Want Toな目標を持つと、誘惑に流されにくくなるという研究

目先の誘惑に負けずに長期的な利益を選び取る「セルフコントロール」能力は人生の様々な場面で重要な役割を果たします。ダイエットにしても、学業にしても、目標を達成するためには、誘惑に打ち勝つ強さが必要ですよね。

それで、人によってセルフコントロールがうまい人もいれば、苦手だという人もいます。多くの人が挫折するダイエットであっても、中には黙々と続けて理想の体を手にする人もいますよね。

このようにセルフコントロールが高くて成功する人をみると、誘惑に打ち勝つ鋼のメンタルを持っている凄い奴に思えるかもしれません。しかし、心理学の研究によると

  • セルフコントロールがうまい人は、そもそも誘惑を感じにくいんじゃないの?

ということが考えられていて、マギル大学の研究(*1)では

  • 目標の持ち方次第で、誘惑を感じにくくなってセルフコントロール能力が上がる!

ということが分かっていて面白かったです。

Want Toな目標とHave Toな目標

この研究では、目標をWant ToとHave Toの2種類に分けています。

  1. Want Toな目標
    自分の内面からやりたいと思える目標のこと。
    例えば「ダイエットは自分の人生を充実させてくれるからやりたい!」とか「健康的な食生活が好きだからダイエットしたい!」といった感じ
  2. Have Toな目標
    他人に認められたいなどの外部的な報酬であったり、やらなければいけないという強制力が元になっている目標のこと。
    例えば、「医者に警告されたからやらなければいけない」とか
    「太っていると馬鹿にされるから痩せないといけない」といった感じ

Want Toな目標の方が、自分が好きで目指している目標なわけですから、ゴールへのモチベーションであったり、誘惑に対する抵抗力が高まるんじゃないかというわけですね。

Want Toな目標の効果

それでは、マギル大学の研究は実験によりWant Toな目標の効果を調べてくれていますので、その中身を見ていきしょう。

Want Toな目標で誘惑を感じにくくなる

この研究では、ダイエットに対してWant Toな目標を持つ人と、Have Toな目標を持つ人を比較して、

  • フルーツやサラダなどの健康に良い食品の画像を見せたとき
  • スナック菓子やケーキなどの健康に悪い食品の画像を見せたとき

にそれぞれの目標を持つ人が、反射的にどのように感じるのかを調べています。この実験の面白いところは、画像を見た瞬間に感じる反射的な感情を測定しているところです。

その結果として分かったことは、

  • ダイエットにWant Toな目標を持つ人ほど、反射的に健康に良い食品を好んで、健康に悪い食品を嫌う傾向があった。
  • ダイエットにHave Toな目標を持つ人ほど、反射的に健康に良い食品を嫌って、健康に悪い食品を好む健康があった。

ということ。

つまり、Want Toな目標を持つ人は、セルフコントロールを働かせる前の、自動思考の時点で健康に悪い食品への誘惑が軽減されているということです。Have Toな目標になると効果は真逆になってしまっているので、ダイエットがHave Toになるほど健康に悪い食品の誘惑が強くなってしまうという嫌な結果となっていますね。

Want Toな目標で成功率も上がる

次に、この研究では344人を対象にWant Toな目標を持つ人と、Have Toな目標を持つ人を比較して

  • どれだけ目標を阻害する誘惑に会っているのか?
  • 誘惑に打ち勝つ努力をどれだけしているのか?
  • 目標の進捗はどちらの方が上なのか?

ということを分析してくれています。

その結果として分かったことは

  • Want Toな目標では、そもそも誘惑にあう頻度が少ない
  • Want Toな目標を持つ人は、誘惑に打ち勝つ努力をしているわけではない
  • しかし、Want Toな目標は達成への進捗が良い
  • Have Toな目標では、誘惑に会う頻度が多い
  • なのでHave Toな目標では、誘惑に打ち勝つ努力がされている
  • しかし、Have Toな目標は、進捗はあまりない

ということ。

Want Toな目標を持てれば、誘惑に打ち勝つ強いメンタルがなくても、自然と誘惑の方が減るので、目標が達成しやすいということなんですね。

一方でHave Toな目標を達成するには、頻繁な誘惑に努力で打ち勝ち続けなければいけないため、達成への進捗はWant Toな目標よりも低くなってしまっているんですね。しかも、もう一つわかっているのは、Have Toな目標をたくさん持つほど、誘惑も多くなってしまうということ。なので、周りからの目を気にして「こうしなければいけないという目標」を多く持つほど、誘惑が増えてセルフコントロール能力は低下してしまう可能性があるわけですね。

まとめ

本稿では「Want Toな目標がセルフコントロール能力を上げる」というお話をしました。

ポイントをまとめると

  • Want Toな目標は自動思考のレベルで誘惑を感じにくくしてくれる
  • Want Toな目標では、誘惑に打ち勝つ努力をしなくても、そもそも誘惑が減って、目標の達成率も上がる
  • 逆にHave Toな目標に縛られると、誘惑が増えて、誘惑に打ち勝つ鋼のメンタルが必要になってしまう

ということです。

一見するとセルフコントロール能力が高そうな人も、意外と好きでやっているだけで、そもそも誘惑を感じていないのかもしれません。今はHave Toな目標であっても、自分でその目標を好きになるにはどうしたら良いのかを考えて、Want Toな目標に直してみると良いのかもしれませんね。

以上、本稿はここまで

[参考文献]

*1 : Saying “No” to Temptation: Want-to Motivation Improves Self-Regulation by Reducing Temptation Rather Than by Increasing Self-Control

Naoto

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