辛い運動も楽しいこととの組み合わせで定着率が上がるという研究
運動を習慣にすることは結構難しいものです。多くの人が運動をして健康を維持したいと思ってはいるものの、やはり運動をする辛さやめんどくささのハードルを乗り越えるのは大変ですよね。
そこで心理学では習慣化のテクニックも研究されていて、目標の立て方や実行力が高まる計画の立て方などが分かっています。本稿ではそれらの研究の一つとして、
- 運動中に楽しいことを組み合わせて行えば定着率が向上できるのでは?
ということを調べてくれたペンシルバニア大学の研究を見てみましょう。
やりたくないことを楽しくするには?
新しい行動を習慣化するときには、やるべきことと目先の誘惑の葛藤が生まれるものです。例えば、運動で言えば
- やるべきこと(Should)
ジムに行かなければいけない、1日に30分以上の有酸素運動をしなければい毛ない - やりたいこと(Want)
家でテレビみたい、ゲームしたい
といった2つの選択が迫られるわけです。
ペンシルバニア大学の習慣化テクニックはこのShouldとWantの2つの選択肢を組み合わせてしまおうというもの。そのやり方としては「ジムで運動したら、帰ってテレビを見て良い」といったように、Shouldのご褒美としてWantを組み合わせることもできます。
しかし、今回の研究では、運動ならShouldとWantを同時に実践できることに注目していて、「運動をしながら好きなテレビを見る」といった組み合わせ方を導入しています。この方法のメリットとしては、運動に楽しいことを取り入れることで、運動の辛さが軽減されて、運動が楽しいものと思い込ませることができる可能性があるんですね。
実験:運動+好きなことの効果
ペンシルバニア大学の研究では、運動と楽しいことを組み合わせることで本当に定着率が向上するのかを実験により確かめています。実験の特徴としては
- 大手ジムの新規参加者6792人が対象
- オーディオブックの会社とコラボして、運動中に聞ける面白いオーディオブックを無償で提供する
- 参加者は3つのグループに分けられて、①運動と楽しいことを組み合わせることを推奨されるグループ、②運動と楽しいことの組み合わせを強調しないけどオーディオブックを提供されるグループ、③オーディオブックの提供が目立たないようにされるコントロールグループ
そして、これらの実験の結果としては、
- ジムに通う習慣の定着率
と実験期間4週間、その後フォローアップ期間の数週間にわたって測定しています。
結果:
早速実験を見てみると、
- 運動と楽しいことを組み合わせることを推奨されたグループでは、週に1回以上ジムに通う人の割合が10〜14%高く、1週間でジムに来る回数の平均も10〜12%多くなった。この効果は実験期間から17週間後まで持続していた
- 何も言われずにオーディオブックを提供された場合でも、参加者は運動中にオーディブックを聞くことが推奨されていると感じ、ジムに通うことの定着率はそれなりの向上した
ということ。
確かに運動に楽しいことを組み合わせることで、運動が定着しやすくなっていることが分かりますね。効果は10%強でそれほど高くありませんが、運動がより楽しめるようになるのであれば、取り入れる価値は十分にあるでしょう。
まとめ
本稿では「運動に楽しいことを組み合わせることで定着率が向上するのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 運動にオーディオブックを聴くといった楽しいことを一緒に組み合わせると、運動の定着率は10〜12%ほど向上する
- なんとなく楽しいことを組み合わせるよりも、運動と楽しいことを組みあわ得ることを強く推奨された場合の方が効果は大きい
ということ。
今回の実験では楽しいことがオーディオブックに決められていましたが、音楽を聴くとか、Netflixを見るとか、好きなことを自分で選べればもっと効果は上がるかもしれませんね。また、腕立て伏せとか腹筋とかの家でもできる運動であれば、好きなテレビ番組を見ながら運動するみたい形で取り入れやすいでしょう。
ということで、運動を習慣にしたいときは、運動を楽しくするために何を組み合わせると良さそうかを考えてみましょう。もちろん、楽しめる運動の種目を選ぶことも大切です。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Teaching temptation bundling to boost exercise: A field experiment