限界まで追い込まない筋トレの回復時間と、寝る前の運動による睡眠の質
体を鍛えるのにトレーニングはもちろん大切ですが、睡眠や食事といった体の回復もかなり重要になります。前回のトレーニングのダメージが残っているのに、さらにハードなトレーニングを続けてしまうと、オーバートレーニングになって逆に体が弱くなってしまうこともあるんですね。
そこで本稿では、
- 限界まで追い込むトレーニングと、少し余裕を持って終わるトレーニングで回復時間がどのように変わるのか?
- 寝る前のトレーニングで睡眠の質は低下してしまわないのか?
について調べてくれた研究を参考に、適切な体の回復方法について学んでいきましょう。
トレーニングの追い込みと回復期間
まず最初の研究では、15名のアスリートに
- 限界まで追い込むタイプの筋トレ
毎セットもう上がらなくなるまで回数を続ける形式の筋トレ - 少し余裕を持って終わるタイプの筋トレ
あと2回はできるくらいでそのセットは終了にする形式の筋トレ
の2つのパターンのどちらかを実施してもらって、その効果の違いを確かめています。
どのような効果が測定されたのかというと、
- 1日後の筋肉の回復度
(ベンチプレスとハーフスクワットのMax重量が落ちていないか) - 睡眠の質
(睡眠時間や主観的によく眠れたか、ベットの中で起きている時間、睡眠中の眼球運動など)
となっています。
結果:トレーニングの追い込みの影響とは?
早速結果を見てみると、
- 限界まで追い込んだグループでは、翌日のベンチプレスの重量が7.2%下がって、ハーフスクワットは11.1%下がっていた
- 限界まで追い込まないグループでは、ベンチプレスもハーフスクワットも重量は下がらなかった
ということ。
限界まで追い込むグループの方が筋肉のダメージがでかいようで、1日では回復しきれないという結果になっています。筋トレの効果を上げるのに一番重要なのはトレーニングボリュームで、回復の早い限界まで追い込まない形式のトレーニングはボリュームを増やすのに効果的でしょう。実際に過去の研究でも、「筋トレは限界まで追い込まない方が少し効果が高い」という結果もあるんですね。
次に睡眠の質への影響を見てみると、
- 限界まで追い込んだ場合でも、余裕を持って終わる場合でも、睡眠の質は変わらなかった
ということ。ハードすぎるトレーニングは睡眠の質を低下させると言われますが、今回の研究結果では限界まで追い込む形式でも睡眠の質は低下していません。ただし、この実験ではベンチプレスとハーフスクワットの2種目しか行っていないので、そこまでハードではなかったのかもしれませんね。
寝る前の運動と睡眠の質
続いて寝る前のハードな運動が睡眠の質を低下してしまわないかを実験した2つの研究結果(*2,*3)を見てみましょう。
この2つの研究では
- 寝る2時間〜2時間半前にハードなランニングをした場合
- 寝る3時間半前にハードなランニングをした場合
の睡眠の質がそれぞれ測定されています。
結果:寝る前のハードな運動を睡眠の質
実験の結果を見てみると、
- 寝る2時間前の運動では、最初の3時間で心拍数が少し上昇していたが、睡眠の質は特に低下していなかった
- 寝る3時間半前の運動では、トータルの睡眠時間が伸び、ベットの中で起きてしまう時間も減っていて、運動しないよりよく眠れていた
ということ。
睡眠の2時間前くらいまでなら、ハードな運動でも特に睡眠の質は低下しないようです。しかし、過去の研究では「寝る1時間前にハードな運動をすると、睡眠の質が低下した」という結果もあるようなので、ハード目の運動をするなら寝る2時間以上前にした方が良さそうです。
まとめ
本稿では「トレーニングの追い込みと回復期間」と「寝る前のハードなトレーニングと睡眠の質」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 毎セット限界まで追い込むトレーニング方法では、筋肉は1日では回復しないので、しっかりと回復期間を取ろう
- 少し余裕を持った回数で終わるトレーニングは、1日で筋肉は回復するので、ボリュームを増やすのに役立つ
- ハードなトレーニングでも、就寝の2時間以上前なら特に睡眠の質は低下しない
ということ。
しっかりと睡眠や休息をとって体を回復させるまでがトレーニングなので、トレーニング内容だけでなく、食事や睡眠にも気をつけていきましょう。
[参考文献]
*2 :High-intensity exercise in the evening does not disrupt sleep in endurance runners
*3 : Effects of vigorous late-night exercise on sleep quality and cardiac autonomic activity