び続けて様々なキャリアを渡り歩いていく時代が来るということです。
そんな時代だからこそ、数年後に自分が何をしていたいのかというキャリアのイメージを鮮明に持って、自分の力でキャリアを選び取っていくことが大切なのかもしれませんね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1: Future Work Selves: How Salient Hoped-For Identities Motivate Proactive Career Behaviors