睡眠不足が不安やうつを起こすのか?不安やうつが睡眠を妨げるのか?問題
睡眠不足とメンタルの不調には相関関係があり、
- 睡眠不足の人ほどセルフコントロール能力が低い
- 睡眠不足の人ほど不安や抑うつが高い傾向がある
といった悪い関係があることが分かっています。
しかし、この関係の因果の方向性についてはまだよく分かっていない部分もあり、
- 睡眠不足なると、メンタルに不調が生じてしまう
- メンタルに不調が生じると、夜眠れなくなって睡眠不足になってしまう
という2つの方向性が考えられます。もちろん、両方の方向性が同時に存在して、睡眠不足になるとメンタルが低下して、メンタルが低下するとさらに睡眠不足になるという双方向の関係も考えられます。
そこで本稿では、
- 睡眠不足とメンタルの不調の関係の方向性はどうなっているのか?
を詳しく調べてくれた研究を見てみましょう。
双子を調べて分かった睡眠時間とメンタルの不調の見解とは?
この研究では、オランダに住む14〜18歳の双子12,803人のデータを分析の対象にしています。なかなか大規模なデータとなっていて、これらのデータに含まれるのは、
- 睡眠時間
- 睡眠の質(睡眠問題を抱えているか)
- 内的なメンタルの問題(不安や抑うつなど)
- 外的なメンタルの問題(攻撃性やルールを破るなど)
- 幸福感
といった指標。データの取得は2年半の間隔をあけて2回行われているため、「1回目の測定で睡眠時間が短かった人が、2年半後にメンタルの問題が増えていないか?」といった分析で、睡眠とメンタルの相互関係が調べられるようになっています。
ちなみに、双子を対象にしているのもこの研究の大切なポイント。双子では遺伝による差や、環境の差の影響を極力取り除くことができるため、より純粋に睡眠とメンタルの関係が抽出できるというメリットがあるんですね。
結果1:睡眠時間とメンタルの不調
最初に睡眠時間とメンタルの不調の関係の分析結果を見てみると、
- 睡眠時間が短いほど、不安や抑うつ、攻撃性などのメンタルの不調は少し高く、幸福感は若干低い傾向があった
- しかし、この関係は一卵性双生児のみを対象にした精度の高い分析では、統計的に有意な差にはならなかった
ということ。つまり、睡眠時間が不足するとメンタルは低下してしまう弱い関係は確かにあるけど、それは遺伝的な要因や環境的な要因が影響している可能性が高く、両者の間に直接の関係はないかもしれないということです。
結果2:睡眠の質とメンタルの不調
そうは言っても睡眠不足がメンタルの不調に直接の関係が全くないとは思えないですよね。そこで、睡眠時間でなく睡眠の質とメンタルの不調の関係を見てみると、
- 睡眠の質が悪いほど、不安や抑うつ、攻撃性などのメンタルの不調は高く、幸福感は低い傾向があった
- 睡眠の質とメンタルの不調にはお互いを低下させる相互関係があり、これは一卵性双生児のみを対象にした精度の良い分析でも有意に見られた
ということ。
つまり、メンタルの悪化の主な原因になっているのは睡眠の質の方で、睡眠時間が短いことはあまり影響しないようですね。逆に不安や抑うつなどでメンタルが不調なときに低下しやすいのも睡眠の質ということでもあります。
もちろん睡眠時間が足りないことは、健康や集中力など他の様々な面で悪い影響があるので、短くて良いというわけではありません。ですが、睡眠不足とメンタルの不調を抱えている人は、まずは不安やうつなどの感情面をリラックスさせて、睡眠の質を高めてあげることを優先してみると良いでしょう。
まとめ
本稿では「睡眠不足とメンタルの不調の関係」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 睡眠時間が不足することは、不安や抑うつ、攻撃性などのメンタルの不調にまでは繋がりにくい
- 睡眠の質が低下することはメンタルの不調につながってしまうし、メンタルの不調は睡眠の質を低下してしまう双方向の関係がある
- 睡眠とメンタルの不調を整えるには、まずは睡眠の質を改善すると良い
ということ。
睡眠時間をしっかりと取ることも大切ですが、睡眠の質が悪ければせっかくの睡眠も効果が低下してしまいます。不安や抑うつの感情面をリラックスさせて睡眠の質を向上させるには、
- エクスプレッシブ・ライティングで感情を詳細に日記に書き綴ってみる
- 瞑想で頭の中の感情を客観的に受け入れてみる
とかを実践してみると良いでしょう。他にも寝る前にキウイフルーツを食べると良いなんて研究結果もあるので、お試しあれ。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]