クリエイティブなアイデアが欲しいときはアイデア・リンキングが有効だという研究

世の中の変化が速くなるにつれて働き方や必要な能力も変化していて、特に最近注目されるようになっている能力の一つがクリエイティビティ(創造力)です。

クリエイティブティとは今までにない斬新なアイデアを出したり、これまでのやり方とは違うアプローチの解決策を出すような能力のことで、ブレインストーミングといったクリエイティブなアイデアを生み出す手法も色々と提案されています。

そこで本稿で着眼するのは、ボストン大学らの研究(*1)で、この研究によると

  • 好奇心とアイデア・リンキングがクリエイティブなアイデアを生む

という結果になっていましたので、その中身を見ていきましょう。

2種類の好奇心とクリエイティビティ

クリエイティビティを考える上で欠かせないのは好奇心の存在です。好奇心は新しいことを知りたい、新しいことを試してみたいという欲求のことで、クリエイティビティの元となる感情なんですね。

そして、好奇心も次の2種類があると言われていて

  1. 分散的な好奇心
    特定の分野に固執することなく、幅広く新しいことを知りたいというタイプの好奇心。
  2. 特定分野の好奇心
    ある特定の分野について、もっと深く知りたいというタイプの好奇心。難しいパズルの答えが知りたいというのもこのタイプの好奇心です。

ということ。

どちらの好奇心も大切なのですが、今回の研究が注目しているのは特定分野へ好奇心です。それがなぜかというと、仕事では特定の困難な問題に取り組むことが多くて、そのときに役に立つのは特定分野への好奇心だからですね。

アイデア・リンキング

アイデア・リンキングとは前に考えたアイデアに対して、新しい要素を追加したり、他のアイデアを組み合わせることで、新しいアイデアを作る方法のことです。

それで、この研究が注目している特定分野への好奇心が強い人ほど、アイデア・リンキングが多くなることが想定できます。特定の困難な問題に根気強く取り組むときには、試行錯誤を繰り返しながら、アイデアを足していって解決に近づけていくからですね。

なので、この研究のポイントをまとめると

  • 特定分野の好奇心が強い人ほどアイデア・リンキングが多いのでは?
  • アイデア・リンキングをする人ほどクリエイティブなアイデアが多いのでは?

という2つのポイントで、これらを実験により確認してくれています。

実験とその結果

この研究では、マジシャンが披露するマジックの新しいトリックを考えるという面白いタスクを使っていて、象をイリュージョンで消すトリックについて聞いた後で、どれだけクリエイティブなトリックを考え出せるのかを測定しています。

まず最初の実験では、意図的に好奇心を高めたグループとコントロールグループでの、アイデアのクリエイティブさを比較していて、その結果は

  • 好奇心が高めたグループの方がクリエイティブなアイデアが多かった
  • 好奇心が高めたグループの方が最初に聞いたトリックに捉われない自由なアイデアを出した

ということ。好奇心がクリエイティビティを上げてくれることが確かめられていますね。

そして、これら人にアイデアを出すときにどのような考え方をしたのかを聞くと

  • クリエイティブなアイデアを出した人ほど、アイデア・リンキングを使ってアイデアを考えていた

ということ。

つまり、クリエイティブなアイデアを増やしたければ、好奇心を高めて、アイデア・リンキングを行えばいいわけですね。

ブレインストーミング vs アイデア・リンキング

それでこの研究ではもう一つの実験していて、ブレインストーミングとアイデア・リンキングの2つでどれだけクリエイティブなアイデアが増えるのかを確かめています。

この2つは少し考え方が違っていて、ブレインストーミングは「異なるアイデアを多く出す」という考え方なのに対して、アイデア・リンキングは「前のアイデアと組み合わせてアイデアを作る」という考え方となっています。

それで、先ほどと同様に新しいマジックのトリックを考えてもらうタスクを

  • ブレインストーミングの訓練をしたグループ
  • アイデア・リンキングの訓練をしたグループ
  • 何の訓練もしないグループ

の3つのグループで行ってもらって、考え出されたアイデアのクリエイティビティの高さを比較しています。

そして、その結果は

  • アイデア・リンキングのグループが一番クリエイティブなアイデアが多く出た(アイデアの47%がクリエイティブだった)

ということで、アイデア・リンキングの有効性が確認されています。アイデア・リンキングは訓練次第で誰でも高められて、クリエイティブなアイデアも増やせるというのは嬉しいですね。

まとめ

本稿では「好奇心とアイデア・リンキング」についてお話ししました

ポイントをまとめると

  • 困難な課題に取り組むときは、その問題を試行錯誤して深く理解しようとするタイプの好奇心が大切!
  • そのようなタイプの好奇心では、アイデアを足し足しで広げていくアイデア・リンキングが有効!
  • アイデア・リンキングを増やせばクリエイティブなアイデアも出せるようになる!

ということですね。

アイデア・リンキングはブレインストーミングに劣らない優秀な方法であるとともに、問題解決にも応用しやすい実用的な方法でもあるので、仕事など活かせる場面は多いと思います。機会があればぜひ試してみてください。

以上、本稿はここまで。


[参考文献]

*1 : Curiosity made the cat more creative: Specific curiosity as a driver of T creativity

Naoto

シェアする