ポジティブな気分やネガティブな気分がクリエイティビティに影響するのか?

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クリエイティビティにはそのときに気分が影響するということがよく言われています。例えば、幸せといったポジティブな気分のときには、視野が広くなって頭も柔らかくなるという説。逆にネガティブな気分のときには視野は狭くなるし、新しいことを考える余裕がなくなってクリエイティビティが低下してしまう説などですね。

しかし、クリエイティビティの研究では、ネガティブな気分でクリエイティビティが向上することもあるという結果が出ていたりします。ネガティブな気分で視野が狭くなることには、逆に限られた視野の中で細かなことまで目が届くようになるというメリットも考えられるわけで、結局ネガティブな気分がクリエイティビティを下げてしまうのかはよく分からないんですね

そこで、今回注目するのがアムステルダム大学の研究(*1)で、この研究では

  • ポジティブな気分、ネガティブな気分、ニュートラルな気分の3つがそれぞれクリエイティビティにどう影響するのか?

をまとめてくれています。

気分でクリエイティビティは変わるのか?

この研究はメタ分析という手法を用いて、25年間にわたるクリエイティビティの研究66件を次の3つの観点、

  • ポジティブな気分とニュートラルな気分でのクリエイティビティの違い
  • ネガティブな気分とニュートラルな気分でのクリエイティビティの違い
  • ポジティブな気分とネガティブな気分でのクリエイティビティの違い

でまとめてくれています。

ポジティブ vs ニュートラル

まずポジティブな気分とニュートラルな気分でのクリエイティビティの違いとしては

  • ポジティブな気分の方がニュートラルな気分よりもクリエイティビティは少し高かった(r=0.15)

という結果が得られています。効果の程は小さめですがやはりポジティブな気分の方が有利みたいですね。

それで。ポジティブな気分でクリエイティビティを上がりやすい条件があって、

  • 嬉しさが幸福感が高まっているときのように、ポジティブでかつアクティブな気分のときにクリエイティビティは高まりやすい

ということ。アクティブでないポジティブな気分とは、リラックスとか落ち着きといった気分のことで、これらの気分ではクリエイティビティは向上しないということです。リラックスしているときにいいアイデアが浮かぶというイメージがありますが、実際にはウキウキしているときの方がクリエイティビティは高まるみたいですね。

ネガティブ vs ニュートラル

次にネガティブな気分とニュートラルな気分の効果の違いは

  • 総合するとネガティブな気分とニュートラルな気分で、クリエイティビティに違いはない

という結論が得られています。

ただし、いくつかの研究ではネガティブな気分がクリエイティビティを低下してしまう結果も得られていて、それらの傾向としては

  • 相関関係を調べた研究ではネガティブな気分でクリエイティビティは低下していた
  • 怒りや恐怖や不安などのネガティブでかつアクティブな気分ではクリエイティビティは低下していた

ということ。アクティブでないネガティブな気分とは、悲しみや無気力感などの気分になります。なので、確かにネガティブな気分がクリエイティビティを低下させてしまうこともあるみたいですね。

ポジティブ vs ネガティブ

最後にポジティブな気分とネガティブな気分でクリエイティビティがどう変わるのかというと

  • 全体を総合するとポジティブな気分とネガティブな気分でクリエイティビティは変わらなかった
  • ただし、条件によってポジティブな気分が有利な場合もあれば、逆にネガティブな気分が有利な場合もあった

ということです。

それで条件によってどんな違いがあるのかというと

  • 楽しめるタイプのタスクでは、ポジティブな気分の方がクリエイティビティが向上していた
  • 成果を求められるタイプのタスクでは、ネガティブな気分の方がクリエイティビティが向上していた

ということ。

これはなかなか面白い結果ですね。例えば、芸術のような自分の世界で楽しめるものはポジティブな気分が有効で、仕事で問題が起きて新しい問題解決策を考えるような場面ではネガティブな気分の方が有効だと考えられるわけです。もちろん仕事でも楽しめる形にすることでポジティブな気分を活かすこともできると思います。

まとめ

本稿では「気分がクリエイティビティに影響するのか」についてお話ししました。

ポイントをまとめると

  • ポジティブな気分はニュートラルな気分より少しクリエイティビティが高まる
  • ネガティブな気分はニュートラルな気分と同じくらいのクリエイティビティ
  • ポジティブな気分とネガティブな気分は条件によって使い分けが必要で、楽しめるタスクではポジティブな気分、成果の求められるタスクではネガティブな気分が良い
  • ただし、リラックスや落ち着きといったアクティブでない感情はクリエイティビティを上げも下げもしないので、もっとアクティブな感情が良い

ということですね。


[参考文献]

*1 : A Meta-Analysis of 25 Years of Mood–Creativity Research: Hedonic Tone, Activation, or Regulatory Focus?

Naoto

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