物欲や金欲でどれだけ幸せは逃げてしまうのかの研究
「もっとお金があればいいのにな〜」とか
「もっといい時計が欲しいな〜」とか
お金や物に満たされるほど人は幸せになれるという考えが頭に浮かぶこともあれば、
「お金だけが人生の幸せじゃない」
「お金よりももっと大切なことがある」
というように、お金や物に固執しすぎることは逆に幸せを遠ざけてしまうという考えもあります。
心理学でも物欲や金欲が幸せにどう関係するのかの研究はたくさんあり、その傾向としては「お金やものに固執すると幸福感が低下してしまう」という方が強いようです。
本稿ではこの問題について、サセックス大学の研究(*1)を参考に
- お金や物への固執はどれだけ幸福感を低下させてしまうのか?
- 幸福にも様々な種類があるけど、具体的にどのような幸福が物欲や金欲で低下してしまうのか?
についてお話ししていきたいと思います。
物欲や金欲と幸福感の低下
サセックス大学の研究では、これまでに行われた物質主義と幸福感の関係の研究175件をメタ分析でまとめてくれています。ここでいう物質主義とは「お金を稼ぐことや高いステータスの物を所有することに高い価値や信念を感じたり、それを目標として追いかけること」という意味です。
それで175件もの研究を集めると、研究によって物質主義の測定方法が違ったり、幸福感の測定方法が違ったりするので、
- 具体的にどのような物質主義的な考えが幸福感を低下させてしまうのか?
- 物質主義は具体的にどのような幸福感が低下してしまうのか?
についても深く調べてくれています。
結果:全体的傾向
まず最初に全ての研究を総合して得られて結果として
- 物質主義と幸福感の相関はr=−0.15
ということが分かっています。つまり、物質主義は確かに幸福感を低下させてしまうということ。ただしその低下の幅は−0.15なので少し低下するくらいですね。
結果②:物質主義的な考えの違い
次に具体的にどのような物質主義的な考えが強く幸福感を低下させてしまうのかの分析が次の表になっています。
物質主義の測定の種類 | サンプル数 | 相関 |
お金や物をたくさん持つことに価値を感じている | 50,398 | −0.11 |
お金持ちになることが人生の成功や尊敬される条件だと考えている | 6,768 | −0.07 |
いい物を持っている人を羨んだり、物をコレクションすることを好む性格的傾向がある | 784 | −0.28 |
お金持ちになって贅沢することが人生の中心だと考えている | 31,844 | −0.19 |
お金や物の所有、経済的に成功を重視している | 23,608 | −0.08 |
お金や物の所有、経済的な成功を、人間関係などの他の人生の成功と比較した上でも重視している | 3,454 | −0.16 |
お金や高価な物の所有を人生の目標にしている | 16,030 | −0.16 |
内発的な動機づけの目標よりも、お金や高価な物の所有、ステータスなどの外発的な目標を重視している | 13,971 | −0.16 |
という感じで、まとめると
- 人生の目標には人間関係や仕事など様々ものがあるけど、それらよりもお金や物の所有、ステータスを優先する人ほど幸福感は低下しやすい
という感じですね。お金や物の所有に価値を感じていても、人間関係ややりがいのある仕事など他の目標も重視していればそこまで幸福度は低下しないのかもしれませんね。
結果③:どんな幸福が低下するのか?
続いて、物質主義のよって幸福に関連するどのような要因が低下してしまうのかの分析結果が次の表になっています。
幸福指標 | 相関 |
人生満足度 | −0.13 |
ネガティブな感情 | −0.15 |
ポジティブな感情 | −0.23 |
総合的な人生の幸福感 | −0.19 |
自分へのポジティブな評価 | −0.17 |
自分へのネガティブな評価 | −0.28 |
不安 | −0.17 |
うつ | −0.19 |
衝動買い | −0.44 |
身体的健康 | −0.15 |
健康にリスクのある行動 | −0.29 |
特に物質主義の悪い影響が強い項目をまとめると
- 人生の中で感じるポジティブな感情が減ってしまいやすい
- 自尊心を感じにくくなるなど、自分で自分をネガティブに捉えやすくなってしまう
- 衝動買いがかなり増えやすい
- 喫煙や飲酒などの健康にリスクのある行動が増えやすい
ということ。もちろん他の項目もマイナスの相関になっているので、影響度は弱まりますがネガティブな効果を受けてしまっています。
まとめ
本稿では「物欲や金欲と幸福感」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 物欲や金欲に固執すると、人生の幸福感はやや低下してしまう
- 特に人間関係や仕事など他の人生の目標よりも、お金や物の所有を優先する人ほど幸福感は大きく低下してしまう。
- 幸福感の低下とは具体的には、ポジティブ感情の低下、自分自身の評価の低下、衝動買いの向上、健康にリスクのある行動の増加が起きやすい
ということですね。
お金を大切に思うこと自体はあまり悪くなくて、過剰にお金や物の所有に人生を費やしてしまうことが悪いみたいですね。お金や物を追求するのでなく、人間関係や意義を感じることなど本当の幸せをくれること大切にしたいですね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1: The Relationship Between Materialism and Personal Well-Being: A Meta-Analysis