自分でコントロールしている感覚を高めれば幸福になれるのか?
物事を「自分でコントロールしている感覚」は幸福に取って大切な要素だと言われています。
例えば仕事でも、上司から重箱の隅をつつくように細かく指示された通りに働かなければいけないと、まるで上司の操り人形になったみたいで嫌になってしまいます。一方で、ある程度の裁量が与えられて、仕事の進め方を任せてもらえれば、自分の思うように仕事をコントロールしてのびのびと楽しく働けますよね。
幸福感が高い人を調べてみると自分でコントロールしている感覚が高い傾向があることも確認されています。
そこで本稿では、
- 実際にコントロール感を高めてあげたら、ポジティブな感情とネガティブな感情の強さにどれだけ変化があるのか?
を調べてくれたトリーア大学らの研究(*1)を参考に、コントロール感が幸福感につながるメカニズムを見ていきましょう。
コントロール感と感情の変化
この研究では40人の学生を集めて、自分の思い通りにライトをコントロールするタスクに挑んでもらいます。
このタスクでは参加者は
- スイッチを押すか
- スイッチを押さないか
の2択が与えられて、その選択によって
- ライトが点灯する
- ライトが消える
と、ライトの動作がランダムに変わります。
それで、参加者はできるだけ多くライトを点灯させるように、スイッチを押すか押さないかの選択を繰り返してもらうのですが、実はライトの動作はボタンの選択とは関係無しに操作されていて、
- コントロール感上昇グループ
最初の40回は25%の点灯率で、後の40回で点灯率が75%の向上するグループ - コントロール感下降グループ
最初の40回は75%の点灯率で、後の40回で点灯率が25%の下降するグループ
の2つのグループに分けられています。
タスクが終わった後でポジティブな感情の強さとネガティブな過剰の強さが測定されていて、ライトのコントロールが上手くなったグループと、逆に下手になってしまったグループで、どのように感情が変化するのかを比較しています。
結果
それで結果がどうだったのかというと
- コントロール感上昇グループでは確かに「自分でコントロールする感覚」が上昇していて、コントロール感下降グループでは「自分でコントロールする感覚」が下降していた
- コントロール感が上昇したグループでは、ポジティブな感情は特に増えていなかったが、ネガティブな感情が減っていた
- コントロール感が下降したグループでは、ポジティブな感情が減ってしまったが、ネガティブな感情は変わらなかった
ということ。
つまり、コントロール感を失うとポジティブな感情が減って幸福感は失われてしまうのが確かな一方で、コントロール感が向上したときに幸福になれるのかというとこれは微妙で、コントロール感が向上してもネガティブな感情が減るだけで、ポジティブな状態にはなれないということなんですね。
なので、コントロール感は幸せになるのに欠かせない要素ではあるものの、幸福になるためにはその上にさらにポジティブにしてくれるものが必要ということが、この研究結果から分かったわけですね。
まとめ
本稿では「自分でコントロールしてる感で幸福になれるのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- コントロール感が失われるとポジティブな感情を感じにくくなってしまう
- コントロール感が向上するとネガティブな感情を感じにくくなるが、ポジティブな感情が増えるわけではない
- つまり、幸せになるのにコントロール感は確かに必要だけど、それにプラスしてポジティブになれるものがないとダメ
ということですね。
自分のコントロールがしやすい環境に身を置くなり、自分のスキルを向上してできることを増やすなどして、人生のコントロール感を高めることはやっぱり大切なことです。しかし、コントロール感そのものが大切なだけでなく、自分で人生をどんな風にコントロールするのかも同じように大切ということですね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]