親切な行動は思い出すだけでも幸福感は向上するという研究
親切な行動は幸福感にとって大切な要素の一つ。コーヒーを奢ってあげたり、仕事を手伝ってあげたり、褒めてあげたり、日常の中にはちょっとした親切が溢れているものです。
そして面白いことに、親切は受ける側よりもする側の方が幸福になれるという研究もあります。自分から親切をすることは、自分は良い人間だという自己イメージを強めたり、有能感を高めて自信をつけてくれる効果があって、これは親切を受ける側では得られないんですね。
カリフォルニア大学の研究では、親切の効果についてもう少し深堀して
- 親切をすれば幸福になれるけど、親切をしたことを思い出すだけでも幸福感は向上するのでは?
ということを調べてくれていました。本稿ではこの研究を参考に、親切を幸福感の向上に繋げる方法について学んでいきましょう。
親切をするときと思い出すときの違いとは
この研究では532人を次の4つのグループに分けて実験を行っています。
- 親切を行うグループ
- 親切を思い出すグループ
- 親切を行って、かつ思い出すグループ
- 何も行わないグループ
親切を行うグループでは、家族に夕食を作ってあげるとか、感謝の手紙を書くとかの親切を1日に3つ行ってもらっています。一方で親切を思い出すグループでは、過去に自分が行った親切なことを思い出して、5分間だけ詳細を書き出してもらっています。
各グループでは幸福感の指標として、ポジティブ感情、ネガティブ感情、人生の満足感が当日と翌日まで測定されています。これらの結果を比較により
- 親切を行う場合と、思い出す場合で幸福感に差は出るのか?
- 両方行うことで相乗効果は起きるのか?
- 親切の効果は翌日まで長続きするのか?
といったことが分析されています。
結果:親切を思い出すことの効果
分析の結果としてわかったことは
- 親切をしたグループは、ポジティブ感情と人生の満足感が向上し、ネガティブ感情は低減していた
- 親切を思い出したグループでも、同様にポジティブ感情と人生の満足感が向上し、ネガティブ感情は低減していた
ということ。親切を思い出すだけでも十分に幸福感の向上効果が得られることが確認されています。
そして3つのグループの効果の大きさを比較した結果を見ると
- 親切をしたグループ、親切を思い出したグループ、両方行ったグループで、幸福感の向上の大きさに差はなかった
ということ。両方を組み合わせても相乗効果はないし、思い出すだけでも同等の効果が得られるというわけです。親切を行うことと比べると、思い出すことの方がずっと楽に実践できるので、親切の思い出しは幸福感の向上テクニックとして便利そうですね。
結果2:その他のポイント
この実験から他に分かったポイントを見てみると
- 親切の実施/思い出しの効果は、ポジティブ感情も増やすが、どちらかというとネガティブ感情を減らす効果の方が大きかった
- 親切による幸福感の向上は、実践した翌日でも少し残っていた
- 親切を行った数が多いほど、幸福感の向上効果も大きかった
ということ。
思い出すだけでも十分な効果は得られるということですが、これは親切をしなくて良いというわけではありません。親切を行った数が多いほど、幸福感の向上効果も大きいということなので、たくさん親切を行って、たくさんの親切な思い出を作るのが一番よさそうですね。
まとめ
本稿では「親切は思い出すだけで幸福感を向上する」というお話をしました。
ポイントをまとめると
- 親切になることは幸福感を向上させる一つの重要な要素
- 昔行った親切な行動を思い出すだけでも、実際に親切を行うのと同じくらい幸福感を向上してくれる
- 親切の数が増えるほど幸福感の向上も大きくなる
ということ。
今回の研究では5分間だけ親切について思い出して書き出すという手法を使っています。なので、ときどき日記に親切な思い出を書き出すとかしてみるのも良いのではないでしょうか。親切にはネガティブ感情を抑える効果が強いので、落ち込んでいるときなどに活用するのもありかもしれませんね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Comparing the effects of performing and recalling acts of kindness