血中脂質を改善するには、どんな運動が効果が高いのか?
血中脂質が多いといわゆるドロドロの血液になってしまい、動脈硬化や心筋梗塞などのリスクが高まってしまいます。健康診断の血液検査の結果でも血中脂質はわかるので、中性脂肪や悪玉コレステロール(LDL)の数値が高くて気になっている人も多いのではないでしょうか。
そして、血中脂質を改善するには食生活ももちろん大切ですが、運動も血液をさらさらにするのに効果があることがわかっています。そこで本稿では
- 有酸素運動
- HIIT
- 筋トレ
といった運動の種類や強度によって、血中脂質の改善にどのような違いがあるのかを見ていきましょう。
HIITと通常の有酸素運動
まず最初に有酸素運動の種類として
- 高強度インターバルトレーニング(HIIT)
最大心拍数の70%〜90%の全力に近い強度の有酸素運動と、休憩を交互に繰り返す方法。例えば、20秒の全力ダッシュと10秒の休憩を8セット繰り返すという感じ。
- 連続した中程度の有酸素運動
最大心拍数の55%〜70%くらいの中程度の有酸素運動を30分とか継続して行う運動。ジョギングなどの一般的な運動方法がこちらですね。
この2つ有酸素運動の種類のうち血中脂質の改善にはどちらが良いのかをニューイングランド大学の研究(*1)が調べてくれています。ちなみにこの研究は、29件の先行研究(サンプル数の総計は823人)をまとめたメタ分析となっています。
結果
この研究の結果を見ていると、
- 総コレステロール、悪玉コレステロール、中性脂肪は、HIITでも中強度の運動でも同じくらいの改善だった
- 善玉コレステロールだけはHIITの方が改善が大きかった
と、善玉コレステロールではHIITの方が良いということですが、大きな差ではなくどちらも似たようなものということです。
HIITは脂肪の燃焼効果が高くてダイエットに効果的だったり、心肺機能を鍛える効果が高かったりして最近注目されていますが、血中脂質の改善効果は普通の有酸素運動とあまり変わらないということですね。なので、HIITでも中強度の継続運動でも自分の好きな方を選べたよいでしょう。
筋トレと有酸素運動
続いて筋トレと有酸素運動について調べてくれた研究(*2)を見てみると、
- 有酸素運動にはもちろん血中脂質の改善効果がある
- 筋トレでも悪玉コレステロールと中性脂肪の減少、善玉コレステロールの増加が確認されている
- 筋トレでも強度はあまり関係なさそうで、高重量を扱っても中重量の場合と効果はあまり変わらなそう
ということ。つまり、運動の種類は有酸素運動でも筋トレでもどちらでも良いということですね。
さらに
- 有酸素運動と筋トレの両方を組み合わせることで、お互いに補い合って血中脂質の改善効果を向上できる可能性もある
ということも示唆されています。なので有酸素運動の日と筋トレの日を作るなどして、運動のバリエーションを持たせると良さそうです。
種類よりも大切なポイント
そして、両方の研究で共通して言われている大切なポイントは
- 血中脂質を改善するには、運動の種類よりも、週のトータルの運動量が大切
- 中強度の運動なら週に150分、高強度の運動なら週に75分が最低ライン
ということ。なので、最初のうちは自分の好きな運動だったり、続けやすい運動を選んで、まずは運動量を増やすことを目標にすると良いと思います。
そして、これらの研究から血中脂質の改善にオススメの運動方法をまとめると
- 30分の運動を週に5回以上行う(最低ラインの運動量)
- 有酸素運動なら強度は最大心拍数の70〜80%くらいが良い
(時短で済ませたいならHIITも良い) - 有酸素運動だけでなく筋トレも一緒に行うと良い
という感じですね。
まとめ
本稿では「血中脂質を改善するための運動」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 血中脂質の改善には、運動の種類よりも、週のトータルの運動量を150分以上にすることが大切
- 運動の種類は有酸素運動でも筋トレでも効果がある
(両方行えば効果も向上するかも) - 運動の強度もあまり関係なく、中程度の強度があれば十分
(最大心拍数の70%くらいを狙っておけばOK)
ということですね。
もちろん食生活も大切なので、健康的な食生活と共に週に150分の運動を確保できれば、サラサラの血液に理想の生活になりますね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : HIIT is not superior to MICT in altering blood lipids: a systematic review and meta-analysis