誠実性が高い人ほど、仕事のパフォーマンスが高いのか?
誠実性は性格の要素の一つで、今の心理学の研究で最も支持されているビッグファイブ性格分析でも、5つの性格の要素のうちの一つに誠実性が挙げられています。
誠実性が高い人とは「責任感があって真面目にコツコツ頑張るタイプ」のことで、
- 誠実性が高い人ほど、自己コントロールがうまい
- 誠実性が高い人ほど、仕事で成功しやすい
- 誠実性が高い人ほど、結婚生活が安定している
- 誠実性が高い人ほど、幸福感が高い
など、誠実性が高い性格の人は人生で様々なメリットがあることが分かっているんですね。
それで、トロント大学の研究(*1)では特に誠実性の仕事面のメリットに注目していて
- 誠実性が仕事のパフォーマンスをどれだけ上げてくれるのか?
- 誠実性がもたらすどんな特徴が仕事のパフォーマンスにつながっているのか?
について分析してくれていましたので、本稿ではその中身を見ていきましょう。
誠実性と仕事のパフォーマンス
トロント大学の研究では100年以上にわたる誠実性の研究の総まとめとして、92件のメタ分析の結果をまとめ上げてくれています。92件のメタ分析となると、研究の総対象者数は110万人以上ということで、かなり大規模な分析となっていて信頼度も高めとなっています。
それでこの研究では、これらのデータから誠実性がどのように仕事のパフォーマンスに影響するのかを分析していて、
- 仕事のモチベーション
- 仕事の成果
- 仕事のリーダーシップ
- 仕事への満足感
- 先延ばしの頻度
などの様々な側面から総合的に誠実性の効果を分析してくれています。
結果:
それで結果としてどのようなことが分かったのかというと
- 92件のメタ分析のうち98%は誠実性にプラスの効果が確認されていて、誠実性にマイナスの効果が確認された研究は全体のわずか2%だった
- 誠実性の様々な効果を総合すると、誠実性は仕事のパフォーマンスに広く強い効果があることが確認された(ρ=0.20 , SD=0.13)
ということで、誠実性が高い人ほど、仕事の成果も高いということが大規模のデータでも確認されています。
それで、なぜ誠実性が高い人のどんな特徴が仕事のパフォーマンスにつながるのかも分析されていて、それらの特徴として
- 目標達成へのモチベーションが高い
- 先読みのしやすい環境を好む
- 共有している目標への責任感が強い
- コミットメントが強い
- 我慢強い
- 仕事に生産性を下げてしまうことを避けるように自分を律するのがうまい
といった特徴が挙げられています。誠実性の高い人は「責任感が強くて真面目でコツコツタイプ」なので、その特徴を活かして仕事のパフォーマンスを上げているみたいですね。
結果2:職業による違い
それでこの研究ではざっくりと職種による誠実性の効果の違いも分析してくれていて、それが次のグラフになります。
このグラフから分かるのは
- 仕事の複雑度が低め〜中くらいの職種(セールス、軍人、ヘルスケア、カスタマーサービス、警察)では、誠実性は仕事のパフォーマンスに強く影響している
- 仕事の複雑度が高めの職種(マネジメント、専門家)では、誠実性で仕事のパフォーマンスを予測するのが難しくなる
ということ。つまり、仕事が複雑になるほど誠実性の影響は弱くなっていて、専門家になると効果は半減してしまっているようです。もちろん全く効果がなくなるわけではないので誠実性はあった方がいいのですが、複雑な仕事になると「真面目でコツコツ」だけで成果を上げるのが難しくなるみたいですね。
まとめ
本稿では「誠実性と仕事のパフォーマンス」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 誠実性が高い人ほど、仕事のパフォーマンスが高い!
- それは誠実性が高い人には、責任感があったり、忍耐力があったり、自己コントロールがうまいという特徴があるから
- ただし、複雑な仕事になるほど誠実性だけでは仕事のパフォーマンスは上がりにくくなる
ということですね。
最近では新しい知識や考えにオープンな開放性などの性格が注目される一方で、「真面目にコツコツ努力する誠実性」もやっぱり仕事のパフォーマンスを上げてくれるということで、コツコツタイプの人には嬉しい研究結果だったのではないでしょうか。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : A Century of Research on Conscientiousness at Work