仕事への情熱が高い人ほど、やりがい搾取にあってしまうのか?
やりがい搾取とは、仕事はやりがいを感じるためにやるものだと意識させることで、低い給料で待遇に見合わない労働力が搾取されてしまうことです。慈善活動なんだからお金をもらわずにタダで世のために働けみたいな風潮も、やりがいの搾取の一つの形なのではないでしょうか。
それで、やりがい搾取は仕事に情熱を感じている人ほど被害に合いやすいことが考えらます。例えば、
- あいつは努力家だから他の人より多くの仕事を任せよう
- あいつは仕事が好きだから、深夜まで残業してもらおう
といった感じで、頑張る人は頑張って当然みたいな扱いがされてしまう可能性があるわけです。
そこで、本稿では、
- 情熱が高い人は、本当にやりがい搾取されてしまいやすいのか?
について実験してくれた研究(*1)を見てみましょう。
職種とやりがい搾取
この研究では、まず様々な職業についてのイメージを調査しています。
- この職種で働く人は、情熱を高く感じていそうか?
- この職種で働く人は、やりがいを高く感じていそうか?
- この職種で働く人は、給料は良さそうか?
- この職種で働く人は、労働時間は長そうか?
- この職種で働く人は、不当にきつい仕事を任されても理解できるか?
- この職種で働く人は、休日出勤があっても理解できるか?
などの仕事のイメージを80の職種で調べたんですね。
これらのイメージから
- 情熱を感じやすい職種ほど、低い待遇で辛い労働をして当たり前だと思われやすいのか?
というやりがい搾取の傾向を分析しています。
結果
結果を見てみると、
- 情熱が高い職業ほど、長時間働いて当然だと思われやすかった
- 情熱が高い職業ほど、休日出勤や無茶な仕事量などは当然だと思われがちだった
ということ。
つまり、働いている人の情熱が高い職業ほど、やりがい搾取はあっても当然だと正当化されやすいということなんですね。例えば、アニメーターなどの自分が好きで仕事にしていると思われがちな職種で、低賃金になってしまいがちなのも、こうした背景が関連しているのでしょう。
人とやりがい搾取
先程の結果はやりがい搾取を職業単位で見ていました。それでは、同じ職業の中では、情熱が低い人よりも情熱が高い人の方がやりがい搾取が起きやすいのでしょうか?この点について、先の研究では
- アート系の会社の従業員
- 学生研究員
- コンサルタント
などの複数の文脈で調べてくれています。
結果
早速その結果を見てみると。
- 情熱が高い人ほど、長時間働いたり、きつい仕事をこなして当然だと思われていた
- 情熱が高い人ほど、仕事を楽しんでいそうで、仕事そのものが報酬だと思われがちだった
- その結果として、情熱が高い人ほど、低い待遇でもきつい仕事をして当然だと思われがちだった
ということ。
やはり、同じ職業内でも情熱が高い人ほど、頑張るのが当然で不当に労働力を搾取されやすいという結果になっています。自分の好きや情熱を仕事のエネルギーに変えることは大切なことですが、それを理由に無理な働き方をさせられないように注意しましょう。
参考:やりがい搾取しやすい人
もう一つこの研究では、
- 努力はいつか報われるものだと考える人ほど、やりがい搾取があって当然だと考えやすかった
ということが分かっています。
なので、仕事の無茶振りばかりして、この努力はいつか報われるはずだとか言う会社や上司がいたら、少し注意した方が良いかもしれません。
まとめ
本稿では「情熱が高さとやりがい搾取」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 情熱が高い人ほど、長時間労働やきつい仕事などをこなして当たり前だと思われやすい
- 情熱が高い人ほど、仕事を楽しんでいて、仕事自体が報酬だと思われやすい
- その結果として、情熱が高い人ほど、不当な労働力の搾取の被害に遭いやすい
ということ。
日本では特に長時間労働などが多い傾向があるので注意が必要かもしれません。好きで情熱が持てる仕事があるなら、自分の頑張りがきちんと評価されて、それに見合った待遇が得られているかを考えてみると良いでしょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]