目先の誘惑よりも長期的な利益を選びやすくする9つのテクニック

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ダイエット中にお菓子が食べたくなったり、健康に悪いと知りつつもタバコが吸いたくなったとき、私たちは短期的な利益と長期的な利益を天秤にかけて、どちらを行うかを決めます。

例えば、次の2つの選択肢があったらどちらを選ぶでしょうか?

  • 今すぐ5,000円貰える
  • 1ヶ月後に10,000円貰える

このとき、私たちの頭の中では、1ヶ月後の10,000円が今の5,000円以上の価値があるのかを考えます。当然ですが、将来の利益の価値は時間の長さで割引されてしまうもので、1ヶ月後の10,000円と1年後の10,000円を比べると、待ち時間の長い1年後の方が価値は低く感じます。

この将来の価値の割引は選択において重要なポイントで、

  • 目先の誘惑に負けやすい人は、将来の価値を低く見積る傾向がある

ということがわかっています。これはグラフにすると下の図のような感じ。

  • 長期的な価値を大切にする人(緑色の線)は、将来の利益が現在の目先の誘惑を上回るので、長期的な選択ができる
  • 目先の誘惑に負けやすい人(赤色の線)は、現時点での将来の価値が目先の誘惑を下回ってしまうので、短期的な選択をしてしまう

と、長期的な利益がどれだけ割り引かれるかで、選択が変わってくるんですね。

そこで本稿では、

  • 将来の価値の割引を減らして、長期的な選択に高い価値を保つには何をすればいいのか?
    (赤い線の人を緑の線へと持ち上げるにはどうすればいいのか?)

をまとめてくれたユタ州立大学の研究(*1)を見ていきたいと思います。

将来の価値を高く保つ9つの方法

ユタ州立大学の研究(*1)では、長期的な利益と短期的な利益の選択を調べた研究92件をメタ分析でまとめてくれています。そして、これらの92件の方法から、長期的な利益の選択を増やすために有効な方法がいくつかわかっているので、順番にそれらのテクニックを見ていきましょう。

  • 1. マインドフルネス
    マインドフルネスとは自分の頭の中に浮かんでくる感情や考えを客観的に観察して、ありのままに受け入れてあげる方法。例えば、「自分はお菓子を食べたいという誘惑を感じているな〜」と自分を客観的に見つめてあげるような感じですね。マインドフルネスにより食べ物の誘惑に強くなったという研究結果が得られています。
  • 2. ポジティブな将来のイメージ
    長期的な利益が実現できたときに、自分がどんなことをして、どんな感情を抱くのかを、できるだけ具体的にイメージする方法。これにより将来の価値の割引を抑えることができて、長期的な選択をしやすくなる効果が得られています。
  • 3. 時間のフレーミング
    「一年後に1万円もらう」という選択肢を、「2021年2月14日に1万円もらう」と具体的な日付に置き換えるだけで、長期的な選択がうまくなることが確認されています。日付にすることで1万円を貰えるまでの期間がより短く感じる効果があるということなんですね。
  • 4. 結果のフレーミング
    「今5千円もらう」or「1ヶ月後に1万円もらう」
    という選択肢を
    「今5千円と1ヶ月後に0円もらう」or「今0円と1ヶ月後に1万円もらう」
    という形で、両方の選択肢で今と将来の両方の時間に触れるようにするだけで、長期的な選択が選びやすくなる。
  • 5. 具体・抽象プライミング
    今の目の前にある誘惑は具体的なのに対して、将来のことは抽象的に考えがちというギャップがある。そのため、今の行動を抽象的に考えたり、将来のことを具体的にイメージすることで、長期的な選択を選びやすくなる。
  • 6. キュー
    都会の画像を見た人に比べて、豊かな自然の画像を見ると、気持ちや時間間隔がゆったりとして長期的な選択をしやすくなる。
  • 7. デコイの選択肢
    ①今5千円、②1ヶ月後1万円、③1ヶ月後5千円の3つ目の選択肢のように、時間が長い割に利益の少ない選択肢があるだけで、②がより良い選択に見えて選択率が向上する
  • 8. 信頼性
    長期的な選択が信頼できるほど選択率が向上する。1ヶ月後により大きな金額がもらえるとしても、本当にもらえるのか不安がある場合は、すぐにもらえる選択肢を選びやすくなってしまうということですね
  • 9. リワード・バンドリング
    複数の報酬をセットにすると長期的な選択をしやすくなる。例えば、①今すぐ5千円と1日の休暇をもらう、②3ヶ月後に1万円と2日の休暇をもらうといった感じで、報酬の数が増えると長期的な選択のお得さを感じやすくなる。

まとめ

本稿では「長期的な価値を選び取るための9つのテクニック」についてお話ししました。

9つのテクニックをまとめると

  1. マインドフルネス
  2. ポジティブな将来のイメージ
  3. 時間のフレーミング
  4. 結果のフレーミング
  5. 具体・抽象プライミング
  6. キュー
  7. デコイの選択肢
  8. 信頼性
  9. リワード・バンドリング

ということです。

フレーミングやイメージなど、少し考え方を変えるだけでも、長期的な選択の価値を感じやすくできるみたいですね。9つのテクニックはどれも取り入れやすいものだと思うので、短期的な誘惑に負けやす人は活用してみてください。


[参考文献]

*1 : Experimental Reductions of Delay Discounting and Impulsive Choice: A Systematic Review and Meta-Analysis

Naoto

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